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SS:霜月



落ち着いた風格のある調度品が、上品に配置された応接間。
そこには初老の男と三十路の女がいた。
男は頭から湯気を立てながらまくし立てるが、女はそれを冷ややかに受け流す。
やがて女は議論にうんざりしたのか、席を立った。

「お話はよく分かりました。
しかしこの件については変更するつもりはございません。
申し訳ございませんが、これにてお引取りを…」
「待て、まだ話は終わってないぞっ!」

初老の男も立ち上がり、部屋を出て行く女の後を追おうとした。
しかし扉の外に控えていたものが、音もなく間に割って入る。
そしてそれと視線が合った瞬間に男は動けなくなった。
それは犬頭人身…コボルトだった。


コボルトとしてはかなり大型だが、それでもヒトよりは一回り背が低い。
武装は一切しておらず、身につけているのは鑑札のついた首輪と貫頭衣だけであった。
全身を覆う明るい赤茶色の毛並みが、ふんわりと優しい雰囲気を演出している。
小柄で愛らしいその姿は、女子供ならば誰もが抱き締めたいと思うことであろう。
だが男を見つめるその目だけは、獲物を値踏みする肉食獣のものであった。

よく見れば柔らかな長い毛に隠れて、しなやかな筋肉の束がうねっているのが分かる。
それに秘められた力は一体どれ程のものであろうか。
微笑む口元に覗いた頑丈な牙は、人間の肉など易々と切り裂き、骨すらも噛み砕くに違いない。
実際、先月この屋敷に入った10人組の強盗団が、このコボルト一匹に血祭りにされたという噂はまだ記憶に新しい。
聞いた時には笑い飛ばしたが、対峙して初めて男は自分の迂闊さに気づいた。

男の背中にじっとりと冷たい汗が流れた。
この街を支配する総督たるものが、小間使いの獣人如きの気迫に負けるなど、笑い話にもなりはしない。
しかしその視線の絶対的な力に縛られた男は、恐怖のあまり息をすることもできなくなった。

その心中を知ってか知らずかコボルトは折り目正しく一礼すると、流れるような動作で玄関へ先導する。
視線を外されやっと動けるようになった男は、膝が笑い一瞬その場に座りこみそうになった。
残された気力でそれはなんとか耐えたものの、ただ促されるままに玄関へと向かうことしか出来なかった。


豪奢な寝室に罵声が響いた。
「あの馬鹿な総督のせいでロクなことにならないわ。
まったく誰のお陰で今の地位に居られると思っているのかしら」
女主人の愚痴に動じることなく、コボルトは丁寧な手つきで彼女の服を脱がせた。

部屋の中央には天蓋付きの大きな寝台があった。
羽毛のたっぷりと詰まった高価な寝具の上に、裸になった女がうつ伏せに倒れこむ。
すぐにコボルトも厚く野暮ったい貫頭衣を脱ぎ、下穿き一枚になって寝台へと上がった。
だが彼がそこで眠ることはない。
むしろこここそが彼の戦場であった。

「あぁ、今日は疲れちゃったわ」
投げ出された足の土踏まずを、肉球の付いた太い指がゆっくりと押す。
その指は足の裏、ふくらはぎ、尻、腰、背中、そして肩を押しながら上がっていった。
そして再びゆっくりと脚へと戻っていく。
強張った女の筋肉が、その短く優しい指先で揉みほぐされていく。

獣は傍らにある壷を取ると、そこから蜂蜜の混ざった香油をすくいとった。
そしてそれをカサつく皮膚に薄くのばして擦り込んだ。
すると閉め切った寝室一杯に甘く官能的な香油の匂いが立ち込めていった。
魔物の指は意外にも器用で、柔らかな肉球が触れるか触れないかギリギリの間隔で肌を撫でさする。

