本家[蒼見鳥]  >  もう一つの世界  >   SS  > 【 竹林が笑う・・・ 】


SS:影法師

「いやぁ、降るねぇ・・・しかし。」
「あぁ・・・まったくだ。」
ここは街道筋にある宿町。その宿町の飯場で、たまたま隣同士に座った、旅商人風の男2人が話している。話題はもちろん、ここ数日降り続いてる雨のこと・・・。
「こう降られちゃあ先へ進めんよ・・・」
「ん?何だ急ぎの旅かい?」
少し肥えた、丸顔の男の言葉に、剥げ頭の男が反応する。
「いやいや、あっしは家路の途中でさ。なに、多少の遅れは障り無いんだろうが、嫁と子供の顔が見たくてね。」
「そりゃいいや。ウチのヤツなんか、帰るなりに稼ぎがどうのこうの言いやがるよ。俺は、食料運んでるワケじゃねえから、急ぎすぎて、この雨で商品ダメにしちまう方が恐いね。」
丸顔の男はニヤつきながら、剥げた男に言った。
「余計に嫁さんに言われるからかい?」
剥げた男はヘヘッっと笑い、
「ああ、これ以上小言が増えられちゃあたまんねえや。それに、いくら先を急いでても、あんな風にゃなりたかないね。」
剥げ頭の男が指差した方を、丸顔の男も見て言う。
「まったくだ。そんなに急ぎの用なのかねぇ・・・。」
雨の中を、ずぶ濡れになりながら歩く者がいる。雨具の代わりなのか、頭から布を被っていて、表情などはよく判らない。
それを見て、丸顔の男は、剥げ頭の男に冗談めいて続けた。
「嫁が死んだとかよ?」
「っははは・・・、俺ならもう帰んねぇや・・・」

 2人の男の話題になった、布を被った者。シャドウにもその会話は、わずかだが聞こえていた。彼も別に急いではいない。被っている布も、確かに雨具代わりというのもあるが、一番の理由は、殺気が外に洩れないようにするためだ・・・。彼が、殺気を隠さなければならない程の怒りを覚えている男が、この先の竹林に居る。竹林とは言っても、元は大昔に栄えた街道だったらしいのだが。薄暗さや、少し前まで剥ぎが出ていたそうなので、今では誰も通らず、更には化物が出るという噂もあるため、ここの無人は確固たるものになっている。
 竹林前の、小川に掛かる橋を渡る。すでに落ちかけている太陽、更には分厚い雨雲、そしてうっそうと茂る竹で、竹林・・・いや、旧街道はかなり暗い。この暗闇をずっと進んでいくと、関所跡がある。シャドウは迷わずその関所跡の2階に上がり、中で小さな松明に揺られ、床に座っている男と再び対面した。
男は顔を上げ、語りかける。
「よぉ・・・。早かったな・・・。」
シャドウがこの男と会ったのは、丁度この雨が降り出した時だった・・・

サザサザザザ・・・ザザ・ザ・ザサザザザサ・・ザザ・・・・・・・・・

シャドウは竹林を歩いていた。だが、歩けど、歩けど、歩けど・・・竹、竹、竹・・・。
・・・ザサザザザサザサザサザ・・・・・・・・・ザザ・・・ザサ・・・サ・・・・・
風も無いのに竹林はざわめく。まるで嘲笑われている様な気がする・・・。
(いつまで続くんだぁ?この景色はよぉ・・・。)
「化物どころか・・・鼠一匹の気配もしねぇ・・・。」
いい加減嫌気がさしてきた。いつ、何が現れてもいいように、武器を持ち続けている自分が滑稽過ぎて悲しくなってくる。人生最大級の溜息を付きながら、何故自分がここに居るのかということを思い出す。

「それ・・・、仕事か・・・?」
「ええ、報酬も払うそうですよ?」
 いつもの店で、いつもの仕事の話。いつもと違うのは、その内容の間の抜け具合だった。
「・・・ほっときゃあ帰ってくるんじゃねぇか?」
「かもしれませんね。」
喧嘩して出て行った嫁を、探して欲しいという依頼である。シャドウの古くからの知り合いであり、今では仕事の仲介人、及び情報屋として名が通っているロコじぃの知り合いらしく、彼に直接文を送ってきたという。問題は、文を書き、送ってきたタイミング・・・。出て行った半日後だそうだ・・・。ロコじぃはニコリと微笑みながら続ける。
「いいじゃありませんか。最近ちぃ坊ちゃんは森に居すぎですよ。久々に遠出してみてはいかがです?それに、私の知人の依頼ですし、今回、仲介料は・・・」
最後まで聞く前に、割って入るシャドウ。
「タダか!?」
ロコじぃはニッコリと微笑み、
「3割減で。」
「・・・・・・」
ここの店主である、アーパが噴出す声だけが響いた・・・。

ロコじぃの口車にうまく乗せられたが、シャドウも内心そこまで憂鬱ではなかった。
(プリズムも新しい環境に慣れてきたみたいだし。ま、小旅行とでも考えるかね・・・。気分転換で儲けが出るたぁ、これ以上無い良い仕事だ。)
プリズムというのは、セイレーンの少女。虹色の羽を持つがそれが災いし、元いた島に居られなくなり、シャドウの主な狩場である森に棲む。以前シャドウが仕事絡みで助け、今はシャドウと繋がりのある鍛冶屋で手伝いをしている・・・。
依頼元に着くと、案の定とでも言うか・・・、嫁は家に帰っていた。それも帰ってきたのは、文を出して半日後、つまり、出て行っていた期間は1日弱だったという・・・。元々仲は良いのか、シャドウを前にしてもノロケ倒す夫婦。そこに報酬の話を切り出すと、口喧嘩を始めたので、それをシャドウが収めるという構図に・・・。結局、ここまでの足代という、共通見解をまとめてきた・・・。報酬が激減した上に、更に3割引かれるのだ。何とか帰りの金を浮かせようと画策していると、街道筋の宿町で、使われていない旧街道があるとのこと。結構な距離を近道できるのもあったが、何より引かれたのは、この旧街道には化物が出るという・・・。
(竹林に化物?新種か珍種か・・・ま、売れるのは間違いなさそうだし、何もなけりゃそのまま通ればいい・・・。)
こうして意気揚々足を踏み込んだのが、それこそ半日前であった。

荒れ果てていると思っていた道は、思ったよりもちゃんと残っていた。まるで竹林に導かれるかのように、ここまで進んできた。道を逸れているのではないか?と何度も思ったが、そこは大昔に栄えた街道。石版が敷いてあり、その部分だけは、竹が生えることを許していない様だ。迷うことは無い。
日が傾きだしてきた。ただでさえ生い茂る竹で薄暗い上、今にも降り出しそうな曇天。まだ夕の口だというのに、かなり暗い。急いだ方がいいのは分かっているが、急いだ所で大して変わらない。降り出せば、ズブ濡れは決定であろう。煙草に火を点け、マッチの燃えカスを脇に投げ捨てた時、降り出したのが判った。
(よりにもよってそこに降るかい?)
・・・・・・ザザサザ・・・ザザザザサササザ・・・・・・・・・・・
点けたばかりのはずの煙草、だが火は消えた。それも脇に捨て、怒号の一つでも上げてやろうかと思った時、遠くに思い出したかのように建物が見えた。ストレス発散の場すら奪われたようで、全然有難いと思えない・・・。だが濡れるのも勘弁なので、必要以上に思い切り走り、建物に身を滑り込ませた・・・。

