本家[蒼見鳥]  >  もう一つの世界  >   SS  > 【荒野に出逢う】


SS:ヴーク

 奇妙な獣人が現れると言う、噂があった。
 現れる獣人は、人狼で、それだけなら奇妙でもなんでもない。
 ただ、その人狼は、人を襲っても殺しはしないのだと言う。

 その代わり、剣を持っている者がいれば、その剣を奪い取る。
 鎧を身に付けていれば、それを剥ぎ取る。
 そして、へし折られた剣や、叩き割られた鎧が、街道に打ち捨てられるのであった。

 奇妙な、噂であった。
 とは言え、それが、傭兵や冒険者の根拠の無い流言であれば、問題ではない。
 しかし、例えば王侯貴族への献上品――絹や金や、時には美しい乙女――を護衛する騎士団が、そのような眼に遭ったとなれば、話は別であった。

 騎士にとって、国王から下賜された剣は、名誉であり、証である。
 それが、獣人によって奪われ、獣人によって破壊され、獣人によってゴミの如く捨てられれば、騎士の威信に関わるのだ。

『件の人狼を討つべし』
 そのような声が上がり、それで、腕に覚えのある騎士たちが招集された。
 そうして、人狼討伐の部隊が組織され、人狼が現れたと言う街道近くの、荒野に向かったのである。

 その荒野は、飛び石のように、巨大な岩が転がる、荒地であった。
 岩は、テーブルのように平たいものもあれば、峻嶺を象ったような、尖ったものもある。
 それ以外に見えるものは、枯れかけた潅木と、漠々と拡がる、白い砂地だけであった。

 その荒野に、今、無数の苦悶の声が満ちている。
 精鋭を集め、意気揚々と王都を発った筈の騎士団は、全員が砂地に這いつくばっているのであった。

 時刻は夜。
 白銀色の月が、白い光を、紗のように天から投げ掛けていた。
「くそっ」
 地面に蹲った騎士の一人が、吐き捨てるように言った。

 騎士は、見事な金髪の持ち主だった。
 緩くウェーブの掛かったその髪は、耳を隠すぐらいの長さである。
 形の良い柳眉と、すっきりとした鼻梁の持ち主で、澄んだ藍い瞳には、勁い意思の光が宿っていた。
 狩りに長けた猫科の肉食獣を連想させる、女騎士である。

 そして、その目の前に立っているのは、巨大な人狼だった。

 真っ青な、一向に真っ青な、獣。
 弓なりに曲がった胴は、驚くほど高密度な筋肉が組み合わさっており、それを支える脚は、丸太のように太い。

 そして、その人狼には、何と腕が無かった。
 肩口からすっぱりと断ち切られたようになっており、その断面は黒く変色して、青い獣毛が覆っている。
 更に、その眼には真横に刀傷が疾り、完全に潰れているのだ。

 あれでは、何も視えていまい。
 そう、視えていない筈なのだ。

 しかし、その完全に盲目である筈の人狼を相手に、騎士たちの剣戟は悉く空を切り、逆に、その太い脚での重い一撃で、全ての騎士は打ち倒されていた。

 金髪の騎士が、立ち上がった。
 青い人狼が、面倒臭そうにそちらを向く。
 しかし、人狼はその長い鼻面をひくひくとさせると、牙を剥き出して言った。

「この、血の匂い……」
「血、だと?」
「忘れられん血だ。貴様、あの男の縁者か」
「あの男?」
「そうだ……」

 人狼は、そう言って『ある名』を口にした。
 珍しいことである。獣人が人間の名を記憶するなどまず無い。
 しかも、金髪の女騎士はその名を知っていた。
 知っているどころではない。

「それは、わたしの父だ」
 金髪の騎士は応えた。
 人狼が、低い、くぐもった唸り声を上げた。
 獣は嗤ったのである。

「ならば、好都合。貴様の父を、此処に連れて来い」
「何故だ」
「あの男が、我が腕を落とし、我が眼を奪った故よ」
 人狼の言葉は淡々としており、そこに、憎悪のような否定的な感情はなかった。

