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SS:ウィロー

 大陸の北方に広がる大自然の真っ只中に、『ニーブルヘイム王国』と言う小さな国がある。
 王都は四方を山に囲まれ、そこを覆う深い森にはこの世界にあっても珍しいほどに数多くの魔獣が生息していた。国土の殆どが一年を通して霧に沈む光景はこの国の名物であり、また、国の名の由来ともなっていた。
 そしてこれは、彼の国のとある王女の話だ。


 真上から光が射すが薄暗く、されど適度な湿度と温度に保たれた部屋。ここにいるのは私と、顔も姿もわからない誰かだけだった。
 『貴女は本当にやさしい仔ね。貴女のような人がもっとたくさん入れば、この世界ももうちょっとやさしくなれるのにね』
 「そんなことないよ。おかあさまもおとうさまもおてつだいさんも、みんなみんなやさしいよ?」
 不意に聞こえてきたのは慈愛に満ちた女性の声。それに舌足らずに返したのは幼い自分の声だ。
 『あら、そうなの? じゃあ、貴女のその心はその人たちの中で育っていったのね』
 「うん!」
 元気一杯に答えた私は、女性が微笑んだのを感じた。
 顔がわからないからどんな感じで微笑んでいるのかはわからないのだが、その女性の微笑みはお母様と同じくらい私を安心させるのだ。
 ふと、部屋の奥のほうからキャンキャンという仔犬の声が聞こえた。
 声の聞こえた方向はこの部屋にある自分が知る唯一の出入り口。その出入り口に振り向いた私は、自身の顔が喜色に染まっていくのが分かった。
 「エクス! こっちだよ!」
 私の声が聞こえたのか、茶色に染まった尾の毛先以外が純白の仔犬は私の足元に駆け寄ってくる。そして私の周囲を跳ね回り始めた。
 私はこの愛らしい仔犬が自分のことを認識していることに嬉しくなり、自分も一緒になって遊び始めた。その様子を見ていた女性から愛情に満ち溢れた視線を感じ、それが私を更に上機嫌にさせた。
 『あらあら、あなたたちは本当に仲がいいわね。でも、そろそろ時間よ』
 時間を忘れてはしゃいでいた私と仔犬だったが、彼女の声で現実に引き戻された。
 見れば先ほど仔犬のやってきた出入り口から西日が差し込み、薄暗かった洞窟はオレンジ色に染まっていた。明るくなってなお、見上げた女性の顔は判別できない。
 見上げたと言うことから、恐らくは幼い自分よりかは背が高いのだろう。幼心にその体型を羨ましく思ったことを覚えていた。
 私はとことこと近づいていって彼女の腰に抱きついた。柔らかな感触が心地よく、その香りに顔をうずめる。
 「やだ。まだかえりたくない…」
 『だめよ、もうお迎えが来てしまったわ。貴女のご両親が心配しているわ』
 少し鼻声になった私に彼女が苦笑したのがわかる。それだけ私がここで過ごした期間は楽しかったのだ。
 「やだやだ! おうちにかえっても、おとうさまもおかあさまもあそんでくれないもん! やさしいけど、いっしょにいないもん!!」
 遂に私は泣き出してしまった。この頃、お父様もお母様も戦争の準備で忙しくなり、私に構っている時間は作れなかったのだ。
 足元ではエクスがくぅんと寂しげに鳴いている。私はエクスというこの仔犬とも離れたくは無かった。
 『大丈夫、大丈夫よ。貴女のお母様もお父様も、すぐに一緒に遊んでくれるようになるわ』
 しゃがんで目線を合わせてくれた彼女は、そのまま私を抱きしめてくれる。自慢の金髪を撫でてくれる手が気持ちいい。
 「ほんとうに? ほんとのほんとに?」
 『ええ、ほんとのほんとに。…そうだ、いいことを思いついたわ』
 私の言葉を肯定してくれた彼女は、そういうとまるで面白い悪戯を思いついたような顔をしていた。
 なんだか私も面白くなるような気がして、少し興奮気味にそれを尋ねた。
 「いいことってなに? おもしろいの?!」
 『ええ、おもしろいことよ。あなたが寂しくならないように、そのうち私の息子が貴女を訪ねるわ。そうしたら、その仔を家族として面倒を見てくれないかしら?』
 「かぞく・・・?」
 私の頭の中で家族といってまず思い浮かんだのが、両親の姿だった。家族という特別な枠組みに入る人間はあまり多くなかったからだ。
 そして他人を家族とする方法を、その時の私は一つしか知らなかった。
 「わかった! その子がきたらけっこんしてあげる!」
 『けっ、結婚!?』
 女性が驚く気配を見せるのは本当に珍しいことだった。今ならわかるが、恐らく彼女は結婚ではなく養子か何かを思い浮かべていたのだろう。
 しかし当時の私にはそれ以外の方法を知らなかったが為に、泣きそうな声で問うしかなかった。
 「けっこんしても、かぞくじゃないの…?」
 『う、う〜ん、違ってはいないけれど。…貴女はそれでいいの?』
 「うん! おとうさまもおかあさまも、けっこんしたらしあわせになれるって言ってたもん!」
 自分の回答が正しかったということに、私は無邪気に喜んでいた。足元では先ほどまで悲しそうに鳴いていたエクスもキャンキャンと笑っている。
 彼女は暫し悩む素振りを見せてから諦めたように溜息を吐く。そして見えぬ表情を満面の笑みに変えた。
 『息子は必ず貴女の前に訪れる。そうしたら結婚して、目一杯愛してあげて。安心して、美形は保障するからね』
 「やった〜! ふふ、エクス〜」
 自身で処理しきれない喜びの感情を、私はすぐ近くにいたエクスを抱きしめてモフモフすることで発散していた。
 かなり強く抱きついていたが仔犬も嬉しそうだったので問題ない。そばでこちらを見る女性も微笑んでいた。
 そして、彼女は膝をはたいて立ち上がる。翡翠色の瞳がこちらを見ていた。
 『さて、私たちはもう行かなくちゃ。残念だけど、お別れの時間よ』
 「え…もう、行っちゃうの?」
 先ほどまでと打って変わり、私の声は弱弱しい。腕の中のエクスも未練を籠めて鳴いている。
 『大丈夫よ、また逢えるわ。それに…夢は醒めるものよ』
 『―――――』
 そう、これは夢だ。私の20年の人生の中でも五指に入る最高の思い出。
 『――――ま』
 『ほら、向こうで貴女を呼んでいる人がいるわ。早くお行きなさい』
 「うん、そうだね…」
 ゆっくりと脳が覚醒していくのがわかる。既に想像の部屋は思い出せない。
 『――うさま!』
 『貴女とまた逢えて嬉しかったわ。たぶん、これから人生の山場が来るのでしょう。だから気をつけてね』
 「大丈夫だよ。いつ貴女の息子と結婚してもいいように、私は自分を磨いているのだから」
 彼女の姿はこの世界から消え、声だけが聞こえている。私も幼い私ではなかった。
 『ふふ、ありがとう。もう逢うことはないだろうけど、――またね』
 「うん、――またね」

 『お嬢さま!』
 そして、私は怠惰な眠りから目覚めた。


 「お嬢さま!」
 眠りから引き戻された私が最初に聞いたのは執事であるセバスの声だった。
 「んむ・・・もう起きている。そう怒鳴ってくれるな」
 「ならばもう少し早く起きてくだされ。既に日は出ておりますぞ」
 幼い頃から私に付き従う彼には私への遠慮はあまり見られない。勿論、最低限の礼儀は護っている…筈。
 彼は豪奢な天蓋付き寝台の横に置いてあった金属の桶に張られた水を、カートごと私の正面へと持って来た。すっ…という感じで、音は殆どしなかった。
 そしてセバスはまだ若い壮年の顔を一度下げると、音もなく部屋から出て行った。男性である彼は女性である私の素肌を見るわけには行かないからだ。
 私は手早く顔を洗うと、タオルで水滴を取りつつ姿見の前に歩いていく。映し出されたのは、フリルやレースをあしらった白いネグリジェを纏う成熟した女性だった。
 「あれから既に15年、か。私の王子さまはいつになったら現れるのやら…」
 透き通ったアルトの声で独り言を呟きながら、肩の結び目を静かに解く。ネグリジェは重力に従って真下にストンと落ち――ることなく、私の胸に引っ掛かった。
 「・・・・・・」
 誰も見ていないというのに恥ずかしさに身体を縮こませながら、いそいそとネグリジェを脱いだ。
 私は生まれたままの姿になると、そのまま再度姿見の前に立つ。鏡には我ながら美しいと思うほどに均整の取れた裸身があった。
 ほぅ、と息を吐く。王家御用達の服屋によれば、私の身体は黄金比なるものを成しているそうだ。いわゆる女性のプロポーションの理想だ。
 私は175cmと女性にしては背が高く、それに合わせて胸も大きく育っていた。身体も鍛えているのでお母様のように垂れたりはしていな――
 「――ひっ!」
 何かを感じて背筋が凍りつく。…どうやらこの話題は避けたほうが良さそうだ。
 びゅうという音とともに少しだけ開いていた窓から隙間風が吹いてきた。風は腰まである自慢の長い金髪を揺らし、春先の肌寒い空気は私の身を震わせた。
 王族たる私が風邪を引くわけにもいかないので、私はすぐ横の衣装棚を漁り始める。取り出したのは百合をあしらったブラと同じ装飾でローライズのショーツだ。ちなみに両方とも純白で、最近の私のお気に入りだ。
 自分で出来ることを態々誰かにやらせることを私はあまり好いていない。なのでいつも通りにブラから装着しようとして、
 「んっ…」
 胸の先端からチリッとした甘い感覚を感じた。見ると双丘の先端にある綺麗な桜色の乳首が見事に勃起していた。
 どうやら寒さで勃ってしまったらしい。もう一度ブラを擦り付けてみれば、心地よい快感が脳を刺激する。
 「く…ん、んっ……んぁ、あ…」
 私は無意識のうちに乳房を突き出してブラの布地に擦り付けていた。口から甘い声が次々と漏れ出す。
 「あ、ぁん…くっう、ん……はぁっ」
 いつの間にか右手は私の大きな乳房を緩く揉み、人差し指で乳首を転がし始めた。
 途端、気持ちよさが増幅される。股間が急速に熱を持ち始めているのがわかる。
 「ちょ…んっ、ちょっと…あ、んぅ…はぁ、だけ…なら……」
 私の左手はゆっくりと秘部へと伸ばされ、より敏感な突起を扱こうとする。
 だが、それはコンコンという無粋の音に邪魔された。
 「――ッ!??!!?!?!」
 「お嬢さま、早くせねば朝餉を食べる時間がなくなりますぞ」
 豪奢なドアの向こうから聞こえる少し皺枯れた声によって浮かされた思考が一気に冷やされた。
 朝食の仕込みを終えたセバスが私を呼びに来たのだ。思わず悲鳴を上げそうになった口を両手で押さえてしゃがみ込む。
 「わ、わかっている! すぐに行くから向こうで待て!!」
 「承知しました。お早くお願いいたしますぞ」
 扉の向こう側にあった気配が唐突に消えた。セバスはこの城で一番の隠密術の使い手なのだ。
 私は幼い頃から彼を出し抜く為だけに鍛えた気配察知能力で、自分の部屋の周囲10mを綿密に調べる。…どうやらセバスは隠れていたりしないようだ。
 はふぅ、と大きく息を吐きながらすぐ横のソファーに背中から倒れこむ。その傍には先ほどの情事で落とした下着が転がっていた。
 「うぅ、思わず最後までやろうとしてしまった。私のバカもの…」
 周囲からは高潔と評判の私だが、実際には早朝から自慰をしてしまうほどに性欲が旺盛なのだ。
 もう15年も待っている私の王子さまが、こんな私を見たらどう思うだろう? そう思うと自己嫌悪に陥らずにはいられない。
 ふと、窓の向こうから隠れているような隠れていないような気配を感じた。私ははっとして起き上がり、急いで下着を所定の位置に装着する。
 クローゼットからは滑らかな生地の乳白色のドレスを引っ張り出し、それを被るように身に纏う。そして隠し棚から大きな干し肉を取り出してテラスに駆け出た。
 「エクス!」
 そう呼びかけた私の視線の先には、幻想的な光を幽かに纏う白狼がいた。
 人の飼う犬にしては身体が大きく、森に棲む魔獣にしてはその表情は穏やかだ。琥珀色の瞳には輝きがあり、純白の毛皮は艶やかに煌いている。
 私はこの美しい大狼を、幼い頃にほんの短い期間だけ一緒にいた白い仔犬に因んでエクスと呼んでいた。
 このエクスが私の前に姿を見せ始めたのはおよそ10年前からだ。15年前の約束から5年待っても誰も来ず、落ち込んでいた頃に彼はやってきた。…雄の生殖器がちらっと見えたから、“彼”で合ってる筈。
 最初はあの白い仔犬だったエクスが逢いに着てくれたと思っていたのだが、いくら呼びかけても狼は遠巻きにこちらを眺めているだけ。なので人(狼?)違いなのだろうが、それでも私はエクスと呼び続けていた。
 「ほら、今日はグランタウロスの干し肉だ。味わって食べろ!」
 そういって放り投げるのは先ほど取り出した干し肉だ。高級牛であるグランタウロスの腿肉を贅沢にも丸々干して味付けした一品である。
 私が投げたのはその肉塊から切り取った一部だったが十分な大きさがあり、巧い具合に口でキャッチしたエクスも心なし嬉しそうな顔をしていた。
 彼はわふ、と一声鳴くと、肉を咥えて城の裏に広がる広大な森へ向き直ってゆっくりと歩み去る。
 その白い背が完全に捉えられなくなるまで、私は森を眺め続けていた。既に、今朝見た夢は脳裏から消え去っていた。