ここは関所のようだ・・・木造りの2階建ての城門。だが、肝心の門自体は随分昔に朽ち果てたのだろう・・・。関所を抜けると、竹林も終わりのようで、竹と竹の間からチラチラと人々の生活の灯りが見て取れる。
「やっと終わりか・・・でもこれじゃあな・・・。」
かなり大降りになってきた。雨音の凄さに、自分の放った言葉すらかき消されていく。どうやら、もう暫くここで足止めを食らうことになりそうだ。
地べたに腰を下ろし、景色に無数に引かれていく、縦の薄いラインを見つめながら、先程吸いそびれた煙草をふかす。
「これはこれで、なかなか風流じゃねえか・・・」
行き場をなくしていたストレスが、ゆったりと溶けていくのを感じる。だが、慣れてきた雨音の中に、別の音が混じっている。まだ半分ほど残った煙草を、傍の水溜りに投げ捨て、耳を澄ました。
何か・・・雑草抜きでもしている様な・・・あまり感じの良い音ではない。音源を捜すため立ち上がり、門内を少し歩く。その音は、この関所の2階から響いてきていた。
この関所の2階は、かつてここが栄えていた頃は、遠くまで視界が開けており、見張りが常駐していた場所。門内部に、2階に登る階段が、門の通りを線対称の線として対面に2つ。一つはドアがついているが、もう一つは壊れてしまったのか、ドアは無い。
音は、ドアがついていない方から聞こえてきている。
(俺も良く気付くな・・・)
森で鍛えられた聴覚を、少し鬱陶しく思いながらも、心は躍った。
(もしかしたら件の化物かもしれねえな・・・。建物に居るって事は、知能も高いか・・・?)

足音も無く階段を上る。段数と反比例して、強まっていく耳障りな音。残り数段となったところで、姿勢を低くし、中の様子を伺う・・・。
その部屋は2階というよりは、屋根裏部屋といったほうが適切なのかもしれない。広くは無いが、さして狭くも無い。圧迫感は感じるが、立てない程ではない天井。おそらくは見張り様であろう窓が、街道を見渡せるように、長方形の部屋に2つ対角にある。この部屋には何も無い。あるのは竹を燃料とする松明。しかし低い天上だけあって、火自体はとても小さくされており、シャドウがいる階段から来る微風ですら、灯りを大きく揺らしている。
その光に照らし出され、影絵が奥の壁に映っている。人間の物が2つ。燃える松明で本体はよく見えないが、体格からして一人は女性、もう一人は男性だと分かる。女性は横になっており、ちょうど女性の頭が、あぐらをかいている男性の膝に乗っているようだ。
(膝枕でもしてんのかね・・・?俺と同じ旅の者か・・・?・・・!!?いや、ありゃ違う・・・!)
それに気付いた頃、聞こえ続けていた音が止んだ。一瞬だけ、雨が屋根に当たる音と、小さな松明のパチっという音だけが、空間を支配する・・・。
「客人とは・・・珍しいね・・・。」
男の声だ。か細く、しゃがれた病人の様な声・・・。シャドウはゆっくり立ち上がり、残りの階段を上り、男を見据え、言った。
「何してんだ?アンタ・・・。」
「・・・見て判らないか?」
女は、死んでいる。男は、髪を引き抜いている。シャドウは再度聞く。
「そりゃ判るが・・・どうすんだって聞いてんだ・・・そんなモン・・・」
多少の威圧を持て問うが、男は悪びれる様子も無く淡々と答える。
「売るんだよ」
「死体をか?」
「髪をだ」
続けざまの質問に、男は間髪入れずに答える。再び、雨音と火の音のみが聞こえたが・・・。
・・・ザザザサザササザササササ・・・・ザザササササササザザ・・・・・・・・・・
そこへ竹林がざわめく。やはりこの竹林、気味が悪い・・・。そのざわめきを続けるかのように、男が沈黙を埋める。まるで竹林と話している様だ・・・。
「髪だけじゃない・・・服も売れる。この女は剣も持っていた・・・。それも売れる・・・。ここには死体が集まってね・・・。誰も通らないから、骸を捨てるにはもってこいでな・・・。自殺の名所でもあるようだよ・・・。」
改めて男をよく見てみる。ボサボサになった髪。洗っていない体。痩せ細り、傍にある死体よりも生気の無い顔。だが、服は死体からはぎ取ったらしく、不釣合いなほど小奇麗である。何度もこんなことをやっている証拠だ。そして何よりその目は、見開いている訳でもないのに、ギラギラとドス黒く輝いている・・・。
(ヤベェ・・・イってんな、コイツ)
そんなことを考えていた時、男の目が、更なる嫌な輝きを放ちながら身を乗り出し、言ってきた。
「アンタ・・・シャドウか?!」
(!!?)
いつも表情を崩さないシャドウも、今だけは自分の顔がどうなっているのか分からなかった。出来る限り嫌悪感を抑えながら、シャドウは答える。
「・・・。おれ自身、そう名乗った覚えは無えが、そう呼ばれてるな・・・。何で分かった?」
男は、シャドウが持っている武器を指差し、
「そんな武器持ってんのはアンタだけだぜ・・・!噂通りだ・・・『ボウガンに刃が付いたみたいな武器』・・・何処で作ったんだ・・・?そんなモン?」
自分で確認は出来ないが、努めて平静を保って短く言った。
「答える必要、無えだろ?」
(しまった・・・、でもしょうがねえか・・・。)

普段いる城下町以外では、普通に顔を晒して歩いている。それもそのはず、布を全身被った見慣れない奴が歩いていたら、誰であろうと不審に思う。普段いる街でも、昼は入らず、あえて警備が厳重な夜を狙う。警備の仕組みをよく知っているため、最初は少し苦労したが、今ではお手の物だ。だが、他国ではそうは行かない。元々警備なんてものがされていない所もある。そういう所では、普通が一番。普通というものが、一番人の記憶に残りにくい。この普通ではない武器も、腰布を巻いて隠しているはずであったし、もう1つの武器、左胸にある短剣は元々服の下だ。