「三年前のことよ。気紛れに襲った商隊を、護衛していたのが奴であった」
 人狼のその言葉に、女騎士は自分の記憶を探る。
 確かに、父はそう言う任務にも着いていた。

「腕と眼は失ったが、この三年、俺は己を鍛え上げた。最早、不覚は取らぬ」
 人狼は言い放つ。
 口の端を上げ、女騎士に告げる。
「貴様の父に告げよ。殺しそびれた人狼が、彼の地で待っているとな」

 しかし、女騎士は沈黙したまま、応えない。
 やがて、おもむろに口を開いた。
「悪いが、それは出来ない」
「何」
 人狼が、牙を剥く。

「父は、死んだ」
「何!」
 人狼の体躯が、一瞬、数倍に膨れ上がったように、女騎士には見えた。
 空気が捻じ曲がり、月光さえも歪んでいく。

「誰だ、誰が奴を斃した!」
 人狼が吼える。
 ぎしぎしと、全身の筋肉が軋み、音を立てた。

「闘ってではない、病だ」
 静かな口調で、女騎士が人狼に言う。
 人狼が、ぴたり、と咆哮を止めた。

「病、だと」
「ああ」

 人狼は、その潰れた眼で、天を仰いだ。
 確かに、人は、他愛の無いことで、直ぐ死ぬ。

「死んだか、あれ程の男が」
 確認するかのように、人狼がぽつりと言った。
 こくりと、女騎士は頷いた。

 人狼は、もう、女騎士には興味が無い様に、背を向ける。
 逞しい背中に、真っ青な鬣が揺れていた。
 そのまま、荒野の彼方に向けて、歩き出す。

「待て」

 女騎士が、人狼を呼び止める。
 人狼は立ち止まったが、しかし、振り向きはしなかった。
 女騎士は言葉を続ける。

「わたしと、立ち合え」
 女騎士の言葉にも、人狼は振り向かない。
 騎士と獣人の間に、沈黙が下りた。

 やがて、人狼が口を開く。
「貴様の腕は、あの男に遠く及ばん。貴様とやり合う意味は無い」
 巨大な背中が、女騎士の言葉も、それ以外のものも、拒絶していた。
 だが、女騎士は構わず人狼に語りかける。

「確かに、今のわたしでは父に及ばぬ。ならば……」
「……」
「わたしを鍛えろ」
「何?」

 人狼が、ゆっくりと振り向いた。
 眼が潰れたその獣の貌に、訝しげな表情が浮かんでいる。

「わたしの剣は父直伝で、お前は父の剣を知っている。わたしを、父以上の遣い手に仕上げれば良かろう」
 その言葉に、人狼は頭を振る。
 その口の端が歪んでいるのは、苦笑であろうか。