 アンティーク調に整えられた清潔な執務室に、カリカリという音が響く。ここにいるのは私一人だ。
 成人をとうの昔に終えている私は、将来国を継いだときの為に常日頃から政務を一部をやらせてもらっているのだ。
 「む、森の魔獣たちの活動が活発になってきている? …この地域ならカデナ族に調査を依頼するか」
 カデナ族とは我がニーブルヘイム王国に暮らす数多の少数民族の一つだ。特に重要でもないからカデナ族についての説明は割愛する。
 「西方ではゴート帝国の残党が出没、か。これは警備隊の仕事だな」
 15年前、ニーブルヘイム王国は隣国ゴート帝国と戦争を始めた。幸い僅か一ヶ月の短期間で終わり、人的損失などはあまり無かった。
 勝ったのは我々王国であり、帝国は王の一族郎党が処刑されたと言う。あの時期の両親の忙しさは、この戦争の為だったと気付いたのは結構最近だった。
 「紅茶がはいりましたが、どうされますか?」
 私の座る執務机からみて右側にある扉から、セバスがカートを押して入ってくる。同時に紅茶の芳しい香りが鼻腔をくすぐった。
 「ああ、貰おうか。ちょうど一休みしようかと思っていたところだしな」
 こういうときのセバスの執事としての能力は素晴らしいものがある。特に、私が欲しいと思ったものを既に準備しているところなどだ。
 左右にピンと張った白い髭を揺らしながら紅茶をカップへと音もなく注いでいく。適温に冷ますのとパフォーマンスの為にポットとカップにはかなりの高低差をつけている筈なのに、彼の白の手袋や黒の執事服に撥ねた様子も無い。
 「どうぞ、お嬢さま」
 「ありがとう」
 差出されたカップを受け取り、まずは綺麗な香りを存分に味わう。そこで気付くのは普段とやや香りが違うということだ。
 「セバス、紅茶の葉を替えたのか?」
 「よくお分かりで。漸く紅茶の違いが判るようになられて、このセバス嬉しく思いますぞ」
 オールバックにした白髪を仰々しく撫で付けるセバスをジト目で睨む。
 確かに王族、というより貴族の嗜みである紅茶の判別が出来るようになったのはここ五年ほどだ。それまでは特に必要を感じていなかったからだ。
 私ははぁと溜息を吐くと、無駄に透き通った琥珀色の液体を口に含む。清涼なやや甘い風味が一気に口腔を満たした。
 「これは・・・」
 「大穀倉地帯である東ニーブルヘイムでも一部の農家しか生産していない最高級茶葉にございます。今月は予算がやや多くもらえましたので」
 「ふふ、ならお母様に感謝せねばな」
 国政に関するものや城内勤務者に対する給金などの予算他、金が絡むものは殆ど全てをお母様が取り仕切っていらっしゃるのだ。
 武家から婿養子で入ってきたお父様はそういった金銭感覚が疎い為、任せると大赤字しか弾き出さない。一昨年のお父様が秘密裏に進めていた国営プール設置事業は酷かった。途中でお母様が気付いたからよかったものを…。
 ともかく、私の為の諸費用などもお母様が管理しており、普段は必要最低限しか貰えないのだ。財布も握られているのは私とお父様の共通の悩みだ。
 「さて、ここで問題でございますお嬢さま。今月の予算が例年より多くなったのは何故でございましょうか? 答えてくださいませ」
 「そうだな…」
 紅茶と同じ琥珀色の瞳を光らせて、セバスは私に課題を与えた。
 彼はお父様たちから私の教育係も命ぜられているため、私は小さい頃からこういう細かい問題をよく出題されていた。偶に鬼畜としか思えないような引っ掛け問題があるのは面白くないのだが。
 飲み終えたカップを机に置き、顎に手を当てて思案する。様々な事項が脳裏を飛び交い、その中で可能性の高そうなものを吟味していく。
 私は最もそれらしいものに見当をつけた。
 「滅亡したゴート帝国の元領地の荒地が回復して生産高が増え、貿易による黒字高が上がったから、かな?」
 「流石でございます。勉強は怠っていないようでございますな」
 「当たり前だ。というか、勉強はお前にいつも見てもらっているのだろうが」
 そうでございましたな、と彼は一本取られたとでも言うかのように笑う。私も釣られて笑みを零した。
 先ほど私が答えた通りゴート帝国は滅亡し、その領地は王国が併合したのだ。帝国は地中から産出する“燃える黒い泥”を使って“カリョクハツデン”だとかよく判らない技術を開発し、自然を破壊し尽くしていた。
 他にも訳の判らん“デンキブンカイ”とか言うもので様々な金属類を生産しており、その廃液や原料を採る鉱山から流れる鉱毒による大地の汚染が酷かった。
 国土の一割以上が生物の一切棲めない死の荒野と化しており、王国はまず自然の復興に着手した。自然に詳しい少数民族や友好的な魔獣たちの力を借りて、最近ようやく作物の収穫ができるようになったのだ。
 と、私の正面にある出入り口をノックする音が響いた。
 「入れ」
 「し、失礼いたします」
 扉を開けて入ってきたのは城内で働くメイドの一人だった。あまり私の顔を見たことの無い新人のメイドらしく、緊張で身体がガチガチに固まっている。
 セバスはというといつの間にか私の斜め後ろに控えており、既に紅茶の載ったカートはどこかに片付けられていた。
 まずは彼女の緊張を解かなければ用件も巧く伝えられまいと思い、微笑を浮かべて出来るだけ柔らかに声を掛ける。
 「そう緊張するな。深呼吸でもして少しリラックスしたらどうだ?」
 「も、申し訳ありません!」
 メイドはよほど緊張していたのか、すーはーすーはーと深呼吸を繰り返す。傍から見ていると過呼吸で倒れないか心配になるほどだ。
 それから暫くして、なんとか肩の力をある程度抜くことに成功した彼女は、用件を言い始めた。
 「姫様、国王陛下がお呼びでございます。後ほど玉座の間までお越しくださいませ」
 「わかった。下がっていいぞ」
 「は、失礼いたします」
 役目を果たし終えた開放感からか、そそくさと執務室を出て行った彼女の声には安心の色が混じっていた。
 初々しいものだと思っていると、やや眉を顰めたセバスの姿が目に入った。すこし不機嫌になっているらしい。
 「どうした? セバス」
 「いえ、メイドの教育について、あとでメイド長に抗議に行こうかと思っていたところでございます」
 「私に対してあまり礼儀を弁えぬお前が言うな。新人なんだろうから、少しは大目に見てやれ」
 「しかしですなぁ…」
 この道14年のベテラン執事としては、先ほどの新人メイドに対して不満があるようだ。
 確かに彼に比べれば扉の開閉音、歩行時の足音や優美さ、発声方法など、色々と劣っていた。しかし、何でもできてしまうある意味天才のセバスと比べるのは、あまりに酷ではなかろうか。
 まだグチグチと呟くセバスに対して溜息を吐きつつ、執務机の書類を片していく。お父様のことだから、“後ほど”とは“今すぐ”ということなのだろう。早く行かねばお父様が拗ねてしまう。
 「セバス、行くぞ」
 彼の返事を待つことなく、私は扉に向かって歩いていく。するとセバスは音も影もなく既に扉の前に待機していた。
 相変わらずの早業に苦笑しつつ、彼の開けた扉を通って廊下に出る。
 「む…」
 一瞬だけ昼前の太陽に目を細める。片側が全面ガラス張りとなった廊下はふんだんに光を取り入れ、煌びやかな様相を見せていた。
 豪勢な絨毯は霧を表す独特の紋様が刺繍されており、所々に高価な美術品が展示されている。…偶に破損を無理やり修復したような傷跡があったりしたが見なかったことにした。うん、ほろ苦い思い出だ
 その廊下を私は歩き出す。私の執務室は突き当たりにある為、誰かに伝えるときは非常に説明が楽だった。
 「…ふふ」
 肌を暖める陽光が気持ちよく、思わず笑みを零してしまう。傍から見たら変な人のように思われたかもしれないが、近くにいるのはセバスだけなので問題は無い。
 彼は私の半歩後ろを歩いているのだが、その存在を忘れてしまいそうなほど気配が無かった。無論、足音など一切立てていない。
 幾つかの部屋や階段を過ぎると、やがて城の中央部に位置するT字路にやってきた。私はT字の右側からやってきた訳で、右の壁にこれまでよりも一層豪華な観音扉が聳え立っていた。
 「カレンディーナ・ファム・ニーブルヘイムです。よろしいでしょうか」
 「お入りなさい」
 ノックバーを叩くと、扉の向こうから魔法で拡張された女性の声が響いてきた。
 ガコォン、という音を立てながらセバスが扉を開ける。いつも思うのだが、わざと音を立てるようになっているこの扉には何の意味があるのか。私には不思議でしょうがなかった。
 それは置いておくとして、私は玉座の間へと足を踏み入れる。そこでは、お父様とお母様が贅沢に装飾された玉座にそれぞれ腰掛けていた。
 「ようやっと来たか、カレン。遅すぎて拗ねてしまうところじゃったぞ」
 「勝手に拗ねてて下さいお父様」
 立ち上がって両手を広げていたお父様はいきなり orz の体勢になってしまった。ちょっと言い過ぎたかもしれない。
 蓄えた灰色の口ひげを垂らしながら肩を震わせて泣くお父様の名前はグンテリア・フォン・ニーブルヘイム。ニーブルヘイム王国の現国王だ。…着飾らないとただの平民のおじさんにしか見えないのが玉に瑕だけれど。
 「こらこら。そんなことを言ってはいけませんよ、カレン」
 「申し訳ありません、お母様。ですが、咄嗟に言ってしまう心情はご理解ください」
 「安心なさい、十分に理解していますよ。この人を苛めるのは愉しいですからね」
 いい笑顔で言い放つお母様の横で、ひぃっとお父様が小さく悲鳴を漏らしていた。
 お母様の名前はブリュンヒルト・リィン・ニーブルヘイム。その歳にしては若い柔和な顔立ちに左目の下の泣き黒子。私の自慢の金髪と深い紺碧の瞳は、お母様から貰ったものだ。
 それと結構なサディストなのだが、これでいて夫婦仲は絶好調である。どのくらいかと言えば、私が野暮用で夜中に城内を歩いていると、まあ、その、色々と声とかが聞こえてきたりする。そろそろ歳を考えてほし…
 「何かいいまして? カレン」
 「いいえ、何も言ったりしていません。ええ、全く、これっぽっちも」
 とりあえず今年で結婚35年を迎えるこの夫婦は非常に仲がいいのだ。うん、いいことだ。
 「まあ、貴女が心の奥底で何を考えていたかは置いておきましょう。さてカレン、今回お呼びしたのは他でもありません。いい加減に腰を落ち着けたらどうかしら?」
 「・・・またそのお話ですか、お母様」
 お母様の言葉に、私はげんなりと肩を落とす。腰を落ち着けたらどうか? とは、要はさっさと結婚しろということだ。
 その隣ではお父様が頬を引き攣らせつつも、そうだそうだと頷いていた。セバスは扉横で待機して微動だにしない。
 王国の上流階級において女子の大方は、成人する15歳から18歳までの間に婚約及び結婚をする。この国での結婚適齢期が大体このぐらいなのだ。中流階級以下はもう少し早いと聞いたことがあるが、確かめたことはない。
 お父様とお母様は成人直後の15歳で結婚したが、私は少し前に20歳になった。とうに結婚適齢期を過ぎているのだ。
 偶に結婚相手が見つからずに20歳を超えてしまう女性もいるにはいるが、私の場合は全てを断っているが為に結婚をしていない。
 「カレン、お前があの約束を頑なに護ってきていることはよく知っておる。じゃが、もう15年も経つのじゃぞ。
  いくら幸せになる為の約束とはいえ、お前自身を縛って幸せを得る機会を奪っていたら、本末転倒ではないか?」
 「それは・・・」
 お父様の真摯な言葉に、私は俯いてしまう。
 ただでさえ反対される何処の誰とも判らない者との婚約だ。それを勝手に結んだ私に、最初に理解を示してくれたのは他ならぬ両親だ。
 猛然と反発する貴族たちを説得したのも、お父様とお母様だった。我が子が幸せになれるのなら、どんなことだってしてやれる。そう言ってくれたのはどちらだったか、それとも二人ともだったか。
 「貴女だって判っているのでしょう? その相手がここに来る可能性は、もう既に限りなく低いことを」
 揺れる私の心に更に追い討ちを掛けるのはお母様の言葉だ。
 これまで一切の連絡も無かったその相手が急に現れることはない、ということぐらい、私だって判っている。いや、判ってしまっている。
 最初こそそれらしき手紙が寄越されていたが、それらは全てあくどい貴族が寄越した偽物だった。その偽物の手紙を見て一喜一憂していた当時の私にとって、その純情な心が弄ばれるのはかなりの苦痛だった。
 偽物を寄越した貴族たちがその後どうなったかは知りたくも無いが、兎も角、私もいつまでも夢見る少女では居られないのだ。
 「はい・・・わかり、ました・・・」
 「おお、判ってくれたか! ならば早速ここに――」
 「・・・ですが!」
 嬉々として見合い相手の一覧を取り出そうとしたお父様の動きが、私の強い声で止まる。
 顔を俯かせ、肩を震わせる私を見て、お父様は再び自身の玉座へと腰を下ろした。その先を言えない私を、母様の声が促す。
 「カレン、どうするのです?」
 「あと、一年・・・待ってください。そうしたら、私も諦められますから・・・」
 顔を上げてお父様たちを見る。声が震えたが、どうにか私の言いたいことは言えたと思う。
 「ふむ、その間にお前が納得できるような婿を見つける為に、ワシも努力するとしよう」
 「そうですね。カレン、悔いを残さないようにするのですよ」
 「はい、判っております」
 頬を何かが伝う感触がしたが、なんとか笑えたと思う。
 私は足早に、両親の居る玉座の間から逃げ出した。

 ベットに潜り込み寝る間際になって、私は玉座の間から逃げ出してからの記憶が曖昧なことに気がついた。
 この十五年間、只管に思い続けていたことを変えることは、私が茫然自失となってしまうのに十分だったのだろう。
 「お嬢さま・・・」
 顔を上げれば扉の傍にセバスが立っていた。
 心配そうな、苦しそうな表情の彼もやや落ち込んだ雰囲気だ。私に仕えてから今まで聞かされ続けていた為に、セバスには私の気持ちが判り過ぎるのだろう。
 「・・・出ていきなさい」
 暗い声で私は言い放つ。しかし、彼は動かない。
 「出ていけ―…っ!」
 ベットの横の隠し棚に隠していたやや萎れているピーマンを彼に向かって投げつける。
 セバスはピーマンを大の苦手としており、見るのさえ嫌がるのだ。その為に、私は幼い頃から彼を追い払うときはピーマンを使っていた。
 「判りました。御用がございましたら御呼び下さい」
 額に当って床に落ちたピーマンを拾い、彼は扉から出て行く。そのときの顔は青褪め、手は震えていた。
 自分を心配してくれていた忠実な僕に八つ当たりをしてしまったことに気付き、私は頭を抱えて蹲ってしまう。
 「私は、何をやっているのだろう・・・?」
 暫しの自己嫌悪を終えた後に思ったのは、そんなことだった。
 いつまでも現れない幻想を待ち続け、王族にとっても、女にとっても大切な婚姻を全て捨ててきたのだ。私は、この国の唯一の姫であるというのに。
 だからこそ、
 「最後に、一回だけ・・・」
 震えた右手は豊満な胸に添えられ、左手は微かに湿った秘裂へと伸ばされた。
 「くぅ、ん・・・あ、あっ・・・あぁ・・・・・っ!」
 こねるように右手を動かし、左手の指は陰唇を擦り始める。
 私の口からは甘い声が漏れ出して、脳内をとある妄想が埋め尽くす。私が、私の王子さまと交わう辺鄙な妄想。
 「あな、た・・・んぁ、気持ち・・・いい・・・・」
 名前も顔も知らない為にその姿は漠然としか想像できず、呼ぶのは夫となったものの代名詞だ。
 しかし、それでも私の快楽の手助けにはなった。
 「あっん・・・あ、ぁ、く・・・ふっ、ん・・・」
 いつしか私の両手は、想像の中で王子さまの両手へと代わっていた。
 彼の右手は淫らに勃起した乳首を転がし、左手は優しく秘裂を愛撫している。
 垂れ流れ始めた愛液に塗れた左手を唇に持っていき、代わりに今度は右手を秘裂へと当てた。
 「ん、ちゅ・・・れろ・・・んぁ、んんっ・・・」
 慈しむように仄かに甘い指をしゃぶり、私の興奮は更に高まる。右手の親指を淫核へと押し当て、中指を膣口へと押し付ける。
 「んん、いい・・・よ。私の膣内に、挿れ・・・て・・・・・・んあぁっ!」
 とろとろになった秘裂にゆっくりと細い中指を挿しいれる。それは私の中で、彼の男性器へと変換されていた。
 「あっ、あっ、んぅ、くぁ、ぁあっ・・・あぁっ!」
 中程まで埋没した中指を出し入れし、親指は敏感な淫核を扱いている。
 その快楽は先ほどまでの優しい愛撫とは段違いな快楽を私の脳髄に叩き込む。卑猥なぐちょぐちょという音が部屋内に響いていた。
 「あぁっ、あっん、いぃ、いい・・・よ、くぁっ!」
 私の声も水音に比例して大きくなっていく。
 ここが防音設計にされていなければ、誰も彼もが何事かと駆けつけてくるに違いなかった。
 「はっ、あな、たっ! わ、私、くる・・・来てしまう!・・・ああっ!」
 純白のシーツに粘り気のあるシミを残し、更に腰の奥から段々と大きな波が襲ってくる。
 私の想像の中の王子さまも、そろそろ苦しそうな表情を浮かべ始める。
 「だ、だめっ! 腰ういてしま、う・・・あん、んっ、んっ、ひゃぁっん!」
 あまりの快感に背中が海老反りになり、足も硬直して爪先立ちになってしまう。
 秘部からは淫らな液体が手の勢いで飛び散り、左手は濡れたシーツを握り締めていた。
 「い、くぅ・・・イクイクイクイクイク、イっちゃうううぅぅぅぅぅ!」
 背中がこれ以上ないくらいに反り返り、想像の中の彼も絶頂を迎える。
 「ひぁああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
 同時に私も絶頂へと達し、秘裂からは尿ではない液体が噴出した。
 身体はビクビクと痙攣しており、中々海老反りから元に戻れない。かなり苦しい体勢なのだが、快感の余韻に浸された私には気にならなかった。
 暫くのあいだ秘裂からは断続的に潮が噴出し続け、数分後に何も出なくなってやっと私は緊張から解放された。
 「はぁ、はぁ、く、ふぅ・・・。やっと、終わった・・・」
 盛大に濡らしてしまったシーツに脱力した身体を沈みこませ、荒れた息を整える。長い金髪も振り乱されてシーツの上に広がっていた。
 今までだって、妄想をしながら自慰をしてきた。かれこれ10年のベテランだ。
 だが、今回のだけは何故かいつもよりも激しくなり、快感も激増していた。今までで最も気持ちがよかった。
 「(やはり、これが最後だと自分に言い聞かせていたからか・・・?)」
 そう考えつつ、眠気で微妙に重たい身体を動かしながらかなり激しく汚れたシーツを畳む。
 それを地下に城中の洗濯物を集めている専用のダストシュートに放り込み、ベット下にあった新たなシーツを手早く敷き直した。
 同時に自分の部屋の周囲の気配を索敵し、王女の秘め事を覗き見した不届き者が居ないかを調べる。幸いにも、この情事を目撃したものはいないようだった。
 「おやすみなさい。そしてさようなら、私の王子さま・・・」
 呟き寝床に倒れこんだ直後、私の意識は眠りの深遠に落ちていった。