(俺のことを知ってるってことは、コイツもその筋の奴だな・・・。噂なんてモンは、流れるとロクな事が無い。今みたいにな・・・。普通だったら『剣にボウガンだよ!』とか言うんだが・・・、気味悪過ぎだぜ・・・!コイツは・・・!)
男はヘラヘラと笑い、そりゃそうだと口にした。
シャドウは警戒したままではあるが、エモノを収めた。男は武器も持っていなし、体格からしても戦闘が得意だとは思えない。そして何より、この男の視線が自分の武器に注がれるのが我慢ならなかった。シャドウにとって、この剣と、左胸にある短剣は、少し特別なのだ・・・。
また少しの沈黙。雨は止みそうにない。そしてまた、男の竹林のざわめきのような声が部屋に響く。
「なぁ。アンタに頼みがあるん・・・」
「断る」
反射的に男の言葉を遮る。男はまた笑い、絶たれた言葉を紡ぐ。
「そう邪険にすんなよ・・・なに、悪い話じゃない。ちょっと、ある女のことを見てきて欲しいってだけさ。」
「女・・・?」
階段横に座り、壁に寄りかかるシャドウに、男は続ける。
「そうだ。アンタどっちから来た?」
そう言いながら男は人差し指をヒョイヒョイと右左させる。
「橋を挟んだ、宿場町側・・・」
シャドウはその指の動きを止めるべく、ビッと、今まで歩いて来た側を指しながら言った。
「じゃあ引き返してもらう事になるな・・・。その川を上っていったところに、女が一人で暮らしている・・・。そいつの様子を見てきてくれ・・・」
(なんだそりゃ・・・?馬鹿夫婦の依頼よりしょうもねえ・・・。)
そんなことを思いながら、気になったことを聞く。
「自分で行かねえのか?」
男はニタリと笑い、「それが出来ねえから頼んでるんだ」と、返した。
また暫し、沈黙が流れる。雨は小降りになってきたようだ。
・・・ザザサザサササ・・・・ザサザザザ・・・・・・・・
ここまで聞いておいて何だが、シャドウは断る気でいた。こんな奴の依頼は聞きたくないし、何よりその身なり。金を持っているとは思えない。
(金になんねえ話は御免だぜ・・・。)
雨が止むまで、あともう少し・・・。適当に言って出て行くつもりだったが・・・。
「それと・・・」
「まだ何かあんのか?」
男はまた死体の髪を毟っていたが、チラリとこちらを見て沈黙を破った
「その女に・・・もし何か頼まれたら・・・その頼みも、聞いてやってくれ・・・」
「・・・」
ますます訳が分からない。だが、雨は止んだ様だ。ようやくコイツともオサラバだ。シャドウは立ち上がりながら、
「悪いが、アンタに依頼料が払えるとは思えねぇ。この話、無かったことでいいか?」
そう言って立ち去ろうとした時、男はこちらの言うことを見透かしていたかのように・・・、
「金ならある」
そう言って男も立ち上がり、死体を放っておいて階段を降りながら「付いて来い」と言った。
シャドウは残された死体を見ていた。無様に剥げ上がった頭。乱れた服。絞め殺されたのだろうか?虚ろに半目を開け、だらしなく開かれた口からは涎の跡。シャドウははっきりと、自分が顔をしかめているのが判った。

男が連れてきたのは、先程までいたのとは反対側の2階だった。だが、中の様子は全くの逆だった。宝石が無造作に転がっている。札束もいくつあるか分からない。呆然とするシャドウに、男は淡々と話す。
「いくら持っていっても構ない。なんなら、全部でもいい。」
シャドウは混乱していた。
(なんだコレ・・・?悪い夢か?いや、夢だとしたらいい夢なのか・・・ああ、いや違う・・・何でコイツこんなモンを・・・。何でこんなトコで暮らしてんだ・・・?この金銀財宝はどこから・・・。
・・・ザザザサザサササザサ・・・・・ザサザザザ・・・・・・
コイツ・・・何者だ・・・?)
・・・・・サザザザザ・・・ザザ・ザ・・ザザザザザザザザサ・・・・・
この男が何者か、まるで検討がつかない。探る意味もこめて、男に問う。
「女のトコに行ってよ、そいつから『誰の頼みで?』って聞かれたら・・・何て言えばいい?」
男はニタリと笑い、逆に問い掛けてきた。
「受ける気になったのかい?」
「こんないいモン見せられちゃあな・・・。」
「そうか・・・。」
少しの間があって、
「俺はエンっていうんだ・・・。」
(エン?知らねえな・・・。まぁいいか。こりゃあビックビジネスだぜ・・・。)
シャドウは札束の1つを手に取り、階段を下りながら言う。
「足代として、1つ貰って行くぜ?」
「もう行くのか?」
とエンは振り返らずに聞いた。シャドウも足を止めずに答える。
「雨が上がったんでな。」
エンが続けて聞く。
「それだけか?」
その問いかけに初めて足を止め、顔だけ振り返ってシャドウは言う。
「気味悪いから長居したくねえって言って欲しいのか?」
エンの言葉が癇に障ったのか、その言い方には、明らかに棘がある。2階からの「頼んだぞ」という声を聞きながら、城門を後にした。
元来た道を引き返しながら煙草を点け、シャドウは考える。
(化物ってのは、あのエンって奴の事か・・・?その化物から依頼を受けるとはね・・・。)
・・・ザザザザザササザザサザ・・・・・ザササササザササ・・・・・・・・
(・・・。いや、この竹林に、依頼を受けるよう仕向けられたみたいに感じる・・・。)

ザザササササササササザササ・・・・・・・・・・・・

「よぉ・・・。早かったな・・・。女はどんな様子だった?」
「・・・・・・そりゃあ元気そうだったな・・・。だがよ・・・。」
シャドウが放つ並々ならぬ殺気に、気付いていないのか、それとも動じていないのか・・・。エンは薄笑いを浮かべながら聞き続ける。
「だが・・・?」
一瞬の間。シャドウがボソリと・・・
「死んだ・・・。」
エンが間髪入れず、
「・・・殺したんだな・・・?」
また一瞬の間・・・。先程より一拍長い。
「・・・・そうだ。」
エンは表情はもう常人の物ではない。楽しくて楽しくて・・・人の不幸が楽しくて楽しくて、しょうがないという危なすぎる顔で、またシャドウに聞く。
「2人共か・・・?」
僅かではあるが、シャドウの空気に変化があった。驚きと、やはり、というものが同時に湧き上がる。
「テメェ・・・そうなるのが分かってたんだろ・・・?」