全身にくまなく香油を伸ばし終えると、細かく震える肉球がリズミカルに叩き始める。
背中や腰は勿論のこと、顔や、首筋、そしてわき腹や乳房などに微妙な振動を与えた。
くすぐったさに彼女は身悶えるが、澱のように溜まった疲れは穏やかに溶け消えていった。
病的なまでに真っ白だった女の肌が、湯上りのようにほんのりと上気し、穏やかだった息づかいが乱れ始める。
先程まで乾いて萎びかけていた肌は、魔法でもかけられたように潤いと張りが蘇った。
しかしもっとも潤っていたのは、まだ触れてもいない女の蜜壷であった。


不意に女は身体を起こすと、魔物の首輪を掴んで引き寄せた。
いきなりのことに目を白黒させる魔物に、情熱的な口接けをしてその舌を絡めた。
白魚のような指が、真綿のような獣の毛の流れの中を泳ぎ始める。
柔毛の下にある筋肉は、薄い皮下脂肪に邪魔されることなく簡単になぞることが出来た。
胸の厚みを存分に楽しんだ指先は、腹筋の稜線に沿って下りると臍の下で止まった。
そこには簡素な下穿きに包まれた逞しいものが待ちかまえていた。

繊細な指先が先程のお返しとばかりに、布の下にあるものをコリコリと揉みほぐす。
小柄な身体に似合わず大きな膨らみに、女は布越しに頬擦りを始めた。
強張りは更に硬く大きく膨らんでゆき、それに喜色を浮かべた女は布の結び目に手を伸ばした。

下穿きが弛められると、血管を浮き立たせた肉棒が顔を出した。
根元に異様な瘤をつけた肉の塊は、ようやっと解放された喜びに脈打つ。
一枚の布切れを外すだけのことではあったが、二人の間にはもう一つ特別な意味があった。
それは彼女の「お許し」の合図であり、その瞬間から二人の立場が逆転するのだった。


彼女は両手で陽根と陰嚢を押し頂くと、ゆっくりと恭しく口接けをした。
そして熱い肉棒をつるりと口に含むが、流石に大きすぎて半分ほどが限界であった。
無理して喉につかえるほど咥え込むと、彼女は上あごと舌でしごくように奉仕を始めた。
その行為は服従の証であり、夜毎に行われる神聖な儀式であった。

紅をさした唇が桃色の肉棒の上を休むことなく這い回った。
舌先で奉仕しながら、ねだるように見上げる彼女に、魔物は満足げに頷いた。
彼女の肩を押して仰向けに寝させると、艶かしい足を取ってその大きな口で咥えた。
口の中で舌が足指の股をくすぐりながら、汗の残り香をじっくりと味わう。
そして折角塗った香油を舐め取りながら、舌は段々上へと侵攻を始めた。
足首、ふくらはぎと進み、太ももの内側を通る。
そして焦らすように秘所を迂回してヘソの中を蹂躙し、胸の谷間へと這い登った。

熟れた胸には、大きな乳暈が薄く色づいていた。
魔物が舌先で嬲っているうちにその乳暈がぽってりと膨らみ始めたが、その先端は陥没したままだった。
その穴を尖った爪の先がチクチクと突付いて指先でこね回して潰す。
何度か繰り返して、ようやく小さな豆のような乳首が顔を出した。
普段は隠れているだけにそこは刺激に敏感で、軽く愛撫するだけで女の口から淫らな声があがった。

「だめよ…くすぐったいわ」
女は弱々しい言葉で止めるように訴えるが、もちろん本心ではない。
もっとも本心からだったとしても、彼に止めるつもりは毛頭なかった。
今は彼の方が主人であり、彼女は彼の奴隷なのだ。

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女は元々、とある貴族の娘であった。
彼女は16の時に、より格の高い貴族に輿入れしたが、その3年後に実家に帰ることになった。
彼女が石女…不妊症だということが分かったからだった。
血筋を重視する貴族においては、いかに美貌を誇ろうと子の産めぬ女に価値はなかった。
実家の離れに押し込められた彼女の周囲から、親しかった友人たちは次々と去っていった。
更に長年仕えてきた侍女たち、そして血を分けた家族まで…今まで優しかった人々全てが、手の平を返したように彼女に冷たくなった。