 無骨でありながら軽量に造られた金属製の籠手を右手に装着する。部屋の壁に映る銀色の反射光に、思わず紺碧の瞳を細めた。
 城の鍛冶屋に造らせたオーダーメイドのブレストプレートは私の体型にぴったりとフィットしている。腰のスカートメイルも動きを阻害しないように絶妙な調節が成されている。
 後頭部で結ばれた髪の尾が腰のところで揺れている。結び目を確認した後、目元の周囲だけを覆う銀の仮面を装着した。
 これで私は“王女カレンディーナ”ではなく、“幸運のカレン”となる。・・・自分ではそこそこに名の通った剣士だとは思っている。
 ここは王都から北に少し行ったところにある小さな田舎町。そこの冒険者ギルドの一室だ。
 冒険者ギルドとは要は便利屋であり、王国内での危険な依頼をこなす私営組織だ。他の国では誇りある集団とか言われているようだが、少なくともこの国では単なる何でも屋だ。
 「さて、こんなもので大丈夫かな?」
 部屋に備え付けられている姿見で各部をチェックしていく。これが甘いと戦場で命を落とす場合もあるのだ。
 さて、王女である私が何故こんな辺鄙な場所にいるかといえば、単なる趣味だ。私は自分で言うのもなんだが、剣の腕にはそこそこに自信がある。試してみたいと思うのが人情と言うものだろう。
 この趣味を知っているのはセバスと理解ある影武者の一人、それとお母様だけだ。セバスは必ず止めてくるので、城を抜け出す時は彼を撒かなければ連れ戻される。
 今日はうまい具合にお母様が協力してくれて、ピーマントラップに彼が引っかかってくれたので撒くことができた。今頃は私の行き先を探す情報収集でもしているだろう。
 「うむ、バルマイトに刃毀れはないな。ルーンも問題なし」
 腰の鞘から取り出したのは、刀身全体に独特な魔法文字の刻まれた銀の長剣。銘を“バルマイト”と言い、過去の大戦で失われた魔剣バルムンクの贋作だ。
 ふと、視界の端に赤い光が映る。それはベットの横に置かれた幾何学模様が刻まれている魔石から放たれていた。
 「そろそろ時間か・・・」
 この魔石は術式によって特定のタイミングで発光させることができる。言うなればタイマーのようなものだ。
 私は質素な化粧台の上に置いてある羊皮紙を手に取って部屋を出る。勿論、盗人が入らないように鍵閉めは忘れない。
 ギシギシと音を立てる廊下を歩きながら、手元の羊皮紙に目を滑らせる。書いてあるのは私がこれから受けることになっている依頼の概要だ。
 「内容は魔獣退治、メンバーは4人。ランクは・・・A、か」
 普段私が受けるのは、比較的安全なCかBランクの依頼だけだ。しかし、今回はAランクの依頼を受けてみたくなったのだ。
 私は王女として、跡継ぎを産むまで絶対に死んではならない。そうであるのに、この依頼を受けてしまっている・・・私は自暴自棄にでもなっているのだろうか。
 「――っと!」
 考え事をしながら歩いていた為に、突き当りの扉に頭をぶつけそうになってしまった。慌てて立ち止まり、古びた木製の扉をゆっくりと開く。
 瞬間、耳朶を叩くのは酷く雑多な喧騒だ。
 「んだとコラっ! 喧嘩売ってんのか!?」
 「売ってんのはキサマだろうが!!」
 「オヤジー!こっちにビール寄越せ!」
 「こっちには鶏の丸焼き。レアで!」
 ギャハハハという観客の笑い声が響き、次いでゴガッという頬を殴る音が二つ鳴る。向こうの方では酒豪が麦酒を頼み、腹を壊して死にたい莫迦が肉を注文している。
 あまりの騒々しさに私は少し眉を顰める。しかし、嫌いではなかった。
 「カレン、準備は終わったのかい?」
 「全て問題なかった。ミルクを頼めるかな、マスター」
 はいはいと苦笑してミルクを用意している愛想の良い中年の男は、このギルド兼酒場を経営するマスターだ。人によってはオヤジだとか師匠と呼んでいる者も居る。
 細身の身体で大人一人分はある酒樽を持ち上げるマスターを見ながら、私は手近なカウンター席に座る。硬い金属部分がおしりに当らないので、スカートメイルはこういうときに便利だ。
 いつの間にやら目の前にあったミルクをちょびちょび飲んでいると、すぐ隣の席に誰かが着席した。
 「失礼、レイディ。・・・君がカレンで間違いないかな?」
 「貴方が探しているのが幸運のカレン、だというならな」
 ワインを注文しつつこちらに問いかける優男に、私は表情を変えずに答えた。
 私の答えに不敵に笑う男の装備は、一目で高価なものとわかる。私も装備には金を掛けているが、彼は恐らく高ランクの冒険者なのだろう。
 男にワインが出されるのを見計らって、私は口を開く。
 「そういう貴方は誰なんだ?」
 「おっと、どうやら私の知名度もまだまだのようですね」
 答えずに肩を竦める男が気に食わず、思わず仮面の下から睨みつけてしまう。
 彼はそれでも不敵な態度を崩さず、唇をワインで湿らせた。
 「申し遅れました。私はクラウス・フォレスティ。見ての通り森の民、エルフです」
 クラウスの指差した耳は確かに人間のものではなく、長く尖ったような形をしていた。
 そしてその名前に何か引っ掛りを覚えた私は、注意深く彼の姿を観察する。
 全身を覆う白のフルプレートアーマー。武器は持っておらず、半分に割ったような形の巨大な盾を背中に重ねて背負っていた。
 巨大な盾の色は、眩い銀。
 「まさか、“銀盾のクラウス”・・・?」
 「ご名答。よかったよかった、パーティーを組む相手が自分を知っていたほうが何かとやり易いですからね」
 そう言ってクラウスはニコニコと微笑みながら、ワインをもう一口呑み込んだ。
 “銀盾のクラウス”、Aランク依頼をこなし続ける俗にAランカーと呼ばれる冒険者の中でも上位の強さを持つ実力者だ。ちなみに私はBランカーだ。
 彼は特に防御力と突進制圧力に優れ、ミスリル製の防具たちは並みの攻撃では傷一つ付けられないのだ。
 「なるほど。今回の依頼は貴方のようなAランカーが出てくるほどに難しい依頼なのだな?」
 「そういう訳ではありませんよ。ただ、この依頼が出された村の村長とは知己でしてね」
 やはり彼は余裕の表情を崩さない。私はまあいいかと思い、残り二人のパーティーメンバーを探し始める。
 首を回して騒がしい酒場内を見渡せば、こちらに近づいてくる見慣れた人影を見つけた。ただし、それは城の中で見慣れているのではない人物だ。
 「マクスか、久しいな。お前もこの依頼を受けているのか?」
 「お久しぶりです、カレンさん。僕も一念発起、Aランクに挑戦することにしたんですよ!」
 柔和でありどこか冴えない顔の青年は両腕を曲げ、気合十分とでも言うように鼻息を荒くしている。
 彼は今年で冒険者暦3年という駆け出しだ。斯く言う私もまだ5年ほどしかないのだが、マクスとは彼が受けた初依頼の時からたびたびコンビを組んでいる。
 と言うか、3年の間に受けた依頼の中で彼と組まなかった依頼の方が少ないのではないのだろうか。
 「カレンさん。僕、絶対に役に立ちますからね! 見ててください!」
 「ふ、期待しているぞ」
 マクスに対して微笑を返してみれば、彼はやってやるとテンションを上げていた。心なし茶色の短髪が逆立ち、背中のマスケットが雄々しく光っている気がする。
 隣のクラウスが何なんだコイツと胡散臭そうな目をしていたが、マクスに気にした素振りは一切なかった。周囲の冒険者たちからも冷やかしが飛んできていたが、これもまた同様だ。
 「(お前は、いつまでも真っ直ぐなんだな・・・)」
 目を細めてマクスを見る私は、今から少し前のことを思い出す。
 それは一年前のある日のことだ。

 私とマクスは、その日の依頼も二人でコンビを組んでいた。特に苦労のない、素材回収の依頼だった。
 マスターに達成報告の手紙を出し、それぞれ村の宿の自室に戻ろうとした時だ。私は彼に呼び止められ、後で村の教会に来て欲しいと言われたのだ。私は特に何も思わずに了承して自室に戻った。
 部屋で武装を外して変装用の質素な綿のドレスに着替え、村外れの寂れた教会に向かった。そこで待っていたのは、強張った顔のマクスだった。
 彼は懐から小さな木箱を取り出して私に差し出し、緊張に震える声でこう言ったのだ。
 『ぼ、僕の…妻になってください!』
 それは紛れもないプロポーズ。木箱に入っていたのは、とても高価で美しいミスリル銀製の指輪だった。
 心当たりはこれまでにもあったのだ。マクスは私のことをやけに気にする素振りを見せ、時折薬草などを譲ってもらっていたのだ。
 当時の私は見合い相手と話したことはあっても、直接プロポーズされるのは初めてのことだった。仮面の下の頬が紅潮していったのを覚えている。
 しかしそれでも、私が返したのは『すまない』の一言だった。私は逃げるように背を向けて駆け出した。その背中に『僕は諦めませんから!』という声が聞こえていた。
 私はそれから三ヶ月もの間ギルドには赴こうともせず、あまりに大人しいものだからセバスには逆に心配されてしまった。そしてギルドに行ってみれば、マクスは皆がいる前で堂々と宣言したのだ。
 『僕は絶対に貴女に釣合うような男になって、貴女を振り向かせて見せます!』
 ここまでくると私は呆れやら感心やらが羞恥を上回った。だからマクスが、私の昔の約束を破ってもいいと思えるような男になったら、振り向いてやってもいいと、そう思った。

 「(そうだ。彼となら、いいのではないのか? 見ず知らずの貴族と結婚させられるより、私が良く知るマクスとなら・・・)」
 お父様もお母様も、私が本当に好きになった相手ならよほど酷い人物でなければ強硬な反対はしまい。漸くクラウスに気付いて互いに自己紹介をし合う穏和な青年を見て、私の頬は知らず紅潮していた。
 「マクス。この依頼を無事にこなすことができたなら、帰還したその日の夜に私の部屋に来い。話がある」
 「・・・・・・へ?」
 唐突に言った私の言葉に、マクスはポカンと固まってしまった。周囲も信じられないような顔で私を見ていた。
 やがてその言葉の意味を飲み込み始めたのか、彼は唇で私の言葉をなぞる。
 「・・・本当ですか? ホントのホントに? 夢じゃないですよね??」
 「何なら、来なくてもいいのだが?」
 「行きます! 絶対にこの依頼を完璧にこなして、カレンさんの部屋に行かせてください!!」
 どこかのネジでも吹っ飛んだかのようにマクスのテンションは一気に天元突破した。周囲の喚声や冷やかしも最高潮だ。
 隣でワインの最後の一口を呷ったクラウスは、不敵な笑みを浮かべながら生暖かい目で彼を眺めていた。
 と、そこで私は気付く。パーティーの最後の一人が現れていないことに。
 それが口元の表情にでも出ていたのか、カウンターの奥からマスターが一通の手紙を持って出てきた。
 「カレン。最後の一人は現地の村で待っているそうだ。先ほど連絡が入った」
 マスターの言葉に礼を言いつつ、ヒャッハーと喚いてちと壊れ始めたマクスを引き摺ってその場を後にした。


 ジメッとしてやや湿度が高く、霧に覆われて薄暗い森の中。森の奥深くから霧を発生させているこの森が、ニーブルヘイム王国の名物である霧の源泉だ。
 その中を私たちは気配を殺しつつ進んでいく。先頭にクラウス、その後ろに私と先ほど合流した鎚使い。ガンナーのマクスは周囲の索敵だ。
 「たく。ちったぁこの霧もどうにかならんのか? 森の木を全部ブッ倒してやろうか」
 「そんな事をしたらこの霧だけでなく、王国の全土の霧が消えてしまうだろうな。そうしたら王国の観光収入が激減し、国民の税率が上がるだろう」
 「むぅ・・・」
 私の横で馬鹿なことをのたまった脳筋の男が最後のパーティーメンバーだ。180はある身長に筋骨隆々な大柄の肉体、ボサボサの黒髪と無精髭で毛皮のベストを着ている。どう見ても冒険者というよりは山賊である。
 名前はガルド・グルードル。古株の多いAランカーの中でも特に古いベテランであり、実に20年の冒険者暦を誇っている。短く思うものもいるかもしれないが、死亡率の高いAランカーで20年はかなり長いほうなのだ。
 彼はこの森の入り口にある少数民族の住む村の住人で、父親がドワーフらしくその見た目以上に力が強い。背負った傷だらけの巨大なハンマーは、彼がAランカーに相応しいことをも証明していた。
 「それにしても、あのマクスという青年。とても冒険者暦3年とは思えないですね」
 こちらを振り向きつつも前への警戒を一切緩めていないクラウスが話しかけてきた。
 マクスは私たちからも見えない位置を移動し、周囲に危険な予兆がないかを警戒しているのだ。隠密術には自信がある私でもその気配は捉えきれず、どうやらセバス並みに腕を上げているようだ。
 「そうだな、私もマクスにはいつも助けられている。彼の銃弾で常に一筋の安心を貰っているよ」
 「―――ッ!?!?」
 急にマクスの気配が感じられるようになり、しかも酷く揺らいでいた。私は普段からあまり褒めたりしないので、いきなりで動揺したのだろう。
 どうやらそれに気付いたらしいガルドが、なにやら下品な笑みを浮かべて左手の小指を立てた。
 「ん? ん? お前さんと若造は“コレ”なのかいの〜?」
 「―――$%□=#¥|!?!?!?」
 後方の茂みが激しく揺れ、声にならない悲鳴のような何かの声が聞こえた気がする。マクスがあまりの動揺に身悶えているらしい。
 私はといえば頬が熱くなっているのがわかった。仮面で顔を隠していて良かったと、このときほど心底思ったことはない。
 「みなさん、ふざけてないで拠点の設営を手伝ってください! 拠点があるのとないのとでは色々と変わってくるんですよ」
 じゃれ合っているうちに今日の目的地に着いていたらしい。森の中の少し拓けた部分に立ち、クラウスがやや強い語勢で叱ってきた。
 今回の依頼は2,3日に跨って遂行されることになっている。お母様には既に了解を取っているし、予定されていた仕事も一週間先まで終わらせているので問題はない。
 「ガルド、力仕事は貴方に任せた。私は食事の用意をしている」
 「応。うめぇのを頼むぜ」
 テントや防護柵の設営は男たちに任せ、私は軽い調理の為に火を熾し始めた。ちなみにここに居ないマクスは、周辺の哨戒及び調査と罠の設置係だ。
 手持ちの紅い魔石の小さな欠片を、枯れた枝葉などを敷き詰めた薪に放り込む。たちまち枯れ枝は燃え、立派な焚火へと姿を変える。その焚火を覆うように折畳み式の金属製台座を置いた。
 そうして即席の竈を作り、携帯鍋をその上に置いてテキパキと干された材料を入れる。それから水魔石と呼ばれる水を溜める魔石からそれを注げば、後は待つだけ。簡単スープの出来上がりだ。
 「・・・?」
 ふと、誰かの視線を感じて辺りを見回した。やがて、私の視線は右手側の木々の隙間へと固定される。
 注視すれば段々とその遥か向こう側まで見えてくる。冒険者は目が良くなければ務まらないのだ。
 およそ1km先にある山肌から突出した白い岩塊。その上にお行儀良く鎮座し、こちらを見つめていたのは――純白の狼だ。
 「エクス・・・」
 互いに視線が交錯したような気がして、私の口から言葉が漏れた。エクスはわふ、と一声鳴く動きをし、岩塊から飛び降りて視界から姿を消した。
 「わぁ。それおいしそうですね、カレンさん!」
 横合いからいきなり声を掛けてきたのはマクスだった。私ははっと我に返り、調理中だったのを思いだした。
 慌てて鍋を火から下ろせば、スープはいい具合に煮えていた。トケイウサギモドキの干し肉はうまく戻ったようだ。
 「この依頼、平穏無事に終わって欲しいな・・・」
 私がスープをそれぞれの取り皿に注いでいると、不意に彼の呟きが耳に入ってきた。
 「なんだ、そんなに私が欲しいのか?」
 「ち、ちちち違いますよ! いや、別に欲しくないとかそういう訳でも・・・!!」
 私の指摘に彼は赤くなって取り乱しはじめる。あわあわと手を振る姿は酷く滑稽で、思わず笑みを零してしまう。
 それで一時の緊張が解けたのか、マクスは真剣な面持ちで話し始めた。
 「カレンさん、僕は貴女にだけは怪我とかをしてほしくないんです。好きな女性が苦しむ姿なんて、絶対に見たくないんです」
 一瞬、取り皿を落としそうになった。
 なぜこの青年は、ここまでハッキリとモノを言えるのか。飾らない言葉はそれだけ私の心を揺らす。
 羞恥とよく判らない感情に鎧にフィットしているはずの胸が苦しくなる。彼の顔を直視できなくなり、私はそっぽを向いてしまう。
 「・・・問題ない。私は“幸運のカレン”だ。今回の依頼も何事もなく終わるさ」
 「うん、そうだね。だけど、もし危なくなっても、僕が護るから」
 「・・・私より弱いくせに、生意気な」
 そう言い残すと、彼はつい最近発売されたばかりの最新式のテントに悪戦苦闘しているガルドとクラウスの元へと歩いていく。ひっそりと呟いた照れ隠しの独り言は、幽かな霧の中に霧散した。
 “幸運のカレン”。私の異名はこれまでの依頼において、私の所属するパーティーがたとえどんな危機に陥っても、全員が生還していることに由来するものだ。
 まるで何かに護られているかのよう。そう思ったのは何度だってある。実際に冒険者になった最初期においては、今思い返せば誰かに護られていた節がある。
 「あれは、セバスの仕業だったのか・・・?」
 スープの湯気が刻一刻と減る中で、そんなことを考えながら初日の夜は更けていった。・・・・・・さっさとテントを張らないと完全に冷めてしまうぞ、男ども。