ザザザザザザザザザザザザ・・・ザザザ・・・ザザザ・・・ザザザ・・・

ここは緑溢れる山の中腹。目下には、昨日いた街道町と竹林が見える。ここは晴れているが、まだ町のほうは、少なくとも曇りらしい。
「ン・・・アハ・・・」
(・・・・・・・・・)
小川のせせらぎの隣に、小さな小さな小屋がポツンとあり、小屋から少し離れて、これまた小さな小さな畑がポツンとある。非常に気持ちがいい場所だ。
「ア!・・・アア・・・!あ、イイ・・・イイ!そこ・・・奥・・・奥・・・」
(・・・・・・はぁ・・・)
昨日、ここにも雨は降ったらしく、空気は澄み渡り、草木は潤っている。寝転んで空を見上げているシャドウは非常に心地よい・・・はずなのだが・・・。
(いや・・・まいったね・・・こりゃ・・・。)
山頂を頭にして寝ているシャドウのもう少し上。そこで絡み合う一人と・・・一匹・・・?
バックから、それはそれは立派な物を突き立てているのは猿・・・いや、熊・・・?猿と熊を7対3で合わせたような、身の丈2mはあろうかという獣。
一方女の方は農作業の途中だったのであろう。髪を頭の上でまとめていて、はだけた服は泥だらけである。・・・泥だらけなのは、土の上で転がりまわったのもあるのだろうが・・・。
始めは襲われているのかと思ったが、楽しんでいるのは明らか。止めるのは気まずいので、こうして事が終わるのを待っているのだ・・・。
シャドウは直接見ている訳ではないが、そろそろ終わりそうなのが分かる。・・・声で。
「アアア!アア・・・!!ア・・・ア・・・・・・イクの?!・・・来て!来て!!・・・ア!!!・・・」
獣が大きく唸ったと共に、接続部から大量の白濁が溢れ・・・否、噴き出していく。ヌルリと大きなそれが白の中から顔を出す。女はその感触を楽しむかのように鳴く。
「やっと終わったか・・・。」
シャドウは立ち上がり、行為を終えたばかりの二人・・・いや二匹・・・?・・・一人と一匹の方を向いた。
おそらく、数秒前まではだらしなかったのであろうモノが、今は凛としている・・・。
「・・・2本目・・・?!嘘だろ・・・!」
獣はまた興奮したのか、辛抱たまらんといった感じだ。女もそれを嫌がっている様子はない。
(ああ・・・体力があり過ぎるのも考えもんだな・・・。って冗談じゃねぇぞ・・・!待ってたら夕暮れまでかかりそうだ・・・。でもなぁ・・・今行くの・・・スッゲェ気まずくないか・・・?どうするかなぁ・・・このままトンズラこくか・・・?)
そんな時、シャドウの視線と女の視線がカチ合った・・・。気まずい空気。引きつるシャドウの顔・・・。対する女は、特に気にする風でもなく、じっとこちらを見つめるのみだ。獣もこちらに気付いたようだ。ますます気まずいシャドウ。
(・・・ヤッベェ・・・逃げるか・・・?って、今逃げたら覗いてたみたいじゃねーか!ッチ!しょうがねえ・・・。)
半ばヤケクソになりながら、再び一つになりかけていた一人と一匹に向かう。獣は行為が途中で止められたのが、気に食わないらしい。牙を剥き、物凄い形相で唸る。だがシャドウは唯・・・淡々と歩いていく。淡々と、淡々と・・・。距離に比例して、近づいてくる圧倒的な圧力を本能で感じ取り、獣は名残惜しそうにその場を後にした。
遠のいていく獣を横目に、煙草を咥えるシャドウの傍ら、女は服を羽織り直し、艶のある黒髪を解く。その姿の淫靡なこと、ヌード絵画のようだ・・・泥だらけというのが、最高に趣味の悪い・・・。言葉に困り、シャドウはとりあえず喋る。
「ありゃ何ですかい?彼氏?」
返す女の、服の羽織方が淫らに思える・・・。
「さぁ、知りません・・・。たまたま居たから誘ってみたの・・・。あなたも、それが目的なんじゃなくて・・・?」
・・・ゾクリとした・・・
(普通のヤツだったら『ハイ!喜んで』とでも言うのか?俺ぁそんな気にはなれないね・・・。こういう‘色,を使ってくる手合いが一番危ない・・・。)
「いやいや・・・、そんな気はサラサラ・・・。それより、ヤル時は場所を選んだ方がいいんじゃないですかい?病気になりますぜ?ビョーキに・・・。」

ここにもあまり、長居したくないと感じたシャドウは、早速本題を切り出した。
「ある人に、アンタの様子を見てきて欲しいって依頼を受けましてね。」
その『ある人』というフレーズに、今まで崩さなかった女の面妖さが変った。
「ある人って・・・誰・・・!?」
だがその表情は、宝石を目の前にした強盗の様で、あのエンというヤツと同じくらい気持ち悪かった・・・。質問の答えに、そのエンの名前を出すと、エンは『宝石』じゃなかったのだろう、女は急に冷めた。これは好機と、シャドウはもう一つの依頼、『何かして欲しいことはあるか』ということを切り出した時だった・・・

ササ・・・サ・・・・ササササ・・・・サ・・・・・ササ・・・・・・

深夜、シャドウは小路で人を待っている。その目は小路を出た先の大通りに向けられている
かなりの時間が過ぎ、月が天高く輝いている。足元には何本もの煙草がクシャクシャになっている。
(こういうのをたらい回しっていうんだろうな・・・。)
レンガ畳の道を、人々が歩くハーモニーを聞いていたのはどのくらい前だろうか・・・。今ではこの小路に住む野良猫の声しかしない。その小路から大通りの方を見ている。ある男が通るのを待っているのだ。
それから更に待った、もう猫すらいなくなった通りに、男が歩いているのが見えた。
(目尻から顎にかけての大きな傷跡・・・。アイツだな・・・。)
シャドウは小路から大通りに出て男の後を追う。もちろん、完璧に気配を消した上で・・・。男は通りの一角にある、自分の家に入っていった。シャドウはそのドアの前で考える。
(ここが家か・・・こんな町のド真ん中にあるんじゃあ、昼間は手ぇ出せねぇな・・・。殺るなら夜か・・・。あー面倒くせぇ!ホントにこのまま帰るか?でも、あの大金がかかってるんだし・・・。何より、受けたからにはやり通すのが主義だからなぁ・・・。)