「世迷いごとを、言う」
「怖いのか」
「何だと」

 人狼の巨体から、刺すような殺気が溢れる。
 ちりちりと、産毛が焦げるような、殺気だった。

「お前の腕と眼を奪った男の血を、わたしは引いている。自分を倒す女を育てるのは恐ろしいか」
「下らん」
「ならば立ち合え」

 ふん、と人狼が鼻を鳴らす。
 両脚を軽く開き、腰を落とした。
「良かろう、一つ揉んでやろう……。来い!」

 そして――。
 人狼と女騎士が出逢ってから、半年が過ぎた。 
 その間、人狼と女騎士は、荒野での逢瀬を続けている。

 とは言え。

 それは決して艶っぽいものではない。
 人狼の蹴りと、騎士の刃をぶつけ合う、荒々しい『逢瀬』であった。

 月は白々と輝いている。
 空に星は瞬き、風も無い。
 そんな静かな荒野で、剣と爪がぶつかる音が鳴り響く。

「遅い、遅い、遅い!」
 人狼が、吼えた。
 びょう、と風を切って、女騎士が両刃の剣を振るう。

 その剣を、人狼が左の蹴りで、巻き込むように叩き落した。
 踵落としの要領である。
「くっ」
 女騎士が、バランスを崩す。

 しゃあぁっ!!
 人狼が吼えた。
 人狼の、右の前蹴りが、女騎士の腹に、するすると伸びる。

 その蹴りが当たった瞬間、その威力を利用して、女騎士が後方に跳んだ。
 人狼の蹴りの直撃を避け、自分の体勢を立て直す。

 すぐさま、女騎士は柄を両手で握り、刺突の構えを取った。
 閃光のような鋭い突きが、人狼の胸元に向かう。
 しかし、鋼の刃が人狼に届くより迅く、人狼の蹴りもまた、跳ね上がっていた。

 鈍い光を放つ両刃の剣と、山刀のような人狼の爪が、交錯する。
 ぴたり、と剣の切っ先が、人狼の胸元の寸前で止まった。
 ぴたり、と人狼の蹴りが、女騎士の喉元の寸前で止まる。

「此処までと、するか」
 人狼が言った。

「ああ」
 金髪の女騎士が応える。

 ゆっくりと互いの武器を下ろした。
 盲目の人狼に、金髪の騎士の、藍い瞳が向けられる。

「人狼よ」
 女騎士が、呼び掛けた。
 真剣な、そして、何処か不安げな表情である。

「何だ」
 人狼が、聞き返す。
 人狼の方は、眼が潰れていることもあり、その表情に変化はほとんど見られなかった。

「わたしは、強くなっているのか?」
 女騎士が尋ねる。
 人狼は、面白くもなさそうな貌で、応えた。

「先刻、俺と引き分けただろう。強くなっている証左であろうが」
「あれは、お前が途中で蹴りを止めたのだ。真剣勝負なら、わたしの喉が先に抉られていた筈だ」

 腕の無い人狼の言葉を、女騎士は真っ向から否定する。
 その言葉に、人狼は口の端を吊り上げた。
 鋭い牙が、覗く。

「それが分かったのなら、確かに強くなっているな。己の力量なくして、相手の器量は見極められぬ故」
 く、く、く、と人狼は嗤った。
 そのまま、言葉を続ける。

「貴様の腕はかなりのものよ。一対一で敵うものは、人の身では、まず、おるまい」
「五対一なら?」
「貴様の立ち廻り一つ」
「……」

 人狼は素っ気無く言うと、ごきり、と首を鳴らした。
 逞しい筋肉が、硬い獣毛の下で動いている。

「まず、多数に囲まれる状況を作らぬことだ。後は個別に仕留めていけば良い」
「……」
「どうかしたか」

 女騎士が黙っているので、人狼が尋ねた。
 女騎士の口元に、淡い笑みが浮いた。

「いや、父と同じことを言うと思ってな」
「ほう」

「なあ、人狼よ」
「何だ」

「獣人は、人を襲うそうだな」
「そうだな」

「人間の女を攫うこともある?」
「そうだな」

「では、わたしを抱いてみないか」
「そうだ……何?」

 人狼が聞き返す。
 月明かりの下、常人では判別しがたいが、女騎士の頬は赤く染まっていた。

 女騎士は、人狼の眼が視えないため、自分の表情の変化を悟られまいと考えていた。
 しかし、人狼は、彼女の体温の上昇や、発汗した匂いを感知しており、今の女騎士の状態は手に取るように分かる。

「正気か、貴様?」
「ああ」

 短い問い掛けと、短い返答であった。
 人狼は、どうしたものか、と自問する。

 そう言う欲が、無い訳ではない。
 寧ろ、女への獣欲は、厳然として存在している。

 しかし、以前であれば、それは様々な欲と同列の存在であった。
 腹が減れば喰らい、血を欲しては闘い、疼けば女を犯す。
 そこに、秩序は無い。
 そう感じたから、そうする、と言うだけのことである。