 緊張で汗が吹き出る。額を伝う液体が仮面を濡らす。
 「みなさん、周囲に異常はないですか? 奴の痕跡は絶対に見落とさないでください」
 霧深い森の中を進みながら、クラウスが小さな声で囁く。
 今回、私たちが受けた依頼は魔獣の討伐依頼。依頼者はガルドの住む村の長老からだ。
 「あったりまえだ! 従妹のレミも連れ去られてるんだ。絶対に見落とすもんかよ!」
 隣を歩くガルドは、語勢を強くしながらもひっそりと喋るという高等技術を見せていた。
 私たちが今探索している場所は、昨夜張った拠点からは1kmほど離れた森の中だ。今回の討伐対象となっている魔獣の縄張りの中でもある。
 「そうだな。オニグマの奇襲は脅威だ。マクスが広範囲を警戒しているとはいえ、慎重に行こう」
 私の言葉に皆が頷く気配がした。周囲の茂みに隠れ、音の反射で警戒を行っているマクスにも聞こえているはずだ。
 オニグマ、それが今回の対象の名だ。正式名称はセイゴウデモンオオヒグマと言う。オニグマは冒険者の間などで呼ばれている別称である。
 オニグマは直立すれば身長が4mにもなる大型の魔獣だ。名前の通りに外見は非常に熊に近いが、実際はオークやトロールなどの鬼族の仲間だ。
 性質も鬼に近い為に非常に凶暴であり、個体の強さに関しては正に悪魔(デモン)並だ。最も、鬼本来の強みは集団行動にあるのだが。
 「それにしても何故、この森の最奥にしか生息していないはずのオニグマが、人里近くまで出てきたのでしょうか?」
 「そんなの知るかよ。大方、縄張り争いに負けた雑魚だろうよ! クソ忌々しい」
 疑問を投げかけるクラウスにガルドが口汚く吐き捨てる。唾が飛び散って少々下品だ。
 普通ならオニグマは討伐依頼も出されないような人の住まない地域に暮らしているはずなのだが、今回の対象は少数民族の村のすぐ近くに陣取ったのだ。
 「男の貴方たちはさぞ気楽だろうな。たとえ負けても、楽に死なせてもらえるのだから」
 「カレン。気が起っているのは判りますが、そういうのはやめてください」
 「・・・すまない」
 度重なる緊張と奴への憤慨から思わず皮肉を言ってしまったが、即座にクラウスに窘められてしまう。
 生殖の為にあらゆる生物の雌を攫うために、村の女たちが幾人も被害に遭っているという。攫われれば、女としての地獄が待っているのだ。一人の女である私からすれば、本当に忌々しい。
 と、

 ――ピイィィィィイィィィィィ・・・
 
 「――っ!?」
 聞こえてきたのは反響しているかのような甲高い音色。周辺を監視していたマクスからの警告の笛だ。そしてそれは、彼がオニグマを見つけたと言う証でもあるのだ。
 「11時の方角! 陣形は逆剣十字!!」
 「応!」「わかっている!」
 流石はAランクのトップランカー。クラウスは特殊なイヤリングを通してしか聞こえない音色を聞いて、即座に陣形を指示している。
 最前衛にクラウスが立ち、その少し後ろに私とガルドが並ぶ。更にその後方にはマクスがマスケット銃を構えてこちらを窺っているはずだ。これは行軍のときにも使用した陣形だ。
 やがて、私たちの正面から地響きのような足音が聞こえてくる。ズシン、ズシンと、まるで腹の底に響くかのようだ。
 進行方向にあるらしい木々が次々と倒れていく音がした。そして、奴は姿を現した。
 「GUWOOOOOO!!!」
 オニグマは猛々しい吼え声を上げ、四足歩行から戦闘態勢である二足歩行へとすぐさま体勢を変えた。足から頭まで、優に5mは超えている大きな雄だ。
 灰に血を混ぜたかのような黒い毛皮に包まれ、ずんぐりとしていながら内には凄まじい力を持つ食物連鎖の最上位。人間の手のような五指の前足には黒光りする長い爪があり、股間部には剥き出しのグロテスクな生殖器がぶら下がっていた。
 「行くぞ!!」
 その圧倒的な威圧感に圧されず、クラウスは両手の盾を前に出してタックルを仕掛けた。突進する盾に対してオニグマはその太い腕で殴りつける。
 凄まじい衝突音と破砕音が響き渡りその衝撃を物語る。しかし砕けたのはクラウスの盾でなくオニグマの爪だった。
 「まだまだ!」
 痛みに咆哮する敵に対してクラウスの突進はまだ終わっていない。彼はその運動エネルギーをオニグマの腹部に叩きつける。
 巨体を誇るオニグマでさえその威力は殺しきれず、後ろに向かって蹈鞴を踏んだ。
 即座にクラウスは後ろへと飛び退り、スイッチして今度は私が躍り出る。
 「セイヤァッ!」
 気合一閃。白刃を閃かせ、開けた脇腹をバルマイトで斬りつける。
 退魔の加護が刻まれた刃は易々と分厚い毛皮を斬り裂き、内側の肉を筋ごと断ち切った。
 ブシュッと噴出した鮮血が草を染める。
 「次っ!」
 「応よ!」
 後ろに下がる私に応えたのは大金槌を振りかぶって走り出していたガルドだった。
 だが、入れ替わるその一瞬の隙に巧く体勢を立て直せていたオニグマも、その巨碗を振り上げていた。
 腕と槌では生身の腕のほうが断然早い。その五指がガルドの髭面に風穴を開ける直前、
 「僕を忘れないでくださいよ!」
 後方から飛来した銃弾がオニグマの右目を抉り取っていた。マクスのマスケット銃から放たれた銀の弾丸だ。
 強烈な痛みに怯んだことと重心の端に強い力を受けたことで、オニグマは悲鳴を上げながら後ろへと上体を仰け反らせた。
 「貰ったあぁっ!!!」
 完全に無防備となってしまったオニグマの頭部に向かって大質量の金属塊が叩きつけられた。
 骨と肉が砕け散る嫌な音が響き、その頭部は生物ではありえない形に変形していた。同時に赤い鮮血が撒き散らされる。
 オニグマの肢体はゆっくりと後ろへと倒れていき、轟音を響かせて地面に倒れこんだ。
 ぴくりとも動かない肉体からは既に命の灯火が掻き消され、流れ出る血が大地に染み込んでいく。
 「(・・・なんだ、こんなものなのか)」
 Aランクという難題のボスである筈のオニグマの呆気ないほどの幕切れに、私はどこか落胆を感じずにはいられなかった。
 クラウスは既に退治の証である耳の切取りに掛かっており、ガルドは今までの怒りをぶつけるようにゲシゲシと屍を踏みつけている。
 私の後ろの叢がゆれ、所々に葉っぱを引っ掛けたマクスが現れた。
 「やりましたね、カレンさん!」
 「・・・ぁ、ああ、そうだな。これでお前は私の部屋を夜に訪れる権利を得たわけだ。嬉しいか?」
 「そ、それはもう最高に! ・・・て、あわわわ!」
 思わず口を衝いて出てしまったからかいに、マクスは予想以上に反応してうろたえている。
 「・・ぷっ、あは、はははは」
 「なっ、笑うことないじゃないですか!」
 その様子が可笑しくて、私は思わず吹き出してしまう。彼はお気に召さなかったのか膨れっ面になってしまった。
 それがまた余計に私を笑わせているのだと、彼にはわかっていないのだろうか。
 ひとしきり笑った後で、私はマクスへと向き直る。仮面の下に真剣な色を悟ったのか、彼も表情を引き締めていた。
 今はまだはっきりとはしていない。だけど、今の正直な気持ちを伝えようと口を開く。
 「マクス、私は―――っ!?」
 「な、何っ!?」「ぐぉ、な、なんじゃこりゃぁ!」「――…ひっ!?」
 ――が、それは果たされなかった。何故なら森の奥へと続く方向から、大気が凍りつくほどに濃密な殺気がぶつけられたからだ。
 クラウスは反射的に盾を構え、ガルドは驚きに顔が変なことになっている。マクスに至っては恐怖で完全に凍り付いていた。
 私もバルムンクを構えて臨戦態勢に入ろうとするが、今までに受けたことのない重圧に足がガクガクと震えてしまっている。
 「・・・・・・」
 ちらりと、マクスの方を見遣る。しかし、私を護ると言ってくれたマクスは未だに動けずに居た。
 銃を持った右腕がぴくぴくと動き、瞳もそちらを向いているのだが、実質何も行動しては居ない。ただただ恐怖に打ちひしがれているだけだ。
 その姿に私がまず感じたのは軽い失望の感情だった。しかし、私の頭はすぐさま護らなくては、という意志に満たされた。マクスは私よりも弱い人間なのだから、私が護らなくては。
 「マクス、後ろに下がっているんだ。安心しろ、私が護る」
 「――ッ!! ・・・ぼ、僕も貴女を護ります!」
 よく通ると評判の私のアルトの声が脳へと通ったのか、漸く彼は再起動を果たす。そして決意したように答え、一歩下がりながら肩に銃を構えた。
 私は唇の端を歪めながら、再び正面へと臨む。もう足は震えていない。クラウスもガルドの顔も既に冒険者のそれだ。
 勇ましい気持ちをかみ締める。私たちは強いのだ、恐れることなどありはしない!
 「さぁ、来るな来い。叩き斬ってや――な、に・・・?」
 その無根拠な虚勢はすぐさま萎んでしまうこととなる。立てていた剣先が、いつの間にか地面に接していた。
 目の前に無言で現れて直立したオニグマの身長は軽く6mを超え、7mへと達しようかと言うほどだ。纏った毛皮には汚れ一つなく、瞳の鋭さは爪の鋭さと見紛うほど。
 しかし、それはそれほどの問題ではなかったのだ。
 「そんな、馬鹿な・・・。“雌”・・・だと?!」
 言葉を漏らしたのはクラウスだろうか。
 そう、現れたオニグマには雄の象徴であるはずのグロテスクな生殖器がなかった。
 年がら年中発情期で常時勃起し続けているオニグマの生殖器は、常に剥き出しの状態のはずなのだ。それがなく、切り取られたような傷跡もないと言うことは、かのオニグマが雌である証左なのだ。
 本来なら“雄”しかいないはずのオニグマたち。その中に存在するたった一頭の“雌”。しかし、それは別段、彼女にとって何の苦労もないことだったのだ。
 「雌のオニグマだと!? SSランク級じゃねえか!!」
 悪態を吐いたのはガルドだった。
 冒険者の受注する依頼にはランクがある。D、C、B、A、S、SS、SSS、Gという風に八つに分類されており、SSランクとは上から三番目の難易度だ。これは主に飛龍や最上級悪魔を討伐するときの難易度である。
 つまり、雌のオニグマはそれ単体で龍族や魔族に匹敵する力を持っているということなのだ。
 「■■■■■■■■−−−−−−−!!!!!!!」
 「みなさん、私が防御します! 早く下がってく――」
 既に衝撃波と化している咆哮に対してクラウスが叫んだ瞬間、その声はゴッッッという轟音の中に消え去った。
 クラウスは文字通り消え去ったのだ。私たちの目の前から、永遠に。
 「ク、ラ・・・ウス?」
 それがどうしても信じることができなかった私の口から、震えた声が零れ落ちる。
 先ほどまでクラウスが居たはずの場所には巨大な黒い腕が存在していた。霧は衝撃によって辺りから完全に吹き飛ばされ、視界が急にクリアになっていた。
 そこには直径1mほどのクレーターが造られ、その底は大量の紅い液体に満たされていた。今まで何度も嗅ぎ慣れた匂いが漂ってくる。
 5mは離れた位置に居た筈のオニグマは、その巨碗をゆっくりとどかす。その下にあったのは潰したトマトみたいな何かだった。
 「嘘、だろ・・・?」
 同じAランカーであり、その強さを十分に知っているガルドであるが故に、その光景は余計に信じがたいことであった。
 私たちの先頭に立っていたクラウスは、防具ごと叩き潰されたのだ。
 「■■■■■■■■−−−−−−−!!!!!!!」
 雌のオニグマが再び咆哮する。それは絶大なる恐怖を以って、私たちの心を殺しに掛かる。
 敵の前であるというのに、私は棒立ちになるしかなかった。しかし、隣で鳴ったドンという四股を踏む音に引き戻された。
 「俺は誇り高きドワーフの戦士だ! たとえ半端者でも、敵に怯えてちゃ話しになんねえ!!」
 Aランカーとしての意地と誇りで無理やり立ち直ったガルドの叫びだ。
 私も再び剣を構え、後方で立ち尽くすマクスへと叫ぶ。
 「マクス、お前は今すぐに村へ走れ! 高ランク冒険者たちを掻き集めて来るんだ!!」
 「だ、だけどそれじゃあ、カレンさんが殺されてしまう!」
 彼の声には悲痛な響きがあった。私はマクスに、惚れた女を置いて逃げろと言っているのだから。
 「だが! 誰かがコイツの存在を知らせなければならない!! この中ではお前が最も素早く、最も隠密術に長けている!」
 「だけど・・・!」
 ぐずぐずとしているマクスに、私はふっと表情を崩す。そして穏やかな笑みの横顔を向けながら、言った。
 「マクス、安心しろ。私は死なない。私はお前が惚れた女で、“幸運のカレン”だ。お前が私の部屋を訪れてくるまで、絶対に死んでやるものか」
 「判り、ました。・・・っ、すぐに戻ります! 御武運を!」
 震える足でマクスはバックステップで後ろの森へと消えていった。
 私は正面に向き直り、正眼にバルマイトを構えた。律儀に待っていてくれたらしい雌のオニグマは、狂暴な面に底意地の悪い嗤いを貼り付けていた。
 「行くぞ、ガルド。死ぬなよ」
 「はっ。お前ぇさんとあの小僧の愛憎劇を見るまでは死ねねえなぁ」
 お互いに目で合図し、同時に左右へと駆け出した。私は右、ガルドは左だ。両側からの挟撃でダメージを狙おうというのだ。
 「でやああ!!」
 「うおりゃあああ!!」
 グルルと白い吐息を吐くオニグマへと、私たちはその得物を渾身の力で叩きつける。だが、その刃と鉄塊は届かない。
 オニグマが両腕を左右に予備動作なしで振り抜いた瞬間、私たちの武器は攻撃力を失っていた。私のバルマイトは刀身が叩き折られ、ガルドの大金槌はヘッドが粉砕されていたのだ。
 「――がぁっ!」
 「きゃあっ!」
 思考に一瞬の空白が出来、気付いたときには頭を鷲掴みにされたガルドの肉体が私を打っていた。
 数mを転がされ、うまく呼吸が出来ない。肘を付いてようやく顔を上げてみれば、そこには見たくもない光景が広がっていた。
 「があああああぁぁああああぁぁ!!!!! ぎ、げがあえああああああああアアアアアあああアあああ!!!!!!」
 「ガ、ガルドおおぉお!!」
 オニグマの五指が、ミシミシと音を立ててガルドの頭部へと喰い込んで行く。想像を絶する痛みに、ガルドは絶叫していた。
 数秒の後、ぐしゃり、という肉が潰れる音と共に彼の体から力が抜けた。時折ビクンビクンと痙攣しているのは、頭が潰された死体特有の動きだった。
 その手が離されると、宙に浮いていたガルドはゆっくりと地面に崩れ落ちた。
 「ガル・・・ド?」
 先ほど自分が命を奪ったオニグマのように、潰れた頭部から流れ出る血が、大地に染み込んでいく。
 「あ、あぁ・・・ぅあ・・・・・・」
 死への恐怖、待ち受ける未来への絶望。私の視界は涙で歪み、股間からは暖かい液体が漏れ出した。
 唸り声を上げるオニグマが、酷く緩慢な動きで私に近寄ってくる。そしてその手で、怯える私の頭を一撫でした。
 そう、一撫でで私の頭は地面に強く叩きつけられ、その意識が刈り取られていた。