別に彼女は虐待されたり、非難されたりしたわけでない。
むしろその方がどんなにか気が楽であったことだろう。
彼女はまるで空気か何かのように、徹底的に無視されるようになったのだった。
そうして彼女は離れの小部屋で寂しい余生を、だらだらと無意味に過ごすことになった。

しかし自尊心の強い彼女は、そんな人生に我慢が出来なかった。
そこで彼女は豊かな生活を捨て、わずかな蓄えと装飾品を手にひっそりと家を出た。
その時に本当は一人で出るつもりだったのだが、物音に気づいた小間使いのコボルトが何も言わずについてきた。
だから彼女も何も言わずに連れて行くことにした。


彼女は持ち物を売った金を元手に商売を始めた。
貴族の娘として高度な教育を受けた彼女は、意外にも商才にも長けていた。
美貌と気品、そして知性を併せもった彼女は、数多の権力者に次々に取り入っては手玉に取った。
そして10年と経たないうちに、街でも一二を争う豪商へと上り詰めていた。

彼女が金と権力に対し異常なまでの執着を見せたのは、強い人間不信に陥っていた反動であろうか?
だが彼女が信じた金と権力もまたしばしば彼女を裏切った。
それでも決して彼女を裏切らないものがたった一つだけ存在した。
それが彼…この小柄なコボルトであった。

失敗に終わった大貴族との結婚も、今思えば意義があったのかも知れなかった。
そのお陰で、先方で小間使いとして使われていた彼に出会うことが出来たのだから…。
実家に帰された時も、彼は手回り品と一緒に彼女につけられた。
居ても居なくてもどうでもいいと思われていたのであろう。


当初は非力な子供だった彼は、彼女を守る為に己を磨いた。
成り上がり者の彼女は恨まれることも多く、路地裏で襲われた回数は数え切れない程であった。
しかしその一戦一戦が彼を鍛え上げた。

普段は穏やかな風貌と、礼儀を弁えた立ち居振る舞いで、いかにも従者らしく彼女に付き従った。
商談の席や会合にあってさえも違和感なく溶け込み、常に彼女の傍らに侍ってきた。
この一見無害に見えるコボルトが怖るべき護衛獣だと、一体誰が思うだろうか?
だが彼をみくびった襲撃者は、今はことごとく土の中で眠っている。


彼女は家を出るまでは、彼をただ可愛いだけの小間使いとだけしか思っていなかった。
しかし二人きりなってはじめて、彼の献身と気遣いに感謝するようになった。
それに人を信じられなくなった彼女にも、人でない彼ならば信じることができた。

まだ金回りが悪かった頃は、寒い部屋で一緒に丸くなって眠った。
仕事の愚痴をこぼすと、何も言わずに朝まで耳を傾けてくれた。
悔しさに涙を流せば、気が済むまでやさしく肩を抱き締めてくれた。
そんな彼にだけは、彼女も弱い自分を見せる事ができたのだ。
やがて何度とない襲撃を退ける小さな背中に、頼もしさを感じるようになった。

気がつけば彼女は彼を愛してしまっていた。
逆に彼の方は愛するようになるまでもなかった。
元から彼は彼女の為だけに生きてきたのだから…。


彼女は男を知らない生娘とは違う。
だから多少の躊躇はあったが、戸惑う彼を寝台に誘った。
一方慣れないながらも彼は、寝台の上で彼女を悦ばせる為に全力を尽くした。
そして一線を踏み越えてしまえば、もはや抑える理由は何もなかった。
さほど経たないうちに、彼女は彼の一途な優しさに溺れるようになった。
始めは週に一回の関係だったのだが段々と回数が増え、毎夜のように寝台に彼を引き込むようになった。


そんな彼女は疲れていた。
毎日のように続くお偉方との商談、折衝、接待…。
そしてその中で彼女は独りで全ての物事を決断し、自分で責任をとって来なければならなかった。
見返りは大きいが、常に緊張を強いられる毎日に彼女は疲れ果てていたのだった。
だからこそ僅かひと時でも全てを誰かに委ね、何も考えずただ奉仕をする立場になることを望んだ。