 だが、今は明らかに違う。
 あの、両眼と両腕を失った三年前から、自分の内で、欲に明らかな序列が出来た。

 己を鍛えること。
 
 己を研鑽すること。

 より、高みを目指すこと。

 それが、何よりも第一であり、後は、余り気にならない。
 そう言う、三年間であったのだ。

 しかし、この女騎士は、中々に魅力的である。
 後ろに置いていた獣欲を、鼻先に持って来させるようなものを、彼女は持っていた。

「良いだろう、貴様を、抱こう」
「うむ」

 お互いが頷くと、妙な間が流れた。
 人狼の、真横に疾る白い刀傷が微かに動く。
 人間で言えば、怪訝な貌をした、と言ったところだろうか。

「その、わたしは何をすればいいのだ?」
 女騎士が訊いた。
 矢張り、頬は赤く染まったままだ。

「そこからか」
「う、すまん……」

 別に謝ることではあるまいが、と思いながらも、人狼は口を開く。
「先ずは、鎧を脱げ」
「うむ、分かった」
 なるべく平静を装っているつもりであったが、鎧の留め金に掛かる指先が、震えていた。

 上半身を覆う鎧を取り、アンダーコートと呼ばれる、緩衝材の役割を果たす衣類も脱ぐ。
 その後、清潔で飾り気の無い、綿製の下着も脱ぐと、白い、双つのふくらみが夜気の中にまろびでた。

 鎧の上からでは目立たないが、そのボリュームはかなりのものである。
 しかも、若々しい張りの良さも、それは備えていた。

 緊張感のある曲線と、赤い乳首が艶めかしい。

「次は、どうするのだ?」
 女騎士が、尋ねる。

「俺の物を使えるようにせねばならんからな。取り敢えず、手で掴め」
「て、手で、か? 直に?」
「当たり前だろう。籠手越しに掴む気か」
「う……。わ、分かった」

 女騎士は人狼の目の前にしゃがみ込んだ。
 恐る恐る、と言った風情で、女騎士の白くてほっそりした指が、人狼の毛むくじゃらの下半身に伸びる。

 ふにゅ、とした感触が指先に伝わった。
 両手の指で、包み込むようにして人狼の『物』を握る。
 人狼のそれは大きく、女騎士が両手を使って握っても、まだ先端が余っている。

「や、柔らかいんだな」
「これから硬くなる。安心しろ」
 何が安心なのか、女騎士には良く分からなかったが、ともあれ、頷いておいた。

「そのまま、手を上下に動かせ」
「う、うむ」

 何やら、神妙な貌で、人狼の言葉に従う女騎士である。
 白皙と言って良い凛々しい横顔に、朱が差しっぱなしであった。

 しゅ、しゅ、と人狼の肉棒に絡みついた女騎士の指が、獣の性器を擦る。

「少し、強弱を付けてみろ」
「うむ」

 言われた通り、指で作った輪を少し強めに締めたり、逆に緩めたりを繰り返すと、人狼の性器に変化が現れた。
 女騎士の白い指の中で、むくむくと、人狼の男根が膨らみ始めたのである。

「あ、大きくなってきた……」
 女騎士の目の前で、人狼の肉の棒が、まさに凶器の様相を持って、大きく硬くなっていた。
 女騎士の指に、人狼のそれが、どくどくと脈打つのが伝わる。

「熱い……」
 自分の掌の熱に浮かされたように、女騎士が呟く。
 人狼の男根は、最初のときよりも、更に膨れていた。
 ごつごつした隆起が、禍々しい。

「次は、口を使え」
 人狼が、何気ない口調で言った。
 女騎士は、あっさりと頷きそうになり、踏み止まる。

「く、口?」
「ああ、口だ」

 女騎士が、人狼の貌と、自分の手の内の肉棒を見比べた。

「口で、その、何をするのだ?」
「俺のものを、濡らせ」
「濡らす?」
「おう」

 人狼が当然のように言うと、女騎士が、頬どころか全身を紅潮させて言う。
「それは、その、何だ、わ、わたしの、く、口で、お前の、その、こ、これをどうこうしろということか!?」
「強く握るな、少々痛い」
 対照的に、人狼は落ち着いていた。