 天井から滴る水滴が、私の頬を濡らした。
 「ん・・・」
 その冷水の冷たさによって意識が浮上させられる。同時に、他の五感が正常に働きだして外界の情報を一気に送り込んできた。
 まず感じたのは異臭。長くここに居たのか嗅ぎ慣れているようで、されど思い出すのを拒否しているかのように思い出せない。・・・むしろ、もっと嗅いでいたかった。
 次いで耳から入る異音。ぐちゃぐちゃという濡れたものを叩くかのような音と、獣の咆哮のような甲高い嬌声が聞こえてくる。・・・どちらかと言えば、子守唄に近かった。
 口の中に感じたのは異味。吐き気を催すほどに苦くエグく、ドロリとしたそれを意識せずとも身体は吐き出していた。・・・だが、そこまで不味くはなかった。
 最後に私は瞼を開く。仮面越しではない、生身の紺碧の瞳に映し出されたのは、雄と雌の交わりだった。
 「なっ――!?」
 「いいよ! いいよ! 気持ちいいよぉ!! もっと突いて・・・もっと滅茶苦茶にしてえ!」
 まるで臨月の妊婦のように腹の膨らんだ少女が、四つん這いになって後ろから熊に貫かれていた。それも私の目の前、数mの距離でだ。
 少女は乳首の黒くなった大きな乳房から母乳を撒き散らし、舌を突き出して気持ち良さそうに喘いでいた。
 「私のオマ○コ、獣チ○ポの形にされちゃったのぉ! あひぃ♪ あん、あぁん♪ ガルドお兄ちゃんごめんねぇっ、ああっ!」
 よく見れば後ろから圧し掛かっているのはオニグマだった。体長が2mに届かない仔熊は、涎を垂れ流しながら腰を振っている。
 「お兄ちゃんにあげたかった処じょぉおおっ! あぁっ! こんな魔獣にあげちゃったぁっ! 憎いけど、んあっ! でも、気持ちいいのおおぉっ♪」
 この少女が何を口走っているのか、私には理解できない。なぜそんなにも屈辱を甘受しているのか!!
 そんなことを考えていると、急にオニグマのピッチが早くなった。結合部からは淫液が飛散し、私の顔にまで飛び散ってくる。
 「ああぁん! 獣チ○ポ膨らんできたぁっ♪ 射精(だ)すの? 射精しちゃうの?! 射精してよ! あぁん、膨らんでるぅ♪」
 少女も絶頂が近いのか声のボリュームが跳ね上がり、更には自分から腰を振っておねだりまでし始めていた。
 オニグマの巨大な生殖器によって彼女の股間の辺りには不気味な盛り上がりがあり、それは不自然に脈打っているのが見て取れた。
 「でっかい獣チ○ポいいのぉっ♪ あぁっ、ふぁん! 孕んでるのに、んはぁっ、子宮に赤ちゃんいるのに膣内(なか)にちょくせつ射精されちゃうのおおぉぉっ!!」 
 見たくもないのに、私はその光景からどうしても目が離せない。手で顔を覆うなり、顔を背けるなりすればいいはずだ。拘束なぞされていないのに、私はそれを脳に焼き付けている。
 「イ、ク・・・イクイクイクイク♪ 妊娠マ○コイクううぅぅぅ♪ く、んあああアああアアアあぁぁァぁァァぁぁーー・・・!!!!!」
 オニグマが腰を限界まで押し込むと同時に、瞳を裏返しながら少女は獣のような咆哮をあげる。いや、雌の獣そのものだ。
 こちらにまで聞こえるほどの射精音が響き、収まりきれなかった精液が結合部から大量に噴き出す。飛び散った精液が私にまで掛かっているのに、私はそれを避けようとすら思えなかった。
 やがて長い射精が終わったのか、オニグマは少女の上から退いた。ずるりと生殖器が引き抜かれるときに少女は一度痙攣し、そして膣から大量の白濁液を吐き出していた。
 「あ・・・・あぁ・・・・・・・・ひぎぃっ!!」
 「な、なんだ!? 今度は何なんだ!」
 余韻から放心していた少女がいきなり膨れた腹を抑えて悲鳴を上げた。私は思わずうろたえてしまう。
 「う、ま・・・産まれるぅ! 産まれちゃううぅっ!! 私の赤ちゃん出てきちゃうのおぉお♪」
 先ほどの交わりが出産の引き金となってしまったらしい。少女は痛みに顔を歪めながら、だが声には淫靡な艶があった。
 「おほおおぉぉぉ!! 出る、出るぅう! 膣内で暴れて出てこようとしてるのおぉっ♪」
 仰向けで蛙のように股を開きながら少女は快感に叫ぶ。そしてその股から赤ん坊が顔を覗かせた。
 「・・・え?」
 黒い鼻。黒い毛皮。鋭く光る牙。次々とその姿を現していく。それは私が間抜けな声を上げるには十分すぎる衝撃だった。
 「またイクううぅぅ♪ 赤ちゃん出産しながらイッちゃううううぅぅぅぅ!! イ、クううううウううぅゥぅぅゥゥぅうぅ!!!!!」
 バケツを引っくり返したように羊水と淫液を噴き出しながら、小さな赤ん坊が外界へと生まれ出でた。それは人の子ではなく、熊の仔だった。
 「あ、はぁ。産まれた、私の赤ちゃん♪ 私、の・・・・・・」
 自分とまだ臍の緒で繋がっている熊の仔を、少女は信じられないような眼で見ていた。私には、何も喋ることはできかった。
 「え・・・どうして? なんで、アイツらなの? 私の赤ちゃん、は・・・? そんな・・・ちがう、私はヒト・・・ケダモノ?・・・イヤ・・・イヤ、イヤ、イヤ、イヤイヤイヤイヤイヤイヤあああアアああぁァぁァァぁぁぁーー!!!!」
 絶望の叫びを上げ、彼女は糸が切れたように地面に倒れこんだ。胸は上下しているが全身はほぼ完全に弛緩し、その瞳に光は一切感じられなかった。
 『なんや。今回の雌はたった一回で壊れてしもうたのか。最近のヒトは弱いなぁ』
 「だ、誰だ!」
 倒れ伏す少女の向こうがわから聞こえてきたのは、独特なイントネーションを持つ女性の声だった。
 薄暗い闇を凝視していると、私たちが敗北した巨大な雌のオニグマがのっそりと現れた。
 「貴様・・・ッ!」
 『ほう? でもな、そんなに殺気を剥き出しにしてもええんか? ここはあたしらの巣やで』
 「・・・っ!?」
 先ほどまで目の前で行われていた情事に気を取られ、私はここが何処なのか気付いていなかった。
 改めて辺りを見回せば、天井からは白い氷柱の下がる洞窟だった。所々の壁がぼんやりと光っている為に、洞窟内の光量は申し分ない。
 そして私が察知できる範囲内だけでも、奴らの気配は百近い。常識を何処かに蹴飛ばしたように凄まじく大きな群れだ。
 「くっ――・・・え?」
 とにかくこの場から逃げ出さなくてはと思って立ち上がるが、体重を支えきれずに膝が曲がってすぐにストンと座り込んでしまう。
 「く、脚に力が入らない・・・!」
 何度やってみても結果は同じ。まるで生まれたての赤子のようにその場から動くことはできない。そして十回を数えたとき、偶然なのか崩れ落ちた際に小さな小石が私の秘裂を掠った。
 途端、大きな波が私を襲った。
 「―――っっっっっ!? か、はぁっ・・・」
 『かははは! たったそれだけでイってしもうたのか。随分と淫乱なんやなぁ』
 「ち、が・・・・」
 あまりにも突然に達してしまった為に、全身が痙攣を繰り返している。ひきつけを起こしたみたいに呼吸も儘ならなかった。
 歯を剥き出しにして嗤うオニグマに言い返してやろうにも、舌すら痙攣して喋ることはできなかい。そして気付けば、私の周囲には多数の雄のオニグマたちが居た。
 『おまえたち、赤子を育成室に連れて行け。こっちの壊れた雌は繁殖房にでも放り込んどき』
 雌のオニグマはこの群れのリーダーなのだろう。彼女の命令に比較的大きな成体の雄たちが律儀に従っていた。
 熊の仔は大事そうに抱えられて洞窟の奥へと連れて行かれ、先ほどの少女は首を咥えられて別方向に引き摺られていった。それでも、少女の反応は一切なかった。
 「おまえ、ら・・・あの少女を、どうするつもりだ・・・!」
 『どうするも何も、死ぬまでウチらの仔を孕んでもらうだけや』
 「・・・っ!?」
 漸く役目を果たし始めた肺が、再びその仕事を放棄した。
 何を判りきったことを。雌のオニグマの顔はそう言っていた。
 『それと、お前さんにも孕んでもらうで。ウチらの仔をな』
 「なっ・・・! うわ、やめろ! 何を――ひ、ひあああああああぁぁっ!!!!」
 彼女がそういった途端、すぐ近くに居た成体の雄が私に乗りかかってきた。私は抵抗するが、易々と銀のブレストプレートを引き剥がされてしまった。
 そして雄はまろびでた豊満な乳房にしゃぶりつく。再び絶頂の突き上げられた私は嬌声を上げてしまう。
 「やめ、やめて・・・イって、イってるからぁああああああああ!!!」
 今度は勃起した乳首を甘咬みされて達してしまう。意思に反して反応してしまう肉体に私は戸惑いを隠せない。
 「お、お前ら・・・ああっ! 私の身体に、何を・・・か、あああああ!!」
 『なに。お前さんが気絶している間に、若いもんがお前の口を犯し続けていただけの話や。コイツらの精液には、発狂するほどに強い催淫作用があるしなぁ
  あ、安心せいや。まだ誰にもあんたの純潔は奪わせてへん。今のところは処女やな』
 連続で達し続けてしまう私を眺めつつ、雌のオニグマは愉しそうに言いのけた。
 「そん、な・・・うぶぉ、んごっ、んん〜〜〜!!」
 呆然として開いてしまった私の口に、別の雄の生殖器が押し込まれる。そして唐突にピストンをはじめた。
 人間のソレとはかけ離れた形状の長い肉棒が私の喉奥を殴打する。嘔吐反射で喉が蠢動するのが気持ちがよかったのか、その速度は増すばかりだ。
 「んぶっ、ぶぉっ、おぐっ、ぢゅぶ、ん、んん〜〜っっっっっ!!」
 苦しくて仕方がないというのに、それにすら反応して達してしまう。元々極度に興奮していたらしい雄は、更に喉奥に押し込んで粘性の高い精液を吐き出した。
 「んごぉっ! ぶぶっ、んぐぅううううう!!!!」
 またしても達してしまう。食道に直接吐き出された精液の量は膨大で、胃はおろか鼻腔すら並々と満たしていた。
 生殖器を引き抜かれた口から大量の精液を吐き出した。更に気管にも入り込んでいた為に激しく咽る。
 「ごほっ、げほっ、が、はっ。なんで、私がこんな目に・・・」
 鼻から生臭い液体が滴るのが判る。粘膜に張り付く精液は吐き出しきれないのだ。それが惨めに思え、両目から涙が溢れてきた。
 正面で私が汚されていくのを愉しんでいた雌のオニグマは、口の端を捻じ曲げて高らかに嗤った。
 『そんなん簡単な話や! お前さんの属性が“王”だからや! なあ、第一王女(プリンセス)?』
 「――ッ!? なんでそれを?!」
 私がこの王国の王女であることを、こんな獣たちが知っているはずはない。私は驚愕を隠せなかった。
 『獣舐めんな。あんたと王女の匂いが全く同一だったからや。それに“王”属性持ちかは、気配を見れば簡単に判るし』
 「くっ・・・」
 私の持つ“王”という属性。それは非常に珍しいものだ。偉い学者によれば万人に一人だとか。
 そもそも属性とは普通はそんな簡単にわかるものではない。一般人の場合は知らない場合が多い。しかし、冒険者の場合はたとえ本人が知っていても誰かにソレを教えることはない。
 属性を知られれば弱点を知られるのと同義であるし、元々ニーブルヘイム王国の風習で忌避されるべき事柄なのだ。
 『恵まれた天運と強靭な肉体が生まれやすい“王”属性の血。あたしらはその血が欲しいんや。
  あんたを見つけた15年前から、あたしらは計画を立てていたんや。気付かなかったんか? あたしらが人里近くに無意味に縄張りなんか張るもんか。ま、副収入も大量やったけどな』
 「貴様っ・・・!!」
 “王”属性の血がその血に混ざるだけで、その子孫は例え属性が違っていたとしても強い肉体と強運を得易い。
 この畜生はただそれだけの為に、幾つもの悲劇を生み出していたのだ。・・・いや待て。
 「・・・だが、私がここに来る保障はなかった筈だ。来なければ全て無意味に終わっていたんだぞ?」
 『・・・・・・・・・あ』
 まさかこの雌のオニグマ、全く考えていなかったのではないだろうか。それぐらい、酷く間抜けな面を晒していた。
 『煩い煩い煩い! 無駄話はお仕舞や! おまえたち、もうお預けはせえへん。コイツを壊したれ!』
 「なっ! やめ、や、あああっ!! そんなものを押し付け、イ、くぁああああっ!!」
 雌のオニグマの掛け声と同時に、周囲の雄たちが一斉に私に殺到してくる。そして所構わずそのグロテスクな生殖器を擦りつけ始め、私の体が先走りで濡らされていく。
 全身を襲う刺激に私は休みなく絶頂し続けてしまう。ふと気付けば、私を囲む雄の中でもとりわけ大きな雄が、私の股座に身体を押し込んでいた。
 明らかに人間のサイズを超えた生殖器の鈴口が、先走り汁を滴らせながら膣口に当てられる。雄はそのまま腰を前に押し出し始めた。
 「やめろ・・・いやだ、やめてくれ! 誰かたすけて! やめ、やめろおおおぉぉぉ!! く、はああああああぁぁぁぁぁ!!!」
