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SS:霜月




うっそうと茂った森の中から灰色の塔が突き出ている。
高層にはいくつかの明り取りを兼ねた窓があるものの、装飾は一切ない。
実用性一点張りの塔だった。
人里離れたこの場所に人が訪れることはめったにない。
しかしその塔の入り口で、緊張感のない間延びした声で叫ぶ者がいた。

「すいませ〜ん。誰かいませんか〜?」
まだ若い娘の張りのある声が辺りに響いた。
その娘は身体の線を浮き立たせるぴっちりとした上着に、ふとももを剥きだしにした短い下袴を穿いていた。
その姿は色気よりは溌剌とした元気の良さを強調している。
動きやすい服装ではあるが、森や荒地を歩くには少々露出が多すぎる。
再び場違いな娘はのんきな声で呼びかけた。

するとかなりの間があってから、ゆっくりと巨大な鉄扉が軋みながら開いた。
そして周囲を窺いながら、中から一人の気難しげな初老の男が現れる。
男はかなりくたびれた漆黒の薄地の長衣を纏っており、少し薄くなりかけた頭部に地味な頭巾を被っていた。
どうやら何かの作業着を着ているようだった。

「ふむ、どなたかな?
お嬢さんのような人が、私に用事があるとも思えないのだが…」
「すいません。森で道に迷っちゃったんです。
でもこの塔が遠くから見えたので…」
怪訝な視線を向ける男に対し、悪びれることなく娘は応えた。

「それはお疲れ様。ではお嬢さんの後ろの道をそのまま進みなさい。
村までの一本道だ。迷うことはないだろう」
人懐っこい娘の笑顔にも、男の返事はそっけないものだった。

「もう私くたくたなんです。少し休ませて頂けませんか?」
「だったら尚のこと、すぐに村へ向かった方がいいだろう。
急がないともうすぐ日が暮れてしまう。村へ行けばきちんとした宿屋もある」
「どうせ村に着いても、私は宿に泊まるような贅沢はできません。
何なら納屋か軒先でも構いませんから、どうか雨に当たらない場所を貸していただけませんか?」
「…そこまで言うならば仕方ない。中へ入るがいい」
憮然とした男の声が返ってきた。

「悪いが私は一人で暮らしているもので、大したもてなしもできない。
今ちょうど食事中だったのだが、粥が少々と野菜しかないな。
それで良ければ一緒に食べるがいい」
「あ、いいんですか?ありがとうございます」
娘は喜びを顕わにした。

一階の広間で二人は食事を摂った。
だがそれはあまり美味いものではなかった。
むしろただ純粋に栄養を補給する為に用意されたものとしか思えないものであった。
しかし何より食事を味気なくさせたのは、全く会話のない重苦しい雰囲気の為であった。

娘は何度も男に話しかけてはいたのだが、男がほとんど返事らしい返事さえ返さないので最後には諦めてしまった。
そして食事が終わると、意外と広い塔の中を男が階上へと娘を案内した。
いくつかある扉のうちの一つを開けると男は言った。

「この部屋ならば好きに使って構わない。厠は外だが、夜間は扉に鍵を掛けるので外へは出られない。
用足しには部屋の隅にある壷を使いたまえ。それから他の部屋、特に廊下の突き当りの部屋には入らないで欲しい」
「何かあるんですか?」
「私の研究室だ。他人には無価値でも、私にとっては大切な実験を行っている。
貴重な試料や実験器具に万が一の事があっては困るからな」

「どんな実験を行っているのですか?是非見せて頂きたいのですが」
「それはご遠慮願おう。私は研究の邪魔をされたくないのでね」
「そんな…私、邪魔なんてしませんよ」
「お嬢さんがここにいるだけで、私の時間を奪っている。既に十分邪魔をしていることに気がつかないのかね?」
「あ…すいません」
にべもない応えに娘はおとなしく与えられた部屋に入った。
そして居心地悪そうに窓辺に座ると、格子のはまった窓から外を見ながらため息をついた。

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怪しげな実験器具が沢山置かれている部屋に動く影があった。
僅かに窓から差し込む月明かりの中で、その影は何かを探しているようだった。
そこにいきなり目映い光とともに怒気を孕んだ男の声がかかる。
「ここで何をしているのかね?」
ビクリと動きを止めたのは、部屋で休んでいるはずの若い娘であった。

「え…と、その…私、迷っちゃって…」
「どんなに迷おうと、鍵のかかっている部屋に迷い込むはずがなかろう。
まぁ、いい。もう入ってしまったのなら仕方がない。
とにかく私の実験器具から離れたまえ。そんなに研究が見たければみせてやろう」