 それで、女騎士も己の動揺を無理矢理押さえ込む。
 それでも、その目線は泳ぎ放しであったが。

「どうしても、必要なのか?」
 女騎士が訊く。

「乾いたままだと、貴様が辛い」
 簡潔に人狼が答えた。

 その言葉に、女騎士は何やら自問していたようだが、遂に意を決し、言う。

「わ、分かった」

 そろりと、女騎士は唇から赤い舌を出し、ゆっくりと、顔をそれの先端近付かせる。

 ぺと。

 女騎士の舌が、人狼の男根に触れた。
 女騎士の口に、獣の熱と、雄の味が拡がる。

 そのまま、人狼の性器の先を、ぺろぺろと舐めてみた。
 技巧も何もない。

「先だけではなく、横にも舌を這わせろ」
 人狼が言うと、女騎士は素直に頷いて、肉棒の横にも舌を使う。
 手を使うことは思いつかないのか、白い指は、人狼のものを握ったままであった。

「指先で、先端をなぞれ」
「ん……」

 くぐもった声で応える女騎士である。
 舌は、人狼のものに奉仕している最中なので言葉が上手く発声できないのだ。

 細い指が、人狼のグロテスクな生殖器の先を、おずおずと撫でる。
 その度に、人狼のものがびくびくと反応した。

「次は、口で咥えてみろ」
 人狼の言葉に、女騎士は少し躊躇したが、直ぐに、その赤い唇で人狼の先端を包む。
 舌で触れたときよりも濃厚な雄の匂いが、女騎士の口の内に広がった。

「もう少し、奥に入れるぞ」
 人狼は宣言して、自分の肉棒を女騎士の口腔に侵入させる。
 ん、ん、と女騎士が苦しげな声を漏らす。

「動かすぞ」
 人狼は、まるで女騎士の口を性器のように扱い、男根を前後させた。
 う、う、と女騎士は呻くが、抵抗はしない。
 口を窄めたり、咽を突く肉棒に舌を絡めたりして、更なる刺激を与えてさえいた。

 人狼が、一層強く咽を突くと、女騎士がむせて、人狼の男根を吐き出す。
「どうかしたか」
 ごほごほと咳き込んでいる女騎士に、人狼が尋ねた。

 女騎士は、目尻に涙を溜めて、人狼を見る。
「お前のが大きくて、咽の奥に当たったんだ」
 その言葉に、人狼の動きが止まった。

 えらく扇情的な言葉だが、分かって言っているのか、こやつ。

「次はどうすれば良い?」
 女騎士が尋く。
 しゃがんだまま、人狼を見上げていた。

「では、胸で、俺のものを挟め」
「うん」

 もう、余り抵抗感はないのか、女騎士は人狼に素直に従う。
 豊かな双丘が、人狼の勃起したものを包んだ。
 ごつごつしたそれは、女騎士自身の唾液で、濡れて光っている。
 そうしたのが自分だ、ということを自覚して、女騎士の頬が赤く染まった。 

「好きに動いてみろ」
 人狼が女騎士を促す。
 女騎士は暫く考え、手でしたときと同じ様にすることにした。
 自分の胸で、人狼の隆起した男根を上下にさすっていく。

 自分の唾液が潤滑油代わりとなって、その動きはスムーズであった。
 女騎士の白い胸の谷間から、人狼の陽根の先端が覗く。

 その赤黒い先端に、女騎士は自然と舌を伸ばした。
 ちろちろと、女騎士の舌が踊る。

 それだけではなく、唇で、赤黒い先端を咥えたり、胸での挟み方にも強弱を付けたりした。
 そうしているうちに、女騎士は、自分の胸の先端が固くしこっているのに気付く。
 赤い乳首が、人狼の男根に触れた。