 ブチブチと何かを引裂く音と共にオニグマの生殖器が私の純潔を貫く。生殖器が性感帯である子宮口に強く叩きつけられた為に、私は今までよりも大きく絶頂してしまう。
 あまりの苦痛に涙が止め処なく零れ落ちる。膣道の部分は外から判るほどに膨らみ、決して少なくない量の血が流れている。しかし、雄は容赦なく腰を動かし始めた。
 「や、やめ、ああっ! ふ、くぅ! うご、く・・・な、ああああぁぁっ!!」
 痛みしかないはずなのに、私はまたイってしまった。だが雄は止まらない。
 私を犯す雄以外の雄たちは今は離れてこちらを窺っていた。自分で性器を擦っているものもいる。
 「い、や・・・んあっ! ケダモノに犯されて、く、うぅっ! それ、をおぉっ! 見なが、ら、ケダモノがっ、あっ、あぁっ! オナ、オナニー、してるうぅっ!!」
 自分がレイプされ、それを他者に見られてしまっている。イヤなのに背中をぞくぞくと何かが駆け抜ける。
 「あっ、はぁっ、ぁぁっ、あぁあっ! またイク、イってしま、ふぁっ! う・・・うあああぁぁぁぁっっ!!」
 オニグマの精液で発情した身体はどこまでも際限なく達してしまう。連続絶頂による快楽が私の頭を冒しはじめた。
 「だめ、だっ! あぁっ、はぁ、感じては、ぁんん・・・だめなのに! オニグマチ○ポ気持ちいいっ! くはああぁぁぁぁっっ!!」
 人間ではありえない力強いオニグマのピストンに、遂に私はその身を委ねてしまう。箍が外れたように快楽が一気に流れ込む。
 私を犯す黒い獣がニタリと嗤った気がする。ピストン運動が更に激しさを増した。
 「そんな、激しっ! あっ、ぁん、くぅ、あっ、あっ、はぁっ、しきゅう、こうっ! あぁっ、当るぅっ!」
 オニグマの生殖器がより強く子宮口を抉り、強い快感が脳を焼く。そこを突かれる度に私は小さくイき続けているのだ。
 舌をだらしなく垂らして喘ぐ私の顔に、不意にオニグマが顔を近づけてきた。
 「な、ぁあっ、なん、だ? んぶぅっ! ぢゅぅ、ぢゅるぅ、びちゃ、んん〜〜〜っっっ!」
 開け放したままだった口の中に、オニグマはその長い舌を差し込んできた。
 舌がまるで口内を掃除するかのように荒々しく暴れ、私の舌を巻き込んでくまなく舐め尽くす。
 「ん、ぢゅっ、私の、んんぅっ、初めての、キスが、ぢゅぅうっ、んむぅっ!」
 それは私のファーストキスだった。啄ばむような恋人のキスなどではなく、ただ己の欲望を満たす為だけの乱暴なキスだ。
 だがそのキスは新たな快楽を私に叩き込み、オニグマの唾液は甘露のようにも感じられた。
 「んぶっ、ぢゅるぅ、ああっ! もっと突いてくれ! んぁ、んふぅ、びちゅぅっ、おいしっ、んぢゅぅっ!」
 自分から積極的にオニグマの舌に自分の舌を絡ませ、その甘美な唾液を啜る。頭がぼぉっとして、自分が何を口走っているのか判断できない。
 両腕を硬い毛皮に覆われた首に回し、脚もオニグマの腰に絡め、私とオニグマとをより密着させた。
 「んぁっ、あぁっ、くぁっ、はぅっ、くんぅっ! ああっ、オニグマチ○ポ! 膣内で膨らんでぇっ! ・・・・え?」
 ドクンドクンと脈打り、より大きく膨れていく生殖器。オニグマの呼吸も段々と荒くなってきている。
 私の頭に極冷の思考が流れ込んでくる。即ち、オニグマは私の膣内に射精する気なのだと。
 「だ、だめだっ! あぁっ、膣内で出すなあっ! いやぁっ! んあぁっ、私を妊娠させるなあっ!」
 脳裏を過ぎるのは先ほど見た少女の出産。股座からヒトではないおぞましい魔獣が這い出てきた。そして少女の心は死んでしまった。
 その光景が私に理性を呼び起こさせ、今まで抱き着いていた巨躯を引き離そうと抵抗を始めた。
 「動くなぁっ! ぁん、ふぁあっ、やめ、ろおぉっ! いやだぁ! 魔獣なんて産みたくないぃっ! ああぁっ!」
 私の豹変に戸惑ったのも束の間、オニグマは逆により激しく腰を振ってきた。その表情は嗜虐者のそれだ。
 オニグマのピストンは遂にラストスパートに入り、唐突にその腰を限界まで押し込めた。
 「いやあぁっ! お願いだから、あぁっ、膣内にださな―――ふ、あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!」
 子宮口に押し当てられた亀頭から灼熱の塊が噴き出す。粘性の非常に高い精液が子宮内へと侵入を果たしている。
 今までよりも更に大きな波に襲われた私の絶叫が洞窟内に木霊している。全身もピンと硬直してしまい、小刻みに痙攣していた。
 「あぁ、うそ・・・膣内で、出されている・・・子どもを身篭ってしまう・・・」
 吐き出された精液によって下腹部が少しだけ膨らんでしまっている。収まりきれなかった精液は隙間なく密着していた結合部から滲み、ボトボトと零れ落ちている。
 「く・・・ぅうっ、ひっ・・・うああぁ・・・」
 私は穢されてしまったのだと、下腹部の熱が改めてそれを認識させる。気付いたときには両目から涙が零れ、年甲斐もなく泣き始めてしまった。
 未だ射精し続けるオニグマは腰を押し付けたままだ。元々サイズが合っていない為に限界まで膣道が伸びても、男性器のまだ3分の1は余ってしまっている。
 媚薬効果の精液が子宮の粘膜に直接吸収され、そこから快感の熱が徐々に広がってくる。それがまた情けないやら悔しいやらで、余計に涙が溢れてきた。
 私の痴態を黙って観賞していた雌のオニグマが、いやらしい笑みを浮かべて近づいてきた。
 『ほんまに淫乱なお姫様やなぁ。涙こぼしながら、乳首もクリトリスもビンビンに勃たせとるやないか』
 「く・・・・・・っひぅ」
 顔の近くまで迫ったオニグマの鼻面から、私は顔を背ける。彼女の言ったとおりに、乳首や淫核は痛いほどに勃起していた。
 漸く射精が収まった雄が不意にそのザラザラの舌で乳首を舐めた為に、私は小さな悲鳴を漏らしてしまった。
 雌のオニグマはニタリと口の端を歪ませると、私を取り囲む輪の中に戻り、人の頭ほどの何かをこちらに投げて寄越した。
 『まだ終わりやないで。ウチらの交尾はここからが本番や。思う存分、そいつにそのアヘ顔を見せてやんなよ』
 「マ、マク・・・ス・・・ひっ、ひがあぁっ!!」
 私のすぐ傍に転がってきたのは、逃がしたはずのマクスの頭だった。それを認識すると同時に、子宮口に細い何かが突き刺さった。
 「アあぁっ! ひ、ふぐぅっ、子宮口、にっ、ひぎぃ、何か、刺さってるっ! マ、マクスううああぁぁっ!!」
 喰い千切られた首を見ながら、私は強い快感の波に抗えなかった。高い絶頂に達しながら、突き刺さった何かは子宮口を貫通して、子宮内部を嘗め回していた。
 「舐めっ、くはぁ、舐められてるっ! 子宮のなかぁ、ぁあ、子どもの部屋を、何かが舐めてるぅっ!・・・・あ、がああぁぁぁっっ!」
 突如、子宮口を貫通していた細く硬い何かが大きく膨れ上がるのを感じた。それは本来なら閉じられているはずの子宮口を、無理やり押し広げようとしていた。
 「あああぁぁっ、うあああぁぁぁぁ!! む、無理だぁっ! やめ、あがああっ!」
 媚薬を以ってしても覆い隠しきれない苦痛が下腹部を襲う。やがてが子宮口が目一杯に広げられると、雄が繋がったままの生殖器をいきなり更に押し込んできた。
 「ひぐぅううっ、は、這入ってくるっ! ひっ、はぁっ、オニグマチ○ポ、子宮の中にぃっ、いぎぃぃいっ!」
 ずるりと音がして、気付けばオニグマの腰と私の股間が完全に密着していた。子宮の壁にオニグマの生殖器が押し付けられている。
 「あ、あぁ・・・子宮まで、子どもの部屋まで穢されて・・・う、うああぁっ、うごっ! が、ぁああ、動くなあぁっ!!」
 子宮内部まで完全に男性器が入り込んだのを確認したオニグマは、猛然と腰を振り出した。
 子宮を直接えぐられ、内部の粘膜に精液を擦りつけられている。先ほどまでの苦痛が嘘のように、凄まじい快感が私を襲っていた。
 「ひぅっ、ぁぁ、がぁっ、だ、ひぎぃ、だめぇっ! 擦りつけ、ふぐぅっ、るなぁっ、んぁっ!」
 オニグマの生殖器は全体が先ほどよりも更に膨らんでおり、私の膣内や子宮を圧迫する。淫液と精液が混ざり合ってぐちょぐちょと卑猥な音を立てていた。
 「奥、擦れて、ああぁぁっ! そこ、やめっ、んひぃっ、やめろぉっ!!」
 膣内の敏感な所が全て強く擦られ、拡張され貫かれた子宮口も激しく刺激されている。唾液と精液で汚れた豊満な乳房は千切れそうなほど、ぶるんぶるんと上下に揺すられている。
 既に苦痛を殆ど感じておらず、強姦されている筈なのに無意識に腰がヘコヘコと動いていた。それを自覚したとき、私はゾクゾクとした背徳感と快楽を得た。
 「んぁあっ、マ、クスがぁっ、見てるぅっ! すま、ああぁっ、ない、んがぁっ! だ、だがっ、ふぁあっ、依頼をたっせ、いぃい、できなかったからぁあっ!」
 オニグマに犯される私をマクスの空ろな目が見つめる。まるで咎められているかのように感じられ、私の背徳感は余計に煽られていた。
 空いた両腕で雄の肩を撫ぜ、更に今度は自らの意志で腰を振る。オニグマのピストンに同期して、濡れた音がより大きく響き始めた。
 「私は姫なのにぃっ! だ、けど、くあぁっ、気持ちが、ふぁ、いいんだっ! 私のなかが子宮ごと擦られてえぇっ!」
 私は痴女のように嬌声を上げ始めた。しかし、舌を垂らして悦ぶ私に雄はどこか不満気に鼻を鳴らした。
 そこで思い出したのはさっき見た少女と小熊の交わりだ。少女は今の私とは比べ物にならないほどに、卑猥な言葉を連呼していた。
 「オマ○コぉっ、くぁっ、私のぐちょぐちょマ○コが、ひがぁっ、おっきなオニグマチ○ポで抉られてるのおぉっ!」
 卑猥な言葉を口にした途端、快感が更に増加した。雄のオニグマもどこか満足そうな表情を浮かべ、私はなぜか幸せな気分になった。
 「オマ○コいいっ! ふぁあ、子宮の壁がゴンゴン叩かれてぇっ! あっ、はぁっ、あっ、イクうぅぅっ!」
 達したことでオマ○コが収縮し、オニグマチ○ポの存在感をより際立たせる。圧迫が気持ちよかったのか、オニグマは更にペースを上げた。
 「イ、イってるのにぃっ! ひぁあっ、だ、だめ、だぁ、ふぐぅ、イクのとまらないいぃぃっ!!」
 連続で絶頂し続け、それによって敏感な所が余計にチ○ポに刺激され、またイキ続ける。私は快楽の悪循環に陥っていた。
 「ふぐぁっ、またイってるぅっ! くぁ、あっ、ふぁっ、んぎぃっ、あぁ、またぁっ、オマ○コの中でチ○ポが膨れてるぅ!」
 雄の鼻息が酷く荒くなり、突き上げも乱暴になっていた。快感に潤む私の瞳に、雌のオニグマが嗤うのが見えた。
 『あたしらの雄は一回目の精液で牝を発情・排卵させ、二回目の精液を子宮に直接流し込んで受精させるんや。そのままだと確実に孕むで?』
 「んあぁっ! いいん、だっ、ふぐぁ、あっ、子ども、んほぉっ、孕ま、せてっ!」
 強烈な快楽に蕩けきった脳は理性を失い、私には交尾で孕むことすら快感に思えた。子宮や膣が狭窄し、子種を欲しがっているのが判る。
 雄のオニグマもそれが理解できたのか、チ○ポを震わせながら更に激しくピストンをしてきた。
 「んはあぁぁっ! オニグマチ○ポからセーエキ射精されるぅっ! あひゃぁ、王女なのにぃ、魔獣の子ども孕んでしまううぅぅっ!」
 舌を突き出し、快感に腰が持ち上がる。子宮が痙攣し始め、絶頂がすぐそばまで近づいていた。
 そして、雄がチ○ポを完全に密着するまで押し込んでくる。同時に、灼熱の精液が子宮に直接吐き出された。
 「イ、く・・・あ、ああああああああぁぁあぁああああぁあああぁぁぁあぁぁああ〜〜〜っっっ!!!」
 莫大な量の子種が叩きつけられ、今までで最大の勢いで絶頂してしまう。
 手足を限界まで突っ張り、背中も折れるのではないかと思うほど海老反りになる。大きく開けられた口からは絶叫が飛び出し、ドロドロの秘裂からは潮と尿が噴き出した。
 「ふあぁっ・・・セーエキが子宮にはいって、受精させられてるぅっ・・・人間なのに、魔獣に孕まされてる・・・・・・」
 完全に隙間のない膣からは精液が殆ど漏れ出していない。その中に次々と大量の精液が吐き出され、下腹部が見る見るうちに膨らんでいく。
 逃げ場を求めた子種は、卵管だけでなく、卵巣にまで侵入しているのがわかる。どんどん受精していく卵子が気持ちよかった。
 「っか、は・・・あぁ、ふぁぁ・・・ぁぁ・・・・・」
 イき過ぎたことによる疲労と緊張で、私は意識を保っていられなくなってきた。眼球が裏返り、完全に白目を剥いてしまう。
 様々な体液でどろどろになったアヘ顔を晒しながら、私の意識は暗闇に堕ちていった。