その時、バキッ!っという音と共に、目の前のドアから刃が生えてきた。
「っうおぉ!?」
上体を反らしてギリギリで回避。そのまま弾ける様に距離をとる。ドアから生えた刃が引っ込んだかと思うと、ドア自体が吹っ飛んでゆき、中から男が左右を確認しながら出て来た。男の手には、簡素ではあるが、使い込まれた槍が握られている。そしてボソリと「見たこと無い武器だ」と言った。それを聞いて、シャドウもエモノを取りながら唸るように言った。
「気付いてたのかよ・・・!」
それを聞いて男も言う。余裕たっぷりの勝者のような喋り方だ。
「いや、気付いてなかったよ・・・。貴様が歩き出すまではな。」
「歩き出す・・・あぁ?」
男は槍を肩に担ぐように持っている。上半身は磔にされた様な形になっている。
「貴様は・・・森か山・・・。森だな。森に四六時中居るだろう?気配断ちは見事な物だが、こういう・・・」
男は足でレンガ畳をコンコンッと踏み鳴らしてみせ、続ける。
「硬い地面には慣れてないな?それに、その靴、金属が付いているだろ?それで、ほんの少しだが、足音がしたんだよ。気配も無いのに足音だけがして、それに尾行されちゃあおかしいと思うだろ?」
シャドウはまるで師でも仰ぐかのように聞く。
「・・・確かに森にしょっちゅう居るし、つま先と踵に鉄板打ち込んでるけどよ・・・。そんなに下手だったかい?俺の尾行は・・・?」
師の答えは、
「いや、大したものだ。この街の地面がレンガでなければ気付かなかっただろうな・・・。だが、まだまだというヤツだな」
(・・・相当ヤバイな・・・。足音だけでそこまで・・・占い師か!?多分、対人経験が雲泥の差だろうな・・・。)
最近こればかり言っているが、聞かずにはいられなかった。
「アンタ何者だよ・・・?」
男は多少驚きながら答える、
「ん?俺をオズだと知って殺りにきたんじゃないのか?」
「は?いや、俺ぁただ依頼で来ただけ・・・え!?オズ・・・?アンタ等『オズエン』か!?」
『オズ』よりさらに大きな驚きが、シャドウを貫いた。オズは『アンタ等』というのに引っかかったようだ。
「アンタ等・・・?貴様・・・エンの野郎に会った事があるのか・・・?」
「ああ、そりゃもうつい最近ね・・・。」
(ますますヤバイな・・・『オズエン』っていえば、神出鬼没にして、残虐非道。そして構成員が何人かも分からない盗賊団だ。ロコじぃですら情報はほとんど掴んじゃいない・・・。本当にあるのか無いのかすら疑わしいが、噂だけはよく耳にしていた・・・。だがここ2、3年噂はプッツリ途絶えたんで、忘れてたぜ・・・って言うか、『オズエン』って名前からして、盗賊団はこいつとエンの二人だけか・・・?)
「あの野郎の差し金か・・・?」
オズの問いに、シャドウは言葉を濁す。どう答えればいいのか迷っている。
「えー・・・いや、まぁ・・・『ノヌ』って女だよ。直接はな・・・。」
だがオズは、あの山に居た女、『ノヌ』にも心当たりはあったようだが・・・。
「ノヌ・・・?ああ・・・あの女か・・・。それで、田舎者よ・・・殺す相手の事も知らずに来た貴様こそ、一体誰だ?」
「ん?俺?名乗る程の者じゃ無ぇ・・・。唯の可哀想な奴だと思ってくれや。」
オズはフッと笑い、続ける、
「・・・まぁ、俺が興味があるのは、貴様が『楽しめそう』という事だけだ・・・。」
そういってオズは構える。
(・・・?っう!!?)
その瞬間シャドウも構えざるを得なかった・・・。オズの纏う空気が一変したためだ。恐ろしいほどの威圧感と殺気で突風すら感じる。
(何・・・!?コイツこんなモン今まで隠してたのか・・・!?ヤバイ・・・。コイツはヤバイ・・・!)
全身が総毛立つ。汗が吹き出る。心拍が速くなる。目玉が飛び出るほど見開かれる。相手の鼓動が聞こえるほど耳が研ぎ澄まされる。
・・・空気が・・・極限まで・・・張り詰めていく・・・!
もし、この場に第三者がいたのなら、対峙する2人の間の空間が歪んでいる様に感じたであろう・・・。
シャドウは構えているオズから目を離さない。いや、離せない・・・。槍は『百兵の王』と呼ばれるほど完成された武器である。が、それだけに使う者は多く、能力はピンキリ。中には屋敷の廊下など、狭い場所で長物の槍を使ったりする奴も、いたりしたのだが・・・。目の前にいる男は、そんな事は間違ってもしそうにない。
(ヤベェ・・・無理!絶対勝てねぇ!逃げてぇ・・・。だが・・・逃がしてくれそうにゃあないな・・・。さっきの言い方、戦闘を何よりの楽しみにしてるみたいだし・・・。クッソ・・・!やっぱトンズラしときゃあよかった!)
そんな、張り詰めた空気の中、シャドウの耳は音を捉えた。普段はこんな状況なら、まず要らない情報として処理していたであろう、あの耳障りな音を・・・。

サ・・・ササササ・・・・ササ・・・・サ・・・・サ・・・・

(ん・・・?竹・・・!?)・・・て欲しい男がいるんです・・・!」
シャドウは女、『ノヌ』の話を一瞬だけ聞いていなかった・・・。
(何でこんなトコに竹が・・・!?それにおかしい・・・。竹ってのは群生して生えるもんだ。根で繋がった株は、全体で一つ。だから、一本だけ生えるってのは無いはずなんだが・・・?)
シャドウが気を取られたのは、小屋の傍にある、一本だけの竹。あの竹林を思い出してしまったのだ。そして、普段なら有り得ないのだが、適当に相槌を打ってしまった・・・。
「ああ、はいはい・・・えっ?」
「私の住んでた村を・・・焼き払い・・・村の財宝を奪っていった男を・・・」
ノヌの口からは、意外な言葉が飛び出ていた。
「何して・・・欲しいって・・・?」
再度聞くが、ノヌはヒートアップしている。それが気味の悪さを倍増させる・・・。
「私がやりたいくらいだけど・・・そんな力は私には無い・・・。さっきあなた、あの獣を何もせずに追い払ったでしょう?あなたなら、やれるかも・・・。」
(かもじゃねえよ・・・!何て言ったんだ!?何だか面倒臭ぇ事になりそうなのは確かだが・・・。)

 結局、ノヌの『して欲しいこと』を叶える為に、シャドウはここを発つ。
(あ〜あ・・・。なんてこった・・・何で相槌なんかしたのかね・・・?)
そこで小屋を振り返り、目に入る竹・・・。
(エンって奴の時もそうだった・・・。偶然か・・・?まぁいい!サクッと行って、サクッと殺って、サクッとここに戻って、サクッとエンに会って・・・って、全然『サクッと』じゃねぇ・・・。やっぱトンズラ・・・。いや、受けたからには・・・)
こうして、舞台はレンガ畳の街に移った。

サ・・・ササササ・・・・ササ・・・・サ・・・・サ・・・・

(ここにも竹!?)
一瞬・・・一瞬だけ気が逸れたのを、オズは見逃さない。反応というよりは、反射だった。シャドウのリカバリーも、反射だった。オズの神速の突きを弾いていなし、一気に距離を詰める。
(長物に対しては内へ!!)
そこに槍の棒部分での打ち下ろし。強烈無比だがなんとかこれも防ぎ、やっとシャドウの距離になる。水平にエモノを薙ぐが、オズはタンッっと後ろに飛び、空中で槍をぐるんと回し、着地と同時に突いてくる。その突きは届かない。打ち下ろすために軸手を刃の方に滑らせていたためだ。その・・・はずだった、オズは体重を前に移し、軸手を筒として押し出すように突きの距離を伸ばす。シャドウは驚きながらもこれも防ぐ。多少グラついたが前進は止めない。再びシャドウの距離。低く水平に切りかかるが、オズの意外な防ぎ方で止まった。オズはまるで仁王立ちでもするかのように、槍の尻を地面に突き立て、自らの脚に迫る斬撃を止めた。その力強さはレンガを打ち砕かんとする程である。だが、これではオズも手は出せないはずだが・・・。
(・・・!?)
驚くシャドウが次の行動に移る前に、オズは動いた。槍を手放したかと思うと、シャドウのエモノを支点として、槍をコォンと叩き、シャドウに向かって倒してきた。力点、つまり、刃はシャドウに向かって弧を描きながら迫る。これには対処しかね、空いている左腕で物理の法則を止め、距離を取ろうとする。オズは槍を蹴り上げ、マジックのように元通りに手に取り、2,3発突いてくるが、シャドウは防ぎながら槍の射程外へ・・・。
 以上の事柄が、10秒と経たずに繰り広げられたのだ。