 びくん、と衝撃に似た感覚が、女騎士の身体に疾る。
 それが、快楽であると知って、女騎士は積極的に自分の胸を摺り合わせていった。

 ふっ、ふっと女騎士の息が荒くなるのに合わせて、人狼の陽根の先端も膨らむ。
「そろそろ出すぞ」
 人狼は、そう言うのと同時に、腰を女騎士の柔らかな胸に叩き付けた。

 人狼の陽根の先端が、爆発したかのように、白濁した性汁を吐き出す。
 女騎士の顔にも、繊細な金髪にも、人狼の精が飛んだ。

 赤い唇にも、白いそれがこびり付いていて、女騎士はそれを唇で舐め取った。
 そのまま、びくびくと、射精の余韻にひくついている人狼の陽根に舌を這わす。

 ぬるぬるしたそれを、丹念に舌を這わせて綺麗にしていった。
「変な味……」
 女騎士は言いながらも、舌の動きを止めない。

 やがて、人狼の性器は、女騎士の舌によって、すっかり拭われていた。
 その男根は、一度の射精にも拘らず、硬度も角度も失っていない。

「下も脱げ」
「うん、分かった……」
 人狼に言われた通り、女騎士がブーツを脱ぎ、ズボンも脱ぎ去る。
「そのまま、四つん這いになって、後ろを向け」

 女騎士は、人狼の言葉通り、地に四つん這いになり、尻を高く掲げた。
 人狼が、長い鼻面を女騎士の秘裂に近づける。

「濡れているな」
 人狼が呟く。
 眼は見えないが、人狼の嗅覚は、女騎士の女陰の状態を把握していた。

「これなら、いけるか」
 人狼はそう言って、自分の一物で、女騎士の陰唇をなぞる。
 人狼のごつい亀頭が僅かに触れるたびに、女騎士の背中がびくりと反って、反応する。

 ずぶりと、人狼が自分の肉棒を、女騎士の内に差し込んだ。
 きちきちと、人狼の雄の器官を、女騎士の肉が締める。

 人狼の男根の先端に、抵抗感が伝わった。
 人狼は、それを無視して、自分の男根を突き進める。

「ひうっ」
 女騎士が悲鳴を上げた。
 腰を高く掲げた姿勢のまま、しなやかな肢体ががくがくと震えている。

「少しの辛抱だ、耐えろ」
「ん、う、う」

 人狼の言葉に何とか頷く女騎士だが、その声には苦しそうな色が濃い。
 それで、人狼はその動きを止めた。

 女騎士の呼吸が落ち着くまで待つ。
 しかし、一方で、その呼吸に合わせるように、女騎士の膣壁は人狼のものを締め付けていた。
 まるで、それだけは女騎士とは別の生き物で、一向に快楽を貪ろうとしているようである。

 そこから、そろそろと、人狼が己の肉棒を進めていった。
 ごり、と音がして、人狼のものが女騎士の一番奥に届く。

 人狼の、巨大で野太いものが、三分の二ほど、女騎士の白い身体に埋まっていた。
 女騎士の秘裂からは、透明な、粘っこい液が垂れ続けている。

 人狼が、ゆっくりと、男根を引き抜いていった。
 女騎士の膣の肉壁が引き止めるかのように、ぬるぬると人狼の肉棒に絡み付く。

 人狼のそれが、女騎士から抜け出そうになる寸前で、また、人狼が時間を掛けて、自分の肉の凶器を突き刺した。
「ん、あ、あっ」

 女騎士が、声を上げた。
 苦痛の声にも、快楽の声にも、聞こえる。
 その、両方なのかもしれない。

 それを繰り返していると、女騎士と人狼の腰の合わせ目から、湿った音がはっきりと響いてきた。
 人狼の動きも、ゆっくりとしたものから、徐々に激しいものになっていく。

「や、はっ、やぁっ」
 女騎士が、声を漏らす。
「どうかしたか」
 人狼が、女騎士の肉を味わいながら、尋いた。
 女騎士が、きらきらした金髪を振り乱しながら言う。