 途中、狼の遠吠えが聞こえた気がした。


 すえたような淫臭ではなく、暖かいお日様の匂いを感じた。
 私を包む心地よいサラサラの毛布は、このままいつまででも眠っていたいと思わせるには十分すぎた。
 「ん・・・んむぅ?」
 ゆっくりと目を開ければ、自分が包まれているのが毛布ではなく動物の毛皮だと気がついた。しかも生きている。
 純白の短毛に覆われた毛皮は、明らかにオニグマたちのものではない。あんな穢れたものではなく、もっと澄んだ、もっと神聖なものだ。
 上を見上げればそこは吹き抜けの天蓋。ここはどこかの洞窟のようだ。清純な空気であることから、オニグマの巣でないことは確かだ。
 「ゆ、め・・・? ・・・っ!」
 ふと、意識を失う前までの凌辱は、夢だったのかと一瞬期待を持った。だが、それは私の膣に奔る強烈な痛みに否定された。
 「そう、か。私は、辱められたのだな・・・。夢では、なかった・・・・」
 自然と、両目の端から涙が溢れ出た。暖かい毛皮に仰向けになると、失くしてしまった仮面の代わりに、籠手の無い腕で目元を覆った。
 裸身の身体は、まるで聖水に清められたかのように綺麗になっていた。だが、あの体液の感触は忘れられなかった。
 「く、うぅ・・・・・・?」
 不意に、誰かの視線を感じた。それは粘つくようないやらしい視線ではなく、優しい慈愛に満ちた気配だ。
 視線を感じる右側を見れば、こちらを覗く琥珀の二つの瞳と目が合った。涙でぼやけた目ではそれ以上わからなかったので、腕で目元を擦った。
 「・・・・・・エクス?」
 うぉん。巨大な白狼、エクスは小さく応えた。どうやら私は、横に寝そべったエクスの腹に寄り掛かっていたらしい。
 テレパシーのような何かが私の頭の中に入ってきて、先の吼え声が肯定であると教えてきた。
 身体は大丈夫か。気分は悪くないか。何故泣いているのか。――エクスの心配するような感情が、次々と頭に流れ込んできた。
 少し混乱したが、清浄な魔力のようなものが私の頭を覆う。それが消えたときには、私の心は落ち着きを取り戻していた。
 「・・・ああ、大丈夫だ。お前のおかげで気が楽になったよ。ありがとう」
 エクスは再び小さく吼える。それが安心したことによると理解できた。
 心が落ち着けば、疑問になるのが私はあの後どうなったかだ。
 それが顔に出ていたのか、それともテレパシーで伝わったのか。エクスの方から様々な情報が私に流れてきた。
 「・・・すまないな。私のせいで、痛い思いをさせたようだな。それと、ありがとう。私を助けてくれて」
 気にするな、とでも言うようにエクスは首を左右に振った。
 よく見ればエクスの身体には治癒して間もない傷跡がそこかしこに存在していた。一部の傷は、毛皮ごと抉り取られたような大怪我だ。
 彼は今回の依頼の最中、いつでも私を助けられるようにずっと見守ってくれていたのだ。しかしオニグマの群れの罠に嵌り、私を見失ってしまったそうだ。
 匂いを追ってオニグマの巣に辿りつき、犯されていた私を救出したのだ。助けが遅くなった事をエクスは非常に悔やんでいたが、私は気にするなと慰めた。
 オニグマの群れはそのときにエクスが皆殺しにしたそうだ。そして、
 「エクス、オニグマに拉致されていた女たちは・・・どうなった?」
 ゆっくりとエクスは無念そうに首を振るだけだ。
 彼によれば私以外の女は全て、肉体的に死ぬか、完全に心が死んでいたそうだ。オニグマの凌辱は、私が今正気で居られるのが不思議なくらいだったのだ。
 助けた後は安全なこの場所に連れてきて、浄化魔法で身体を清め、回復魔法で傷や疲労を癒してくれたらしい。媚毒の抜けた正常な身体で居られるのは、そのおかげだ。
 「純潔では無くなってしまったのは残念だが、今こうしてお前と触れ合えている。私は今はそれで十分だよ」
 巨躯を持つエクスの首筋を、優しく撫でてあげる。彼は気持ち良さそうに目を細め、長い白尾がゆらゆらと揺れ始めた。
 15年前に別れてしまった無二の親友。たった一週間ほどの日数だったが、私の中では光り輝く思い出。彼は、そのエクスだったのだ。
 そしてそのことに思い至ったとき、この吹き抜けの洞窟が何処であるかを唐突に思い出した。
 「・・・そうか。ここは、15年前のあの場所だな?」
 エクスは頷き、肯定した。
 彼と私が座す、光の射す今この場所には、15年前には別の人物が座していたのだ。
 「思い出したよ。ふふ、お前だったんだな。私の“王子さま”は」
 いつもここに居た、心優しき一人の女性。思い出の中でどうしても思い出せなった彼女の姿を、今ならハッキリと思い出せる。
 「あの人、レインさんはよく人間の女性の姿をしていたな。だが、彼女の本当の姿は・・・」
 今のエクスよりも更に大きい、純白の毛皮の白狼だった。人間の姿は彼女が魔法で変身した姿だ。
 思い返せば、尖った耳、長い白尾、突き出た鼻など、様々な所が似ている。レインさん、レインディア・ウルフヘイズと名乗った彼女の息子とは、エクスのことだったのだ。
 だからこそ、あの約束をしている記憶の中の彼女は一瞬複雑な顔をしていたのだ。当時の幼かった私は、エクスとレインさんの関係を教えられていたのだから。
 「私がもっと早く思い出していれば、お前を問答無用で引っ張ってこれたのだがな」
 エクスに不敵に微笑んで見せれば、彼はくぅんと鼻を鳴らして耳を垂れた。少し怯えたらしい。
 10年前にエクスと再開した際、彼がこちらの呼び掛けに応えなかったのは、直前に城下町の結婚式を見ていたかららしい。
 人間の男と人間の女が幸せそうに番いとなった。魔獣であるエクスは、人間である私が結婚するのは人間であるのが望ましい、そう感じたそうだ。
 だからこそあの時には応えなかったのだが、今の私にはそれが滑稽に思えた。
 「お前はばかだな。極東の島国では異種族同士の結婚は普通であるそうだ。要は、互いが好き合っていれば問題はないんだよ」
 私はそう言って目の前のエクスの鼻面を両手で挟み、その口先に私の唇を押し当てた。
 目をまん丸に見開くエクスから、戸惑いや喜びがごちゃ混ぜになった感情が流れ込んでくる。そしてとある感情も。
 「ふふ、ここをこんなにさせて。私の裸に興奮したのか・・・何だか嬉しいな」
 それは欲情だった。口付けをされたことで、私の裸身を意識してしまったらしい。彼もやっぱり男の子である。
 むくむくと大きくなる狗科のエクスの男性器はやはりグロテスクではあるが、嫌悪しか無かったオニグマのものとは違って、なぜか愛おしさが込み上げてくる。
 私は微笑みながらその大きなペニスを左手で軽く掴むと、優しく擦り始めた。
 「ピクピクしてるな。気持ちいいのか?」
 エクスは気持ち良さそうにウォンと吼えた。彼のペニスは硬く、熱く、愛おしかった。
 そのままの強さで摩擦を続ける。血管が浮き出たそれは、左手だけでは一周を覆いきれなかった。
 私は亀頭の正面に移動すると、今度は両手を使って刺激し始めた。彼のは非常に長く、必然的にストロークは長くなった。
 「先からとろとろしたものが出てきたな。私の手で感じてくれているのか、嬉しいぞ」
 先端から垂れ始めた先走りを、そのまま肉棒に塗りたくっていく。
 滑りがよくなった棹に、段々激しく刺激を加えていくと、エクスのペニスは強く痙攣し始めた。
 「もう射精すのか? こういうことは初めてか?」
 そう聞くと、彼はぷいっと顔を背けた。だがその首筋の地肌が紅潮しているのが見て取れ、私は思わず微笑んだ。
 「こういうのは私も初めてだ。ふふ、初めて同士だ。嬉しく思うよ」
 私は更に激しく肉棒を扱き始める。エクスの興奮がどんどんと高まり、熱い子種が根元に集まっていくのがわかった。
 潤、と音がする。私の秘裂も彼に合わせて愛液を分泌し、太腿にまであふれ出していた。
 「もうちょっとか? これでど――ひゃあああぁぁぁぁっっっ!!」
 突然、ペニスの先から凄まじい量の精液が噴き出す。火山の噴火のようにその勢いは激しかった。
 ペニスの正面に陣取っていた私は、それを真正面から諸に浴びてしまう。熱い大量の白濁液に全身を打たれ、私は悲鳴を上げながら達していた。
 「・・・あっ・・・はぁっ・・・・・・ひぅっ・・・」
 ビクンビクンと、エクス自身から断続的に私に向かって吐き出される精液に合わせ、私自身も小さく達し続ける。既に身体は白濁液に覆われていない部分のほうが少なかった。
 やがて狗科特有の長い射精が終われば、私はまるで精液のプールにでも浸かっているかのようになっていた。
 「ん、ふぅ・・・出しすぎだぞ、エクス。全く、もったいないではないか。んむ、ちゅる・・・んふふ」
 私が顔の精液を拭って口に運びながら言うと、エクスは照れ臭そうににやけた顔を背ける。これがエクスの子種なのだと思うと、酷く生臭い精液が美味に感じられた。
 ふと、私は精液の付着している全身の皮膚が、少しピリピリと刺激を受けているのに気付いた。まるで丁寧な垢すりでも受けているかのように、それは心地よかった。
 「エクス? 何だか皮膚がピリピリとするのだが・・・」
 返答はすぐだった。彼のほうから私の問いに対しての解が送られてきた。
 それによれば、彼の種族である神狼の精液には強い浄化作用があるらしい。その作用で全身の穢れや垢が根こそぎ浄化されているらしい。
 「便利なものだな。そうだ、これからは湯浴みではなくエクスの精液を浴びるというのはどうだ?」
 ちょっとした思い付きに、思わず笑みを浮かべる。好きな相手ならば毎日でも欲しいくらいなのだ。エクスは少し引き気味だった。
 「冗談だ、安心しろ。それより、もう回復してきたのか? あれだけ出したのに本当に底なしだな」
 精を放出したばかりの男根は、やおらムクムクと膨張し始めていた。心なしか先ほどよりも大きくなっている気がする。
 自分にこんなにも興奮してくれる悦びに私は微笑み、出来るだけ柔らかい地面を選んでそこに仰向けに寝転がった。
 「エクス、私のここにお前のモノを挿れてくれ。私をエクスの色に塗り替えて欲しいんだ」
 股を開いて挑発するように秘所を指で広げてやれば、エクスのペニスはよりその硬度を増す。しかし、私の唇はいつのまにか震えていた。
 私の初めてはあの悪鬼どもに散らされた。その時の恐怖や快楽はまだ心に刻まれている。だからこそ、待ち望んでいた私の王子さまであるエクスにその傷を塗り替えて欲しいのだ。
 エクスはゆっくりと私の上にのしかかる。私よりも大きいその巨体に、私はすっぽりと隠されてしまう。毛皮が少しくすぐったく、震えは既に収まっていた。
 「そうだ、この穴だ。ここにお前のを挿れるんだ」
 太く長い彼のペニスを両手で掴んで膣口へと誘導する。精液と先走りに濡れた亀頭がトロトロの秘裂に触れ、ちゅくと湿った音を立てた。
 膣に照準を合わせたエクスはゆっくりと腰を押し込んできた。人間の男よりも太い肉棒が、徐々に私の膣内へと沈みこんでいく。
 「ん・・・いい、ぞ・・・くふぅ、優しく、あぁ、頼む・・・んんっ」
 遂にエクスのペニスが子宮口に到達する。かなり長い彼の男性器は、未だに半分ほど残っていた。
 わふと気持ちよさそうに吼えると、エクスは静かに腰を動かし始めた。こちらを労わるような動きに私の胸が熱くなる。
 「あぁ・・・ん、く・・・ふぁっ・・・」
 私を犯したオニグマのような生殖活動ではなく、愛を語らうような優しい交わり。濡れた喘ぎ声が漏れ出しはじめた。
 オニグマより気持ち細いくらいのエクスのペニスは、今の私の秘所にぴったりと填まっている。
 「んんっ・・・気持ち、いいぞ、くふぁ・・・ぁぁ、エクスは、気持ち、ぁん、いいか?・・・ひぁっ!」
 ぐちゅぐちゅと音を立てながら抽挿するエクスの快感が、私の中に一気に流れ込んできた。思わず声を上げて背を反らせば、膣に力が入ったようでより強い快感が私を襲う。
 「ふぁっ、あぁっ、ちょっ、んんっ、待てっ! んあぁっ、あぁっ、はぁっ、ひあぁっ!」
 初めての快感からテレパシーがうまく制御できなくなっているらしい。ピストンを早めるエクスの快感が、私への愛おしさとともに私の脳髄を叩く。
 膣一杯のペニスは私の感じやすいところを全て同時に擦り上げる。私の膣はエクスの肉棒を締め付け、その脈動まで感じられた。
 「エクスのが、ふあぁっ、私のおくを、あぁっ、突いているぞっ! んぁっ、私の、膣内、くふぁ、エクスのおち○ちんで、いっぱいになってるぅ!」
 子宮口を叩けばより私が感じることを理解したのか、エクスはそこを抉るように重点的に突いて来る。
 オニグマの媚毒によって強制的に開発されていた子宮口は、突かれる度に強い快感が私を貫く。私の口からは次々と卑猥な言葉が飛び出していた。
 「私のオマ○コが、エクスのおち○ちんで抉られてるっ! んふぁっ、あぁっ、ひあぁっ、ぁぁ、ああっ! オマ○コいいっ!」
 荒々しい腰の動きで辺りには愛液が飛び散り、私の胸も上下に激しく揺すられる。長い金髪も振り乱されていた。
 全裸で地べたに寝転がっているので少し背中が痛かったが、気持ちよさで全く気にならなかった。エクスの抽挿はより力強くなっていく。
 「くふぁあっ! いま、少しイったぁっ、あぁん、あっ、はぁっ、くふぁっ! ちょ・・・まっ、んぁっ、子宮口にっ、刺さって・・・ひやああぁぁっっ!!」
 突かれることで段々と解されていた子宮口を、エクスのペニスが子宮内部まで貫通する。結合部を見下ろせば、卑猥な肉棒は私の膣内に全て埋没していた。
 「ふあぁ、入ってる・・・子宮のなか中までエスのおち○ちんが入ってるぅ・・・んふおぉっ!」
 急に感覚が変わったことに驚いて動きを停止させていたエクスだったが、問題ないと理解したのかすぐに激しいピストンを再開した。
 子宮の中まで犯されているが、オニグマの時と違って私に嫌悪感は一切なかった。嫌悪の代わりにあったのは、愛する雄に子宮の中まで征服された雌の悦びだった。
 「私は、ぜんぶ、お前のものだっ! んひぃっ、ぁあっ、ひふぅっ! ふあぁっ、子宮のなかでっ! おち○ちんが膨らんでるぅっ!」
 絶頂が近いのかエクスの鼻息はどんどん荒くなっていた。呼応するように彼のペニスの脈動も激しくなってくる。
 ピストンがラストスパートに入っており、膣がやけどしそうなほど熱い。
 「あぁっ、ひゃぁっ、んふぉっ、ああぁっ! 出すのかっ?! 私の膣内に、エクスの子種を注ぎ込むのか?!」
 喘ぎ声で閉じることができない口から涎を垂れ流しながら叫ぶ。私の絶頂もすぐ目の前に近づいており、喋りにあまり余裕はない。
 エクスから流れ込んでくるのは強い生殖本能であり、彼は既に私の子宮を孕ませる気満々だった。
 「ふぁっ、いいぞ! エクスのセーエキで、オニグマに穢された子宮を浄化して、んひぃっ、ああぁっ! お前の子どもを孕ませてっ!」
 発射段階に入った精液でパンパンに膨れ上がった肉棒は最初よりも一回りも大きくなっている。
 私が背を丸めたエクスの首筋に抱きついて舌を突き出せば、彼は長い舌でそれに絡ませてきた。
 「んちゅっ、んむぅっ! ぢゅる、んふ、ふぁっ、んくぅっ、ぷはぁっ! ああぁっ、イク! エクス、私ぃっ、ふぁあっ! お前も、一緒に――」
 私がそう言った瞬間、エクスは腰を限界まで押し込んでくる。そして子宮奥の壁に押し付けられたペニスから、大量の精液が吐き出されていた。
 「――イ、く・・・ふああぁああぁぁぁあぁぁぁああぁああっっっっっ!!!」

 ※ロールオーバー

 子宮の中を焼く精液によって私は凄まじい絶頂に押し上げられた。喉が潰れるかと思うほどの絶叫が飛び出す。
 何処に収まっていたのかわからないほどに膨大な量の精液によって下腹部が一気に膨れ上がり、卵管に残っていたオニグマの精液ですら浄化し尽していく。
 「あぁ・・・ふあぁ・・・・・・暖かいぞ、エクス・・・・んひいぃぃっ!」
 妊娠初期の妊婦のように膨らんだ胎を撫でていると、エクスがいきなりぐりんと身体を反転させる。イった直後で敏感になっていた膣壁を乱暴に擦られたことで、私はまた軽く達してしまっていた。
 「あ、あぁ・・・エクス、今のは・・・んぁ、酷いぞ・・・・」
 唐突な快感に涙目になっていた私が言うと、エクスは済まなそうにきゅぅんと鳴いた。
 何度か街中の路地裏で見たことのある犬同士の交尾。見下ろした先に見たのは彼の立派な白尾であり、ちょうど尾結合という状態になっているらしかった。
 「ふぁ・・・ん、んぅっ・・・・どれだけ、私の膣内に注ぎ込む気だ? あふぁっ、そんなに、入りきらないぞ・・・?」
 子宮奥まで入り込んだ彼のペニスは、根元が球状に膨らんで抜くことはできない。出入り口が塞がれた状態であるのに精液は吐き出され続けていた。
 ふとこちらを振り返ったエクスは、そのままの状態で腰をカクカクと揺すり始めた。
 「あっ、ふあぁっ、んぅ! 気持ち、いいのか? 子種を出しながら腰を振るとは、んんっ! 節操のないやつめ、くはぁっ!」
 少々皮肉気に言えばエクスは少し落ち込んだ雰囲気を見せたが、それでも腰の揺すりは止めようとしなかった。
 トクントクンと吐き出され続ける精液を感じていると、気付けば私も彼に合わせて腰を揺すっていた。
 「どう、やら、ふぁっ! 節操がないのは私も同じ、らしい・・・んんぅ、くぁっ!」
 段々と揺する速度が速くなり、ソレに同期するように彼のペニスの根元付近に精液がたまり始めているのがわかった。
 私は揺れで乳房が痛くなるほどに腰を揺すり、膣に力を入れてピストンする肉棒を意識的に扱き始めた。
 「んふぁっ、ひぅっ、ひゃあぁっ! エク、ス・・・もっと私の膣内に、くはぁっ!」
 ゴリゴリと音がするようにエクスも腰を振り、まるで私の膣が外に引き摺り出されるかのようだ。
 「またくるっ! エクス、お前もいっしょにっ! ふあぁっ、ひあぁっ、あぁ、ああああああああぁぁぁぁああぁぁぁあああぁっっっ!!」
 お互いに十分に興奮がは高まっていた。同期させて腰を振る私とエクスは、同時に強い絶頂に達した。
 遂に子宮に収まりきれなくなった精液が肉棒で栓をされた膣口から噴き出し、辺りを白濁に染め上げる。
 ずるりと引き抜かれたエクスのペニスは愛液と精液でドロドロになっていた。ぽっかりと口を開けた膣口からは大量の精液が流れ出した。
 反射で子宮口は閉じられていたのか、膨らんだ下腹部は小さくなる気配はない。浄化作用で焼かれる胎盤がピリピリと快感を持続させていた。
 「はぁっ・・・はぁっ、ん、ふぅ・・・こら、止めろ・・・・・・顔を舐めわっぷ!」
 汗やら精液やらで汚れていた顔をエクスがその舌で舐め回し始める。綺麗にしてくれようしているのはわかるが、今度はエクスの唾液でべとべとだ。
 その鼻っ面を両手で挟むと、その舌に私の舌を絡ませた。エクスから驚いた感情が流れ込んできたが、すぐに彼も乗ってきた。
 「んちゅぅ、ぢゅる・・・あむ、んん、ぴちゅ・・・ふふ、お前をお父様とお母様に紹介しなくてはな・・・んむぅ・・・」
 私は幸せそうに微笑みながら、再び長い口付けに没頭した。