 ブハッ!っと噴き出し、肩で息をするシャドウとは対照的に、オズは飄々としている。
(なんだぁ!今のは!!槍が・・・降ってきた!!そんな感覚だ!それに・・・。)
「オズさんよぉ・・・。その槍、柄も金属か!?」
オズは飄々としたまま答える。
「ん〜?言ってなかったか?」
「・・・槍ごと脚、ぶった切ったと思ったんだがね・・・。」
そう苦々しく言うシャドウ。オズは余裕がある様だ。感心している。
「いい反応をするな。久々だぞ!我が槍と一度交えて生きているのは。あの女もどういうつもりか知らんが、たまには役に立つ・・・。」
シャドウはとにかく時間が欲しかった。息を整え、切り札を出すために。そのために正直どうでもいい話をした。
「その、ノヌとアンタ等『オズエン』は、一体どういう関係なんだ?そもそも『オズエン』ってのはアンタ等2人だけのことなのか?」
シャドウの時間稼ぎを、見透かしているのかどうかは分からないが、オズはあっさり答えた。
「そうだ、エンは計画を練ったりなんていうことをして、俺が戦闘を担当。お互い利用し合ってただけだがな。あの女は、よく分からんが、自分の居る村を壊して欲しいと言ってきた。報酬として、財宝をやるからって言ってたなぁ。」
どうでもいい話は、どうでもよく無くなった・・・。
(え・・・?!壊して欲しい?!襲われたんじゃあ・・・?まぁいい・・・。あの女に問いただすにも、まずはここを生き延びねぇとなぁぁ!!)
シャドウの構えが変る。先程までは、エモノを持っている右手側を前にして半身になり、切っ先を相手に真っ直ぐ指していたが、今度は左手側が前。エモノを肩に担ぎ、左手は相手に向かって突き出す。重心が低いのはどちらも変らないが・・・。
それを見てオズも構え直し、笑いながら言った。
「腹ぁ決まったか!?わざわざ待ったんだぁ!スゲーのを期待してるぜぇ!!言っておくがそんなチャチな矢は俺には効かんぞ!?」
時間稼ぎは見透かされていたようだ。オズは最早、戦士や騎士、傭兵というような顔ではない。戦闘狂の顔だ・・・。
(ッチ!バトルジャンキーが!!コイツもイカれてやがる・・・。これはやりたくねぇんだがな・・・。リスク高ぇし・・・。でもやるしかねぇ!ジリ貧になったら・・・死ぬ!!)
 自分を鼓舞するため、オズに向かってタンカを切る。
「傷増やしてやるよ!致命傷っていうなぁ!」
対するオズは声もなく笑う・・・。発してはいないが、『来い』と言っているのが分かる。
 互いの集中力がピークになり、重力が増したかと思う程の緊張感が周りを支配するが、月は落ちてこない。それが不思議に思えるほど、空気が重苦しい。

シャドウは突進した。オズの突きが迫るが、左手でいなし、尚も突進する。シャドウの距離になり、腰の入った斬撃を繰り出す。オズはまた後ろに小さく飛ぶが、攻撃が出来る体勢ではない。唯の回避だ。シャドウの斬撃はフェイント。返し薙ぎをするがこれもフェイント。薙いだ勢いでそのまま腕を背中に回し、オズの着地と同時に自分の背中からの突き。だが体を回って出た突きに距離は無い。ここで矢を1本射出する、
(遠間から撃つだけが矢じゃねーんだよ!馬鹿が!!)
この矢をオズは弾く。シャドウはそれも盛り込み済み。不安定な持ち方をした槍に向かって打ち下ろす。槍は地に落ちた!そこに打ち下ろしから派生させた縦回転、更にシャドウはジャンプして最上からの斬撃。
(入る!!)
シャドウがそう思った瞬間、オズは淀みない動作でバウンドした槍を蹴り上げ、天から襲ってくる刃を槍で逸らす。・・・この交錯でも両者に傷はつかない。
その時オズは思った。言葉としてではなく、感覚的に・・・、
(この矢を絡めた一連の攻撃が切り札か・・・。確かに少し驚いたが、それだけだったな・・・。)
突進の勢いを殺し、オズに振り向くシャドウ。その動作は、はっきり言って隙だらけだった。正確にその左胸に突きを叩き込む。その瞬間、手応えの違和感と共に、オズの脳に流れ込んだ視覚情報は、左目に真っ直ぐ迫る矢・・・。左目からの情報は、それで途絶えた・・・。代わりに激痛が脳に送り込まれてくる。
「っがぁ!!?」
 あまりの突きの威力に吹っ飛んでいたシャドウは、急いで起き上がり。たった今相手に出来た死角、そこに滑り込むようにオズに近づき、倒れ込むように胴を薙いだ。

 鮮血が飛び散り、レンガを赤に染めていく中、オズは初めて膝をついた。かは〜っと情けない声を上げながら尻餅をつき、煙草を取り出すシャドウにオズは言う。
「き・・・貴様の胸は・・・、て・・・鉄で・・・出来てるのか・・・?」
緩みきった表情で煙を吐きながら、シャドウは答える。
「んあぁ〜?なワケねーだろ。見えるか?これ?切り札ってのは最後までとっておくモンだなぁ。」
そう言ってジャケットの左胸をめくる。そこには、短剣・・・。
「ね・・・狙ってたの・・・か・・・?」
オズの出血は止まらず、息も絶え絶えだが、結構はっきり喋る。シャドウはしんどそうに立ち上がり、膝をついているオズの前に立って答える。
「賭けだったけどな。勝率は40%ってトコ。頭狙ってきたんなら何とか避けられただろうしよ。ま、勝率40、負け率20、流れが40って感じだ。」
100%の勝ち誇りぶりでそういった。そして気になる事を聞いてみた。
「ノヌって女の事だが、さっき言ってたのは本当か?」
「あの・・・女の事で・・・、う・・・嘘をつくほどの・・・事は・・・知らん・・・。お・・・俺も貴様に・・・聞きたい事が・・・ある。」
「何だ?」
オズは朦朧とし始めたのか、焦点が定まっていない。
「これは・・・エ・・・エンが・・・、仕向けて・・・い・・・いるのか・・・?」
答えになるかは分からないが、とりあえずシャドウは答えておく。
「まぁ・・・事の発端はアイツ・・・ってことになるかな。」
そんな曖昧な答えに、オズは激しく反応した・・・。
「は・・・ははははは・・・ははは・・・。や・・・やっぱりあの野郎か!!っかは・・・。財宝持って・・・逃げやがってぇぇ・・・!こ・・・殺す・・・殺す!!殺す殺す殺す殺・・・」
オズはその言葉を連呼しながら、落ちた槍に向かって這いずったが、槍に手が届く事はなく、その動きを完全に止めた・・・。
その異常な最後を、シャドウは目を逸らさず、声も上げず見届けた・・・。そして、今目の前で息絶えた男の言った事を考えていた。
(どうやら、エンって奴は相当腹黒い野郎らしいな・・・。それに、ノヌ・・・。まぁ依頼主の私情なんかにゃあ興味無いが、どういうことなのか聞くくらいは、いいだろ・・・。)
そのノヌの元に戻るべく、歩み出した時・・・
・・・ササ・・・・サ・・・サササ・・・サササササ・・・・サ・・・
オズの住んでいた家の脇に、竹が青々と立っている。
(・・・この竹は、一体何なんだ・・・?気味悪ぃ・・・。)
その囁き、笑っているような竹の音は、いつまでも頭から離れなかった・・・。
・・・サササ・・・サ・ササ・・・・・・・サササササ・・・・