「変、変なの」
「何がだ」
「気持ち、良いの……。痛いのに、気持ち良い……」

 人狼は、女騎士のその言葉に、低く唸って、応えた。
 女への欲望を叩きつけるように、自分の陽根で、女騎士の内を抉る。
 
 人狼のものが、激しく出入りする度に、女騎士の声が高くなっていく。
 人狼のものが、ごりごりと胎内の肉壁を擦るたびに、女騎士の声が甘くなっていく。

 そして、女騎士の膣壁が、今までで一番強く締まった。
 まるで、人狼の肉棒が与えた快楽を、放すまいとするかのようであった。

 それに合わせて、人狼の陽根がびくり、と女騎士の胎内で跳ねる。
「んっ」
 女騎士が、拳を握り締めた。

 どくん、どくんと、人狼の陽根が激しい勢いで精液を撃ち出す。
 女騎士の子宮にも、膣道にも、人狼の白濁した性汁が満ちていった。

 その余韻に浸りながらも、女騎士は自分の腰を人狼のそれに押し付け、精液の最後の一滴までを、自分の子宮に導いていく。
 ふるふると、女騎士の全身が、甘い律動を伴って、震えていた。
 
 事が済んで――、
「で、何があったのだ」
 人狼が、女騎士に尋ねる。

「何がだ」
 女騎士が、涼しい顔をして尋き返した。
 とは言え、その横顔に僅かに朱が差しているのは、ご愛嬌か。

 女騎士は近くの泉で身体を清めており、濡れた髪が、艶っぽかった。
 しかし、人狼はそれには無頓着に、言葉を続ける。

「女が、進んで獣に抱かれるものかよ。何ぞ、あったのだろうが」
「お前に惚れたから、ではダメか?」
「戯言を……」
 人狼が、刀傷で覆われた眼を歪めて言った。

 女騎士が、苦笑を返す。
 ふう、と溜め息を一つ吐いて、語る。

「わたしの父が、病で死んだ、と言っただろう」
「ああ」
「あれは、嘘だ」
「ほう」

「父はな、毒で殺されたのだ」
「……」

 その言葉に、人狼の様子に変わったところはなかった。
 ただ、女騎士の言葉を待っている。

「余り、驚かないのだな」
「病で倒れようが、毒で死のうが、あの男が武に因って斃れたのでなければ同じだ。違うか?」
 人狼の物言いに、女騎士の頬が笑いの形を象る。
 女騎士は気を取り直したかのように、言葉を紡いだ。

「父は、融通が利かぬ性分でな。どんな身分の高い相手でも――例えば宰相閣下でも――不正があれば看過できぬ性質だった」
「ふん」
「で、国王陛下に直訴しようとして、その前に毒を盛られたと言う訳だ」

 そのときのことを思い出したのだろうか、女騎士の肩が、微かに震える。 
「わたしは、それから宰相の不正の証拠を集めた。父の、昔の知人の助けもあって、警吏が踏み込めるほどには宰相を追い込んだ。だが、向こうには権力もあれば、富も縁故もある。どれだけ重い罪になったとて、せいぜい、辺境の領主に封ぜられる程度だろう。わたしにはそれが許せん」

 一息に言って、女騎士の眼に、暗い炎がちらついた。
 明るくはないが、延々と心の内を焦がしていたであろう、炎である。

「わたしは、奴との決着を付けたかったが、自分の技量が未熟なのは分かっていた。それで……」
「俺に自分を鍛えろと言った訳か」
「ああ」

 女騎士は眼を伏せた。
 おずおずと、言う。
「すまん、お前を利用してしまった」
「ふん……」

 人狼は、ただ、鼻を鳴らしただけだった。
「最初の問いに答えておらんな。何故、俺に抱かれた」
 人狼が、問う。
 女騎士が、頬を染めて俯いた。

「三日後、宰相を捕らえに、警吏が動く。奴を討つ最初で最後の機会だ。それで――」
「それで?」
「その前に、男とはどんなものか、知っておこうと思ったのだ」

 言ったきり、女騎士は黙る。
 女騎士の答えは、人狼の問いに対する直接の回答にはなっていなかった。

 何故、獣である自分に抱かれたのか。

 その答えではない。
 ないが、人狼もそれ以上、追求しようとはしなかった。
 代わりに、別のことを尋く。

「三日後か」
「ああ、三日後だ」

 人狼の言葉に、女騎士が『三日』という数字を噛み締めるかのように言った。
『人は、他愛のないことで、直ぐ死ぬ』
 人狼の胸中に、何時かの自分の言葉が去来し、彼は不機嫌に鼻を鳴らした。