 星明りに包まれ、既に見慣れた豪奢な天蓋。ふかふかのベットのすぐ下ではエクスが穏やかな寝息を立てている。
 夏場であったら暑くてかなわないのだが今は秋。手を伸ばせば届くところにある滑らかな毛皮は、むしろ心地よいくらいだ。
 「ふふ、お前は私とエクス、どちらに似るのかな?」
 枕に背を預けて微笑みながら撫でるのは大きく膨らんだ下腹部だ。人間で言えばそろそろ臨月くらいの大きさだろうか。
 黒くなり始めた乳首から母乳が染み出してシースルーのネグリジェに付着していた。溜息を吐いて布巾で染みを拭きながら、私は回想する。
 私があの悪夢の依頼からエクスによって救い出され、城に帰還してから半年が経過していた。
 エクスの背中に乗せられて城に帰ると、私はすぐさまお父様とお母様の前に連れて行かれた。エクスは見た目が完全に魔獣である為に、兵士たちを説得するのに苦労した。
 途中でメイドに渡された質素なドレスを着た私が玉座の間に足を踏み入れた瞬間に、両親に泣きながら抱き付かれてしまったのは本当に困った。
 あまりの大声で号泣するものだから、私の帰還を知らなかった者たちが次々に玉座の間に顔を出し始めたのだ。誰かが来る度に巨大な狼の姿のエクスは皆に驚かれていた。
 『私はこのエクスを夫に迎えることにした』
 皆が散って周りが落ち着いた頃を見計らって私は両親にこのような内容の話を切り出した。二人とも青天の霹靂とでも言うように驚愕し、そして何の冗談だと頬を引き攣らせていた。
 冗談ではなくエクスが私の待っていた王子さまだと説明を続けると、段々と二人は険しい顔つきになってきた。私が幻惑魔法か何かで錯乱させられているのだと思ったらしい。
 『それは本当のことでございます、陛下』
 医者を呼ばれる直前になって、姿を現したのは傷だらけのセバスだった。全身を何かの血で汚し、腰には銀に輝く一本の大剣が設えてあった。そうしてセバスの援護もあり、私は両親の説得に成功したのだ。
 もっとも、お父様もお母様もエクスの血筋や周りへの説得に顔を難しくさせていた。人間でないことで貴族は口煩く言ってくるだろうし、仮に説得できても単なる狼の魔獣では王家と釣り合いが取れないのだそうだ。
 「・・・だからって、あのカミングアウトは衝撃的過ぎたぞ、セバス」
 苦笑しながら思い出すのは、エクスの出生に関わるセバスの暴露話だ。
 両親の説得を終え、血筋の問題をうっちゃって改めてお互いの無事を喜んでいたときだ。セバスは重要な話があると跪いて言って来たのだ。
 なんと、エクスはこのニーブルヘイム王国で有名な昔話である『レインディア湖の狼』に出てくる雌の神狼の一人息子であるというのだ。しかも人とのハーフ。彼にそれを問えば、母に聞いたことがあるから間違いはないとのことだった。
 それを何故セバスが知っているのかも脇に置いといて、これで血筋の問題は解決してしまった。この世界を創った神に最も近い魔獣の一つである神狼となれば、血統の良さは折り紙つきだ。
 「お前も実は偉い魔獣だったんだな、愛しいあなた・・・」
 手を伸ばしてそのふさふさの首を撫でてやれば、エクスはごろごろと喉を鳴らした。・・・寝ているのか寝たふりなのか、どっちなんだコイツは。
 神狼はこの大陸に20頭前後しか生存が確認されておらず、人間とは殆ど関わりを持っていない珍しい魔獣だ。この世界では非常に稀有な雄と雌が存在する種族であるのが関係しているのかもしれない。
 とにかく、純血主義を掲げているらしい神狼の血統であるというなら、流れる人の血は貴賎を問わずに歓迎すべきことらしかった。お父様とお母様曰くでは。
 純血の魔獣を夫に迎えるとなると貴族たちの説得が非常に難しいらしい。だが半分人であるのなら、神に近き魔獣の血を引いた“人間”として押し通せるのだそうだ。
 結婚式も執り行われることになったのだが、急なことだった上にすぐに私の妊娠が発覚し、式は出産後まで延期されることになったのだ。私とエクスは城の中の大きな一室を貰い、そこで共に棲みはじめた。
 「そして今に至る・・・と」
 慈愛の笑みを浮かべながらエクスの首筋とお腹を撫でていると、エクスがゆっくりと首を持ち上げた。
 ベットに散らばった私の長い金髪を掻き分けるようにシーツの上を首だけで這うと、不意に私の乳房に吸い付いた。
 「ひゃ、ちょっと待て! ん・・・ぁ、こらぁ・・・赤ん坊の分まで飲むんじゃない、んんっ」
 妊娠してから更に大きくなった乳房に吸い付いたエクスは、そのままコクコクと母乳を嚥下しはじめた。
 ザラザラの舌で舐められながら母乳を飲まれていることに興奮を覚え、気付けば私の股間は潤と愛液を染み出させていた。彼のほうを見れば、凶悪なほど大きなペニスを勃起させていた。
 「ん・・・まったく、仕方のないやつめ・・・んぁっ、膣はダメだから、な・・・?」
 膝を立ててうつ伏せになれば、丁度エクスにお尻を突き出す形になる。両指で尻肉を開いて示すのは本来は排泄用の穴だ。
 ひくひくと動く肛門は興奮に腸液を垂れ流し始め、膣から流れる愛液と混ざり合ってシーツに落ちた。エクスは鼻を近づけると舌を出して舐め始める。
 「んんぅ・・・ふぁ、ん・・・ぁあ・・・あぁん・・・・」
 くすぐったいような快感がアナルを刺激し、括約筋が柔らかく解れていく。
 「ん、ふふ・・・お母様も、罪なことを・・・あふぁ、く・・・ひあぁ・・・」
 アナルセックスを私に教えてくれたのは実はお母様なのだ。妊娠中に膣で交わると流産する可能性がある為に、私とエクスは互いに欲求不満になっていた。
 浅くセックスするならあまり問題はないのだが、如何せん、エクスのペニスは特大サイズ。浅いと彼は満足できないし、私も達することはできなくなっていた。
 それを母としても女としても先輩のお母様に相談したところ、このアナルセックスを勧めてくれた。お母様も私を妊娠していた間はこれでお父様と性交渉をしていたそうだ。
 「エク、ス・・・もう、いいだろう? はやくお前の肉棒を、私に突き刺してくれ・・・」
 私が物欲しそうな声で懇願すると、エクスはのっそりと私の背にのしかかって来た。体重が膨れた腹部に掛かって胎児に影響がでないように細心の注意を払っているのが判る。
 人間とは違う独特な形のペニスが肛門に当てられる。亀頭の先走りと腸液が混ざり合い、くちゅという卑猥な音が響いた。
 「そうだ・・・んんっ、はやく・・・いれ・・・ふぉ、ほおおぉぉぉおぉっっっっっ!!!」
 太く長いペニスがずぶずぶと一気に這入りこんできて、私は獣のような絶叫を上げてしまう。肉棒は直腸を通り過ぎ、S字結腸どころか下行結腸にまで到達していた。
 毎晩アナルで交わっていた為に、結腸が無理やり場所を移動させられることに既に痛みは無い。というか、痛くなるとか以前にここまで入ると普通は死ぬらしい。・・・教えておいて本人が驚かないでくださいよ、お母様。
 「んぉおっ、ふぁあっ! いっぱいに、おほぉっ、なってるぅ! あふぁっ、んはぁっ、ああぁぁっ!」
 エクスはすぐに腰を振り始め、私の大腸の中を攪拌していく。消化吸収がまだ終わっていない液状の便が彼の先走りと混ぜられる。
 常に排泄しつづけるような感覚が背中を駆け抜け、私の脳髄に強烈な快感を伝え続けていた。
 「エクスのおち○ちんが、お腹のなかをえぐってるぅっ! ぁあっ、あふぁっ、んおぉっ!」
 “王”の属性によって頑丈になっている肉体はエクスの激しいピストンでも壊れることは無い。それが解っているエクスは、私の嬌声に興奮して更にペースを上げてきた。
 「あふぁっ、はげし、んほぉっ! 気持ち、いいのか、おふぉっ! ひぁっ、エクスぅっ、あぁっ!」
 快感に耐え切れずに上半身を支えていた両腕が崩れ落ちた。突かれる度に母乳を噴き出す黒い乳首が、ネグリジェの上からシーツに擦られて痛いほどに気持ちがいい。
 ビンビンに勃起していた乳首は更に硬く勃起し、より激しく母乳を噴き出し始める。エクスは速度をそのままにストロークを大きくしてきた。
 「んほおぉぉっ! アナルがひっぱりだされてるぅっ! あふあぁっ、エクスチ○ポが出入りしてるぅっ! んほぉっ、あふぁああぁっ!」
 長いペニスによって肛門の内側の肉までが捲りあがる。ぐちゅぐちゅと腸液が多量に分泌され、すえた淫臭を辺りに撒き散らしていた。
 エクスは右耳を隠す長い髪を鼻で掻き分けると、いきなり耳裏を舐め上げた。
 「ひゃあぁっ! だ、めえぇっ! ケツマ○コ突きながら耳をなめるなぁっ! んふおぉっ、感じすぎるぅっ! んんっ!」
 卑猥な言葉を喚き始めた私に気を良くしたのか、エクスは今度は耳を甘噛みし始る。
 私の弱点である耳を刺激しながらも、彼の腰の速度は全く落ちない。それどころか噛まれる度にアナルがペニスを絞める為に、その速度は更に増しつつあった。
 「噛む、なぁっ! やめ、あふぁっ、ひぁあっ! 子宮がぁ、裏から擦られてるぅっ! んんっ、赤ちゃ、んがぁ! ふぁ、お腹けってるぅっ!」
 裏側からの刺激に反応したのか、胎児が子宮の壁を強く蹴り始める。それすらも全身が一時的に性感帯となっている私には快感だった。
 「んふぉっ、あなたは、絶対に護るからっ! 血統がなんであれ、んんっ、私とエクスが、おほぉっ! 護ってやるからな!」
 私の“王”を受け継ぐかもしれない私とエクスの子。“王”の属性が結果的にあの三人を殺すことになり、私自身も酷い辱めを受けることになった。
 しかし“王”の属性を持っていなければ私はエクスと再会できなかったかもしれないし、こうして激しくお互いを愛し合うこともできなかった。マクスたちの死は悲しいが、私は今、幸せだ。
 「ふぁっ!? ぁあっ、エクスのが、大きく、んんぁっ! 射精すの、か? ふあぁっ、私の、腸内(なか)にぃ! おふぉおっ!」
 私の声に応えるようにエクスの肉棒がドクンドクンと脈打つ度に膨張していく。私の大腸はその皴を引き伸ばされ、更に擦過面積が大きくなる。
 増していく圧力と摩擦でより強い快感が脊髄を奔り、視界に白い火花が散り始める。腰の辺りに得も言えぬ感覚が集まり始めていた。
 「私も、ああぁっ! イ、くぅっ! おふぉっ、ふぁっ、ひやぁっ! イってしまうぅっ!」
 舌がだらりと口外に垂れ、眼球がひっくり返りそうになる。純白だったシーツは母乳や淫液などの体液でべとべとになっており、周囲の淫臭は酷く濃い。
 膝を立てて膨れたお腹に体重が掛からないようにしているものの、絶頂の直前においては膝が震えて今にも崩れ落ちそうになっている。
 「んほぉっ、ケツマ○コが広がるぅっ! エクス、いっしょに、んふぁっ! いっしょにぃっ! イ、く――」
 目の前の火花が視界を真っ白に覆い隠し、背中が限界まで海老反りになる。同時にエクスが腰を完全に密着するまで押し込んできた。
 「――ん、ほおおおぉぉぉおぉぉぉぉぉっっっっっっ!!!!!」
 亀頭から大量の灼熱が吐き出されるのに同期して私は潮を噴き出しながら達した。
 出口である肛門が完全に塞がれている為に、放たれた膨大な精液は逃げ場を求めて腸内を逆流し始めた。そしてそれが腸壁を焼く強い快感として、イッたばかりの私の脳髄に叩き込まれる。
 「んはぁっ、セーエキ逆流してりゅうぅぅっ!! お腹の中で、エクスの子種が暴れてえぇっ、おほぉっ!」
 びゅるびゅるとエクスの肉棒は未だに精液を吐き出し続けている。大腸を完全に満たしつくした精液はそのまま小腸にまで浸入し始めた。
 消化吸収途中の便は浄化作用によって浄化し尽くされ、代わりに精液のみが残されていく。お腹の中が焼ける灼熱感は酷く気持ちがいい。
 「んごぉっ、エク、スぅっ! 射精し過ぎぃ、おほぉぉっ! セーエキぃ、ふごぉ、胃の中まで、逆流してりゅうぅっ!」
 子種の圧力によって大腸が膨張し、大きかったお腹が更に膨れ上がる。膨らんだ亀頭球が括約筋に引っかかることで栓をした状態になり、精液は遂に胃の中にまで押しやられていた。
 流れ込んだ精液に胃壁が焼かれ、空っぽだった胃は満杯まで満たされる。急激な満腹感に襲われるが、胃には次々と精液が逆流し続けている。
 「んごぉっ、ぐぼおぉぉっ! う、げえぇっ!」
 猛烈な吐き気は耐えられるものではなく、蛙の潰れたような声を出しながら大量の白濁液を嘔吐する。食道や口腔を焼かれる感覚は少しだけ不快だったが、彼の子種で体内が満たされている幸福感のほうが大きかった。
 腸内に吐き出される精液の量は留まるところを知らず、食堂から競りあがってきた精液は鼻孔からも噴き出している。
 「ごぶ、んぐ・・・うぐ、出し過ぎ、だぁ・・・ぐぶぉっ!」
 逆流した精液を嘔吐し続ける私を見て、エクスは済まなそうに鼻を鳴らしながら首筋を舐める。
 『ごめんね』という思考が頭に流れ込むが、膨れた亀頭球は不随意運動な為にエクス自身にはどうしようもできないのだ。
 「ぐ・・・ふ、ふふ・・・ごぁ、そう済まなそうにするな・・・ぅ、全身がお前の子種で満たされて、うご・・・幸せなんだから、な」
 射精の勢いが衰え始め、嘔吐する量を減り始める。シーツに広がる白濁した吐瀉物に半身を浸しながら、私は背を反らしてエクスの逞しい首を撫でた。
 口と鼻孔からは未だに精液が漏れ出し続けているが喋れなくは無い。囁きながら腕を回した彼の首を甘噛みする。
 「今回は尾結合をやめてくれたのだろう? ん、ぐ・・・すまないな、受け止めきれなくて・・・」
 『そんなことはない』と、優しいエクスの思考が流れてくる。心優しい神狼に思わず私は頬を緩めた。
 どういう訳か今回の彼の射精量はいつにもまして大量だった。まだトクントクンと精液を吐き出す肉棒を感じている。
 これで本格的な射精を行う尾結合に移行していたとしたら、私は逆流する精液に溺れて溺死していたかもしれない。
 「・・・まあ、今の私はこれくらいじゃ死なないがな・・・んく」
 口腔に残った精液を嚥下しながら、私は嬉しそうに呟く。同じように嬉しそうなエクスが私の頬を舐めた。
 神狼のような魔獣と番になるということは、特別な意味を持つとセバスは言っていた。曰く、『魂同士が深く繋がりあい、互いの身体にまで影響を及ぼしあう』ということだ。
 今の私は人間でありながら神狼側に一歩脚を踏み出しており、その寿命や死に難さが相手の魔獣に依存する。逆にエクスのほうは知性がより人に近くなり、念話の精度があがるなどしている。
 元々無限に近い寿命と強靭な肉体を持つ神狼に近くなっているので、“王”属性も持ち合わせた私は、謂わば擬似的な不老不死となっているのだ。・・・流石に頭を潰されれば死ぬらしいが。
 「ふふ、私たちには悠久の時がある。永久の終わりまで一緒に添い遂げよう、エクス。我が愛しの旦那さま♪」
 『そうだな。共に在ろう、この世界の果てまでも』
 深く繋がりあったまま、私とエクスは再び誓いの口付けを交わした。


 その後、人間と神狼の夫婦はニーブルヘイムの王となった。
 不老の一人と一匹は、王国に永き繁栄を齎し、悠久の平穏を民に約束した。
 永い時が過ぎて、大勢の子孫たちに国の未来を託した後は、深き森の中にその身を置いた。
 彼女らはそこに一軒の小屋を建て、そして世界の終わりまで幸せに暮らしましたとさ。

 


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-モドル-