もちろん一度たりともその望みを口に出したことはない。
彼女の気位がそれを許さなかったからだ。
だが言葉にできないその抑圧された願望を、彼は敏感に感じ取りそれに応えた。
日のある間は影の守護者となり、彼女の肉体を守った。
日が沈んだ後は影の主人となり、彼女の肉体を縛った。

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頬を紅潮させた女は香油で滑る乳房の間に雄の剛直を挟み、両手で締め付け前後させた。
谷間からモグラのように顔を覗かせる肉塊をしゃぶっていると、尖った先端から熱い液体が迸ってくる。
まだ先走りの汁ではあったが、人外の者だけあってそれは尋常な量ではない。
そのあまりの多さに女はむせて、僅かにこぼしてしまった。

「…ケホッ…ごめんなさい…」
すると鼻面に皺を寄せたコボルトは無言で女を裏返し、つややかな尻を抱えると音高く手の平で叩いた。
「…痛っ…ごめん…なさい…許して…」
魔物の手は止まることなく叩き続け、みるみるうちに紅葉のような手形がいくつも浮き出し、尻たぶが朱色で埋め尽くされていった。

女は目に涙を溜めて許しを請うが、その口から漏れるのは熱い吐息であり、股間から滴り落ちるものは隠しようがなかった。
言葉とは裏腹に、潤んだ瞳と切なげな表情は、更なる陵辱を請い願っていた。
そして魔物はその思いを適えるべく、女の股間に指先を入れた。

クチュクチュと濡れた音がする度に、白い尻が嫌がるように、そして誘うようにくねる。
溢れた愛液が、四つん這いになった女の震える白い内股をつたって垂れていった。
その一滴たりとも零すまいとペチャペチャと卑猥な音を立てて、赤黒い舌が縦横無尽に動き回った。
そして源泉である陰裂をなぞる度に、若草に覆われた土手はぷるりと震えた。

存分に美肉を堪能した魔物は顔を上げると、舌なめずりをしながら立ち上がった。
今度は舌ではなく、別のモノで女を味わう為である。
怒張の先端をあてがって前後に擦り付けると、待ちきれないかのように蠢く襞が絡みついてきた。
しばらく焦らすように感触とぬくもりを楽しんでいた魔物は、慎重に狙いを定めると一気に奥まで突き進んだ。

女の口からは苦痛の声があがるが、ぬめる陰唇はいきり立つ肉棒を難なく呑みこみ、その根元の瘤までも美味そうに咥え込んだ。
そして二度と離すまいとでもいうのか、その入り口をすぼめて締め上げる。
逃げ場を失った肉棒はすぐに暴れだし、息もつかせぬ速さで女のはらわたを掻き回した。


「…だっ…あっ…いっ…」
恥骨にひびく凄まじい連打の衝撃に、女はもはや言葉にならない言葉を漏らした。
苦痛とも悦びともつかぬ声に、毛深い顔が嬉しげに歪む。

随喜の涙をこぼす女の横顔を、魔物は寝台にごりごりと押さえつけた。
残った片手は女の乳房を乱暴に握り締め、人差し指の爪がカリカリと乳首を掻き毟る。
汗ばむうなじの匂いを嗅ぎまわり、荒げた息を吹きかけながら戦慄く首筋に牙をたてた。
みるみるうちに痛々しい歯型が、奴隷の烙印のように浮き上がる。
だがそれでも足りないとばかりに魔物は何度も噛み付いた。
その姿に昼間の優しい面影は欠片も残ってはおらず、ただ飢えた野獣が淫らな肉を貪るだけであった。

無慈悲な征服者は陥落した女の肉体を蹂躙し、勝利の雄叫びをあげる。
言葉にならない遠吠えも、その意味するところだけは明白だった。
<コノメスハオレノモノダ。オレダケノモノダ>

その耳を聾する咆哮に和するように、媚びるような甘鳴きが長々と響く。
一匹の雌犬として後ろから犯されながら、女の心は完全なる自由を謳歌していた。



【 fin 】


-モドル-

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