ザザザザザザザザザザザザ・・・ザザザ・・・ザザザ・・・ザザザ・・・

「テメェ・・・そうなるのが分かってたんだろ・・・?」
エンの「二人ともか?」という問いに対して、問いで返すが、YESと言ったも同然である。エンもそう受け取った様だ。
「ほぉ・・・その様だな。まさかオズを殺れるヤツがいるとはなぁ・・・。驚きだよ・・・。」
エンは歪んだ瞳を真っ直ぐシャドウに向ける。シャドウは、威圧しているのは自分のはずなのに、押されているのを薄々感付いていた。
(死後の世界なんてのは信じちゃいないが・・・、ここは地獄だ・・・!)
首筋の汗が・・・止まらなかった・・・。それを知ってか知らずか、エンは笑い、そして続ける。
「それにしても、ノヌまで殺す必要はあったのか・・・?オズは、殺さなければ止まらんとしてもな。」
「・・・。」
あの時シャドウは・・・まだ、ノヌは話が通じる相手だと思っていた・・・。

ザザザザザザザザザザザザ・・・ザザザザ・・ザザザザザザ・・・・

シャドウが帰ってきたことに、ノヌは驚いた。オズを殺してきたと伝えると、ボソッとこぼす様に、
「嘘・・・。」
と言った・・・。
以前来たときとは違い、山の天気は悪く、靄がかかっていて、かなり視界は悪い。数メートル先に居るはずのノヌの姿すら、はっきりとは伺えないが、動揺があったのは分かった。
「あと、件の男なんですが、貴方の事知ってましたよ?」
そう言うと、ノヌの気配がまた変わった。以前シャドウが、『ある人』と言った時に感じた気味の悪さだ。それと、とても大きな期待をしている様だ・・・。
「え・・・?なんと言っていたの・・・?」
吐き気がするほどの艶やかさが、急に出て来た・・・。
(『あの人』ってのは、オズのことだったのか・・・?じゃあ何故殺そうとする・・・?)
そう思いつつも、シャドウは答えた。
「よく分からん女だ・・・と、そう言ってましたよ。」
シャドウの言葉が終わらないうちに、ノヌは急激に動揺し始めたのが分かった。続けるシャドウ・・・。
「元々知り合いなんですかい?なんで殺そうなんて・・・。」
「なんでぇ・・・?」
(なんでぇ・・・?じゃねーよ!お陰でエライ目に遭ってきたんだ!理由くらい吐けや・・・!)
その言葉に、ノヌがシラを切ったと思った。村を襲わせたという証拠を消すために、シャドウに始末させた。と考えたのだ・・・。煙草に火を点け、ここから本題に入ろうと思っていたが・・・。
「ええ。相手の事は、少しでも分かってた方が・・・」
「なんでなのぉ・・・?」
(・・・ん?)
ノヌの様子が明らかにおかしい。この靄と変わらない色の空を仰ぎ、ダランと全身から力が抜けている。靄のせいもあって、話しかけられたのか、独り言なのか分からなかった。それは尚も続き、シャドウは対応に困る。その中に、爆弾発言はあった。
「強そうな人・・・あんなに沢山贈ったのに・・・。なんで来てくれないのぉ・・・!?」
(・・・!!今・・・何て言った・・・!?)
最早会話は成立していない。ノヌはこの世にいない男のことで、シャドウは情報処理に、お互い必死だ。
(オズのために強そうな奴を贈ってた?プレゼントのつもりか・・・!?この女はオズと恋仲なのか?いや、オズはそんな風じゃなかった・・・。オズが嘘を・・・?そもそも、なんでこの女はエンとは面識がない・・・?『オズエン』のブレーンはエンだ。っていうか、何処で『オズエン』と知り合った?ロコじぃすら何も知らないんだぞ!クソ・・・!ワケわかんねぇ・・・!)
シャドウは聞いていなかったが、ノヌのトリップの方向性は、彼に転換していた。
「なんで殺したの・・・?あなた位の人なら、あの人も喜んでくれて、会いに来てくれると思ったのに・・・。なんであなたが帰ってくるの?あなたが死ねば良かったのに。死ねば良かったのに・・・死ねば・・・」
(ん?何か言ったか・・・?え!?沈んだ・・・!!?)

靄が濃くなり、もうノヌの影しか捉えきれない。その影が、地面に向かって小さくなったためにそう思えたのだ。だが、その影の主は、すぐに靄の中から姿を現した。右手に農業用であろう鎌を持って・・・。 恐ろしいほど低い大勢から、鎌はシャドウの首を狙ってきている。シャドウは、棒立ちだった。
(低・・・!ヤバイ!!殺られる・・・!)
だが、ノヌの体勢の低さに助けられた。咥えていた煙草を、相手の顔に向かって吹き捨てる。驚きと熱さで一瞬動きが鈍った鎌が、顔の真横を駆け上った。倒れ込むほどの勢いで鎌を避けたシャドウは、その勢いを手に乗せ、ノヌの顔面に見舞ったが、それは拳ではなく、平手。むしろ、力一杯押し飛ばしたという表現の方が近い。

(危ねぇ・・・!だが、対応できない程の速さじゃないな・・・。)
ノヌは、あぐっ!っと短く悲鳴を上げて、受身も取れず地面に転がるが、すぐにユラリと立ち上がり、フラフラとシャドウに向かって歩いてくる。鎌は、手放していない。シャドウは武器を取りながら警告する。
「オイ!来るな!!今度は斬るぞ!」
だが、会話はもう噛み合わない・・・。
「私の顔・・・。せっかく綺麗になったのに・・・。あの人に見せられない・・・!」
おぼつかない足取りを、ノヌは止めようとする気配は無い。
(この女・・・!イカれてるなんてもんじゃねー・・・。ブッ飛んでやがる・・・!!)