「え?いいんですか?」
「お嬢さんは初めからそのつもりでここに来たのだろう?大事な研究室を荒らされるよりはずっといいからな。
どうせなら研究の手伝いでもしていくがいい。そうすれば役人に突き出したりはしない」
「え?ええ、まぁ…私に出来ることなら…」
いきなりのことに、動揺した娘は男の言葉に頷いた。

研究室の更に奥へと続く扉を開けながら男は言った。
「こちらに来たまえ」
促されるままに部屋の中へと入った娘は絶句した。
「なっ?」
そこの壁にはいくつかの仕切りと檻が並んでおり、その中のひとつには一人の若い男が仰向けに倒れていた。


倒れた男に慌てて近寄る娘に、初老の男は冷ややかな声を掛けた。
「あぁ、彼は先程入り込もうとした賊だが、お嬢さんの知り会いじゃないのかね?
確かに私は独り住まいだが、頼りになる子供達が沢山いるのでね。
この塔を落とそうと思ったら、一個大隊でも連れてこないと無理というものだ。
大丈夫、殺したりなんてしない。貴重な実験の素体として大切に使わせてもらうよ。
…勿論、お嬢さんもね…」

その言葉にハッとして振り向く娘の目の前で、男は外から扉に錠をかけた。
「その部屋にはね。実験体が暴れた時の対策に色々仕掛けがしてあるのだよ…」
何処からか空気が漏れる音がするとともに甘い香りが漂い、彼女もまた若い男の上に崩れ落ちた。


目を覚ますと、娘は大きな台の上に縛り付けられていた。
全裸にされた上で両手足首がしっかりと金具で固定され、恥ずかしいことに大きく股を開いたまま閉じられないようになっていた。
口にも輪になった金具で開けたままにされ、万が一にも舌を噛めないようにされていた。
娘がこっそり服の下に忍ばせていた刃物や解錠道具、火薬や発炎筒といったものは当然奪われていた。
不安と恥ずかしさに震える彼女に、先程までとはうって変わって優しい声が掛かる。

「ふむ、気がついたかね?
それにしてもお嬢さんは随分色々と危ない物を持ち歩いていたのだね。
念の為に身体の隅々まで調べさせて貰ったが、まさかこれ程までとは恐れいったよ。
勿論全て処分させてもらったがね」

娘は何か叫ぼうとするが、口輪の為にきちんとした言葉にはならなかった。
「さてと…早速だが約束通り、私の研究を手伝って貰おうかな」
男は小さな金属笛を吹き鳴らす動作をした。
すると人には聞こえないその音に応じて、3匹の奇怪な小動物が部屋に入ってきた。


それらは赤子程の大きさで、全身は真っ黒な剛毛に覆われていた。
かなり発達した前肢で身体を支え、その異常に長い指の間には水掻きの様な膜が張っている。
逆に冗談のように小さな後ろ足は、それでは歩くことさえできないようであった。
前足だけで蛙のようにピョコピョコと跳ねたり、音もなく這い回る姿は滑稽ではあっても愛らしいとは言い難い。
またその生き物の顔はどこか豚に似ており、大きな耳が妙に目立つ。
対してあまりに小さな目は果たして見えているのかどうかさえ怪しかった。

その生き物達はよちよちと台上に這い登り、娘の身体に頬摺りを始めた。
そして思い思いの場所に陣取ると、鋭い牙でさくりと柔肌を噛み裂いた。
わずかな痛みとともに、温かな血が傷口から流れ始める。
するとその小さな怪物たちは美味そうに舌で血を舐め取りはじめた。


その不気味な行動に怯えて絶叫する娘に、男は朗らかに微笑む。
「その子達はコウモリの遺伝形質を組み込んである。
軍の注文で夜襲用に作ったもので、要望に合わせて吸血性の素体を使ってあるのだよ。
きちんと餌は与えてあるし、命令もなく人を殺したりはしないから安心するがいい。
あぁ、因みにそれはちょっとした愛情表現だとでも思ってくれたまえ」

自分の言葉に酔いしれたように、男は得々と説明を続ける。
「まぁ運用面でいえば果実や肉類などを餌とした方が効率がよいのだが、出資者の意向は尊重せねばならなくてな。
知能と戦闘力上げるために大型化したら、飛行は滑空程度しか出来なくなってしまったし…。
まったくこれだから素人には困ったものだね。
素直に最初から私に任せれば、もっと良いものが出来るというのに」


彼女の股間を舐めていた魔物のうちの一匹が、顔を上げた。
そして自らの股間に屹立していたものを娘に押し付ける。
それは人間のものより一回り小さなものではあったが、小さな身体に比べれば異様に大きい。
腹部に張り付いた睾丸も不自然に膨らんでおりそこだけが妙に目立つ。