 そして――、
 三日などという時間は、直ぐに過ぎ去った。
 今は、三日前より幾分欠けた月が、女騎士の頭上で輝いている。
 そして、彼女の目の前には豪奢なローブに身を包んだ、痩身の男が立っていた。

 女騎士が仕える国の、元宰相である。
 そして、その男の周囲を、屈強な男たちが取り囲んでいた。

 元宰相が金で雇った傭兵である。
 金さえ得られれば何でもする輩だが、それだけに腕は立つ。

 数は、十から十五であろうか。

『多数に囲まれる状況を作らぬこと』

 父親にも、人狼にも言われていたことを思い出す。
 父にとっても、あの獣にとっても、自分は不肖の弟子だな。

 女騎士はそう思い、苦笑を浮かべた。
 これだけの人数を相手に、生き延びられると考えるほど、彼女は己を過信してはいない。
 しかし。
 せめて、一太刀、あの痩せた男に浴びせる。

 そう決意を込め、己の両刃剣の柄を握る。
 女騎士を前に、傭兵たちが、下卑た嗤いを浮かべた。

 彼女を倒してからのことを想像したのだろう。
 傭兵たちが、てんでに得物を引き抜いた。

「手足を斬り落としてから、犯してやるぜ、お嬢ちゃん」
 傭兵の一人がそう言った瞬間――

 轟、と風が吹いた。
 それは、将に、青い疾風だった。

 そして、その青い風がもたらしたのは、宙を染める深紅の鮮血であった。
 その鮮血が地に落ちるのを追うように、赤い肉片と、白い骨と、黒い臓物が、ばらばらと降る。
 それは、宰相の周囲を固めていた筈の、傭兵たちの成れの果てであった。

「お前……」
 女騎士が、囁くような声で、言った。
 女騎士の前に、青い、一向に青い獣が、背を向けて立っていた。

「よう」
 両眼を白い傷痕で覆われ、両腕を持たぬ人狼が、女騎士のほうを向いて、言った。
 女騎士の貌が見えている訳でもないのに、人狼の口の端が、にやりと上がる。

「どうして、こんな所に……?」
「何、貴様に二つばかり、貸しがあるのに気付いてな」

「貸し?」
「ああ。貴様には、さっさと父親と同等以上の遣い手になって貰う。その上で、俺が貴様を倒す」

 人狼は、さも当然の事のように言う。
 女騎士が、やや、呆れながら、問いを重ねた。

「もう一つは?」
「貴様の、胎だ」
「胎?」
「おう。俺の子が、居るやも知れん」

 その言葉に反応し、女騎士の頬に一瞬で朱が乗る。
 しかし、人狼は、そんな女騎士の反応には、無関心のようであった。

「雑魚どもは片付けてやったぞ。後は、貴様の本懐を遂げろ」
 女騎士が見ると、目の前に、一瞬で強力な護衛を失った元宰相が、呆然と立ち尽くしていた。
 女騎士の剣が、鞘走る。

「覚悟……!」

 しゃらん、と。
 澄んだ金属音と共に、銀光が、虚空に閃いた。


 奇妙な獣人が現れると言う、噂がある。

 現れる獣人は、人狼で、それだけなら奇妙でもなんでもない。

 ただ、その人狼は、人に雑じり、傭兵のような、冒険者のようなことを生業としているのだと言う。

 それとて、亜人や、獣人を見かける機会の多い中央では、珍しいが、絶無ではない。

 ただ。

 その人狼には、人間の相棒がいて。

 その相棒は、見事な金髪の、美しい女剣士であるという。

 奇妙な獣人と。

 奇妙な人間の。

 それは、奇妙な噂であった。


 

【 fin 】


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-モドル-