ブッ飛んだ女が再び仕掛けてくる。先程と全く同じ動作で。
(見えてるんだよ!素人が!!)
シャドウの剣は下方から来る鎌を受け止める。矢継ぎ早に左手でノヌの左膝辺りの服を掴み、彼の腕はクロスした形になる。そして服を掴んだ左手は上へ、鎌を止めた剣は、刃裏でノヌの右腕、右脚を巻き込み、空に上がり行く左脚を追いかける。華奢なノヌの体は、空中で一回転し、地面に叩きつけられた。すぐさまシャドウは倒れたノヌの首の真横に剣を突き立て、
「妙な事すんな!!本気で殺すぞ!!!」
そうノヌを静止しようとした。しかし、ノヌは寝ている状態からも、鎌を振り回してきた。その鎌を防ぎ、ノヌから離れると同時に、シャドウは遂に腕を叩き斬った・・・。白い靄の中に、真っ赤な赤が天に向かって噴き出す・・・。だがノヌは叫ぶわけでも、痛がるわけでもなく、ボォーっと傷口を見て、
「綺麗・・・。」
確かにそう言った・・・。耳を疑うシャドウ・・・。ノヌは起き上がり、落ちている鎌を、自分の右腕ごと手に取る。左手に装備した『右腕付きの鎌』で、またシャドウに襲い掛かる。今度はスピードも無く、鎌を振り上げてきた。シャドウは目も疑ったが、迫るノヌに覚悟を決めた・・・。
(話が通じないなら・・・。しょうがない・・・。)
シャドウはまず、鎌を弾き飛ばす、鎌はノヌの『右腕』から離れ、ノヌの装備が唯の『右腕』なった。そしてノヌの左肩から斜めに小さく、斬った。

 ノヌはそのまま倒れこみ、寝返りを打って仰向けになってから、溢れ続ける赤い液体を見て、また言う・・・。
「わぁ・・・。真っ赤っかだ・・・。綺麗・・・。ねぇ・・・綺麗・・・?私綺麗・・・?綺麗・・・?・・・・・・・」
オズと同じように、その言葉を連呼しながら、ノヌの意識が遠のいていっている。シャドウは、今度はそれを最後まで見ることなく、去ろうとした時。
「綺麗って言ってよ!!!」
ノヌが叫んだ・・・。驚いてシャドウは振り返ったが、ノヌは目を見開き、叫んだままの顔で絶命していた・・・。そして・・・
・・・サ・・・ササ・・サササササ・・・・サ・・・
(何なんだコイツ等は・・・!?それにあの竹・・・。まるで本当に笑ってるみたいだ・・・。いや、あり得ねぇ・・・!)
そしてシャドウは、オズの最後を思い出した。『エンが、仕向けているのか?』・・・。
(まさか・・・?それこそあり得ねぇ!そんな事が可能なのか・・・!?・・・まぁ、今回の事を知っている最後の人物だしな・・・。)
シャドウは、エンに再び会うべく、そして真相を知るため、靄の中に消えていった・・・。その後も、竹はさざめき続ける・・・。
・・・ササササ・・・ササササササササササ・・・・・ササ・・・・

ザザザザザザザザ・・・・ザザザザザ・ザザザザ・・・・・ザザザザ・・・

「それにしても、ノヌまで殺す必要はあったのか・・・?オズは、殺さなければ止まらんとしてもな。」
「・・・。うるせぇ・・・!どういうことか説明しやがれ!」
 虚勢を張らなければ、押しつぶされそうなシャドウは、エモノをエンに向ける。エンは臆した様子は無いが、少し驚いたようだった。
「あの二人から何も聞いていないのか・・・?まぁいい・・・教えてやるよ・・・。あの二人は駆け落ちしたんだよ。」
(・・・何!?)
エンは続ける。
「幸せそうだったかぁ?奴等は・・・?村の財宝持って行ったんだ・・・。それは幸せだろうなぁ・・・。」
(何を言ってる・・・?オズとノヌが一緒に暮らしてたと思ってんのか・・・?それに財宝はお前が持って逃げたんだろ・・・!?)
 笑い出すエン。その声は竹林のさざめきのようで、シャドウは目眩いがした。
全てがはっきりすると思っていたシャドウは混乱した。あまりに辻褄が合わない。
(オズはノヌをよく知らないと言っていた・・・。ノヌも一人で暮らしていた・・・。やはりオズが嘘を・・・?それともコイツが嘘を・・・?クソ!全然分からん!!)
シャドウは更にエンから情報を得ようとするが、エンは聞いていない。可笑しくてしょうがないのだろう、不気味に笑うばかりだ。シャドウはイラつき、一喝しようとした時。
「っはははははは!あーーっははははははは・・・!はは、はははは・・・は・・・あ・・・!あがぁ!?か・・・かぁぁぁぁ・・・・!!」
その様子は一変した。・・・苦しんでいる・・・。シャドウは驚き、声をかけるが、苦しみ続けるエン・・・。
 頭が真っ白になるシャドウ。部屋には、エンが苦しむ声、そして、なぜか竹林のさざめきが、より一層強く聞こえる・・・。
・・・ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ・・・
部屋の壁には、のた打ち回るエンの影が映し出されているが、シャドウにはそれ以外にも影が見えていた。まず、エンの影に手を伸ばしている屈強な男の影、それにしがみつく様にしている華奢な女の影、その女の影に無数にまとわりついている人の影の群れ・・・。
・・・ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ・・・
そしてエンは最後に呟いた・・・。
「っはぁ・・・はぁ・・・。む・・・迎えに・・・来たか・・・。」
シャドウは見た・・・。確かに、エンの体からのびる影が、エンから離れ、連なった影達に、引きずり込まれていくのを・・・。
・・・ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ・・・
暫くエンの『抜け殻』をシャドウは見つめていたが、やがて考えるのを止め、階段を下りた。
・・・ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ・・・
シャドウが外に出ても、未だにさざめき続ける竹林。雨は上がっている。
その竹林の中でも、関所に近い一本の前に立ち、話しかける・・・。
「笑ってやがんのか・・・?」
・・・ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ・・・
「笑ってやがんだな・・・。あの三人が可笑しくて・・・。」
・・・ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ・・・
「テメェ等のその笑いが、化物を呼ぶとか言われるんだろうな・・・。」
・・・ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ・・・
そう言ったシャドウは、自分の言葉でハッとなった。
「じゃあ何か・・・?呼び込まれた『化物』は・・・」
・・・ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ・・・
「俺だってか・・・?」
・・・ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ・・・
竹林が、またより強くさざめいた様に感じた・・・。
 次の瞬間、シャドウはエモノを取り、目の前の一本を叩き斬った・・・。竹林はさざめくのを止め、斬られた一本はバキバキと音を立て、関所に寄りかかって止まった。
「笑うんじゃねぇよ・・・!」
シンと静まり返った竹林に、その言葉だけが響いた・・・。
だが、煙草に火を点け帰るために関所を抜けた時、また・・・
・・・ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ・・・
一瞬立ち止まり、
「ッチ・・・!胸クソ悪ぃ・・・!」
そう言い残し、シャドウは『地獄』を後にした・・・。

エンが転がっている、関所の二階にある松明は燃え上がっていた。シャドウが目一杯燃料を入れていったためだ。その炎の勢いはどんどん強くなり、部屋の天井を燃やし、関所の屋根を焼き、そこに寄りかかる一本の竹も燃やし、やがて竹林全体に燃え広がった・・・。

 長雨の後だと言うのに、その竹林の炎は止まらなかったという・・・。付近の住民は避難し、野次馬が集まり、燃える竹林の周りは人でごった返したが、誰一人として、消火しようとする者はいなかった・・・。

 家から出てきて、何事かと言い合っている人達を見て、シャドウも竹林側に振り返る。もう大分離れているため、直接燃えているのは見えない。
シャドウは、その濃紺と真紅が入り混じる空を見て・・・、
「消え去りな・・・。」
とだけ言って、帰って行った・・・。



Fin

 

 

 

作者さんのアトガキ???


-モドル-

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