いきなり桃色の生殖器が、まだ濡れてもいない娘の股間に突き刺された。
小柄な魔物は無様に羽根をばたつかせ、情けなくも腰を振りたくる。
すると残りの魔物も争うように娘の股間に群がり、生殖器を横から捻じ込んだ。
どんなに小柄とはいえ流石に3匹同時となると、娘の膣は引き裂ける寸前だった。

助けを求める娘は、部屋の隅に目を向けた。
そこには壁にもたれるようにして、先ほどの青年が座り込んでいた。
その首の後ろには、握りこぶし程の大きさもあろうかという、大きな蜘蛛かダニのような生き物が貼り付いている。
そしてぼんやりと宙を見つめたままの青年は、まるで糸の切れた人形のように動かなかった。

キィキィと耳障りな鳴き声を上げる魔物たちは次々に娘の中に精を放つ。
その様をみて、初老の男は誰にともなく呟く。
「ふむ、どれも積極的に生殖行為を行っている…どうやら上手くいきそうだな。
毎回培養槽で育てたのでは、どうにも費用がかかって仕方がない。
適当な母体を使って繁殖できるならそれに越したことはないだろう。
しかし乱交型は効率が悪いし、再考の余地があるな。
まぁ、排卵期じゃない以上まだ妊娠はしないだろうし、ついでだからもう一つ試しておくか…」


男が笛を吹きながら部屋を出ると、魔物たちはすぐに生殖器を抜き取り、慌てたようにその後を追った。
そして再び部屋の中に戻ってきた時、男の腕の中には一匹の巨大な蛆虫が蠢いていた。
蛆虫の体表は肌色の柔軟な皮膚に覆われ、所々に生えた短い毛が妙に人間を連想させる。
ぷっくりと膨れた頭部には何もなく、小さなおちょぼ口の先がプルプルと震えているだけであった。
それは娘の腹の上に置かれたとたんに、ぶよぶよとした体節ごとにびっしりと並んだ脚でしがみついてきた。
その短い脚はまるで一つ一つが吸盤のようにぴったりと貼り付いて、そう簡単に剥がれそうもなかった。

「見たまえ。その子はまだ未完成のものだが、かなり有望な実験体だよ。
なにしろ節足動物と恒温動物の相性はあまり良くなくてね。
中々適当な接合子を得られなくて困っているんだよ。
しかしその子の形態はまだ未成熟なままなのだが、既に繁殖力だけは旺盛だ。
種としては甚だ不安定だが、必ずや更なる進化への橋渡しになってくれるに違いない」

男の言葉に応えるように、妖蛆の鎌首が持ち上がった。
そしておちょぼ口の先から反転するように、ずるりと表皮が捲れ上がる。
すると中から赤黒い頭部が剥きだしになった。
ゆで卵のようにつややかな頭部の、やや下の位置に左右に開く小さな顎がついている。
その姿はキチキチと噛み鳴らす顎さえなければ、どうみても巨大な男性器そのものであった。


蟲の顎に噛みつかれる娘の乳首は、すぐにぶす色に膨れ上がり硬くしこった。
卑猥な姿の蟲はその尾部を娘の濡れた股間に差し込み、更に細長い生殖器を伸ばして内部をまさぐった。
そして固く閉じられた子宮口を探り当てると、尖ったその先端を無理やり突き立てる。
異物が侵入してくる恐怖に怯える娘の腹の上で、卑猥な蟲は波打つように蠕動運動をし始めた。

蟲を優しく撫でながら、男は娘に囁いた。
「強靭な外骨格をもつ最強の兵士が、もうすぐこの私の手で出来上がる。
いや、ゆくゆくは彼らで編成された無敵の軍隊も夢ではない。
お嬢さんもそんな素晴らしい研究の役に立てて嬉しいだろう?
君の子供達が世界を席捲する日が待ち遠しいね」


男は娘をそのままにして部屋を出て行き、半日もの間放置した。
そしてその間、本能の命じるままに休むことなく蟲は娘を犯し続けた。
もぞもぞと這い回る蟲の気持ち悪さと、その一部が自分の中を蠢くおぞましさに、娘は何度も意識が薄れそうになった。
しかしその度に蟲が乳首を噛みしめ、その痛みで彼女はつらい現実へと引き摺り戻された。

助けを求めて伸ばされる指先にも、時おり上がる涙混じりの悲鳴にも、仲間の青年が反応することはなかった。
延々と続く陵辱を、ただ虚ろな視線で見つめているだけだった。



【 fin 】


-モドル-

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